新たに強化部長に就任した松波氏。クラブをJ1残留に導けるか。(C) SOCCER DIGEST

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 またしても緊急登板だった。ガンバ大阪は8日、成績不振の責任を取って梶居勝志強化部長の辞任を発表。そして後任に“ミスターガンバ”松波正信氏(アカデミーダイレクター)の新任が決まった。
 
「ありがたいこと。期待してくれてポストを用意してくれるのは、この上ない感謝」
 
 12年には3月末にセホーン監督の後を受け、トップチームの監督に就任。当時も開幕から公式戦5連敗していた火事場の中での登用だった。今回は現場ではなくフロントの立場だが、愛するクラブの危機に立ち上がった。
 
 現役時代から強化部は「査定をする人」「契約交渉の時に話す人」というイメージしかなく、「そんなに知識もないし、(日々)どんなことをやっているかも知らない」という。「やれることは少ない」。松波新強化部長も自覚しており、8月17日に締め切られる夏の移籍市場にはほぼノータッチ。ただ、このタイミングで“ミスターガンバ”がフロントのトップに立ったのは、無形の効果があるだろう。
 
「熱い人だなと思いました」と目を輝かせたのは若手成長株のDF初瀬亮。松波新強化部長は選手との挨拶で「心のないヤツをサポートするほどの余裕は今のガンバ大阪にはない。情熱を持ってやろう」と話したという。現チームで松波氏とプレー経験があるのは、今年38歳を迎えた元日本代表MFの遠藤保仁のみ。だが16年間の現役生活すべてを青と黒のユニホームで過ごしたレジェンドの名前を知らない選手はいない。その言葉には、シンプルな一言でも重みがある。
 
 例えば「強いチームとは?」という問いに対しての答えは「一致かな」だった。
「選手の一致、スタッフの一致ですね。ガンバのスタイルであったり。すべてにおいて一致したのが2005年だと思う。チームはいつも動いている。1週間、1か月単位、1年単位。常に一致させるようにしたい。それは現場だけではなく、フロント含めての一致があれば。それがハッキリすれば、向くところは一緒」
 
 G大阪がお荷物クラブと揶揄された時代から05年のリーグ初優勝まで経験。強くなった過程を知っているし、宮本恒靖監督とは違った立場から選手にアプローチしていくことができる。
 
 おおまかに強化部長のタイプには2通りある。ひとつは選手と一線を画す人間。もうひとつは選手とコミュニケーションを取る人間。前者は査定や契約交渉においてはプロフェッショナルな立場を取れるが、同時に選手からは「何を考えているか分からない」というマイナス面がある。
 
 後者は逆で、プライベートやパーソナリティを知ることは査定や交渉を難しくさせる。松波氏は「時と場合によって。監督のやり方もあるので、一応、監督とコミュニケーションを取った上で“選手とこういう話をするよ”というのはあると思う」とバランスを取る方針を示したが、前任者はどちらか言うと選手とは一線を画すタイプ。今のG大阪に求められるのは一丸となって「J1残留」を勝ち取ることで、コミュニケーション型は“ともに戦っている”というメッセージを発信する上で適任だろう。
 
 なにはともあれ、G大阪にとっては本当に奥の手。松波新強化部長と宮本恒靖監督のダブルレジェンドに、J1残留のミッションは託された。
 
取材・文●飯間 健