「大山」の文字を目にしたら、多くの人が鳥取県の「だいせん」か、各地にある「おおやま」のことだと思うだろう。鳥取の大山(だいせん)は「大山隠岐国立公園」、神奈川の大山(おおやま)は「丹沢大山国定公園」の中核として、日本有数の観光地になっている。

そこでJタウン研究所は半年にわたって、「だいせん?おおやま? どっちの『大山』に親しみがある?」をテーマに、都道府県別のアンケート調査を行った(総投票数916票、2015年11月26日〜16年5月23日)。はたして、その結果は――。

北陸人に「おおやま派」が多いワケ

全国的に見ると、だいせん(66.8%)が、おおやま(33.2%)に大きく差をつけた。おひざ元の中国地方だけでなく、関西や中部なども広くカバーしている。

県ごとの割合を見ると、「おおやま」が強かったのは10県。さすがに神奈川県は「おおやま」の領地(80.0%)だが、おとなりの東京都は、テレビにもよく出る商店街「ハッピーロード大山(おおやま)」があるにもかかわらず、64.4%が「だいせん」と回答した。


大山調査の結果

気になるのは、北陸3県(富山、石川、福井)が圧倒的に「おおやま」(3県あわせて82.6%)ということ。確たる理由は不明だが、かつて富山県に「大山(おおやま)町」があった(05年に富山市と合併)ことが関係していそうだ。なお完全に余談だが、旧大山町域には富山地方鉄道の「大川寺(だいせんじ)駅」がある。


大川寺駅(Bakkaiさん撮影、Wikimedia Commonsより)

また、「大山(おおやま)」がそびえたつ徳島県や、「大山(おおやま)駅」のある鹿児島県、県内に同名地区のある青森県、福島県、山梨県、大分県、沖縄県といったように、「おおやま」優勢の県は、その呼び方をする地名を持っているとわかった。


徳島・香川県境の「大山」山頂(Dokudamiさん撮影、Wikimedia Commonsより)

国を二分する「だいせん・おおやま論争」。当事者も意識しているようで、鳥取県大山町は08年ごろから公式観光サイトで「『大山』を『だいせん』と読ませるプロジェクト」を展開している。とはいえ16年2月には、町主導のもと、東京都内で「だいせん-おおやま食の饗宴」なるコラボイベントを開催するなど、徐々に"雪解け"は近づいているようだ。

鳥取からは大山町、神奈川からは厚木市、伊勢原市、秦野市が、それぞれの名産を持ち寄った、このイベント。伊勢原市のご当地キャラ「クルリン」は、イベント終了後、日記でこう説明している。

「『大山』っていったら、"おおやま"だけど、実は鳥取県には『大山』で"だいせん"って読む山があるんだって。クルリン、知らなかったよ」

両者の溝が埋まるのは、まだまだ先の話かもしれない――。