Q.適切な言葉を入れてコピーを完成させよ

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■客観的な数字じゃ女は動かない!

「自分をもっと愛せるように、まずはみんなに愛してほしい。」

もしこの文末が「愛されましょう」だったら、どんな印象を持つでしょう。私なら、「なぜそんなことを企業に言われなければならないの」と嫌な気持ちになります。

冒頭の文はファッションビルLUMINEの広告コピーとして書いたもの。文末をあえて一人称にしたのは、本音をつかんでいれば読む人はその企業にむしろ好感を持ってくれるという思いがあったからです。

女性にとって大切なのは、共感して「自分ごと化」できるかどうか。上から目線の乱暴な言葉は嫌われます。

でも、すべての命令口調がいけないわけでもない。例えば、資生堂の化粧品「インテグレート」に書いたコピーでは、「ラブリーに生きろ」と命令形にしています。

このブランドのターゲットは、大人のガーリーを楽しむ女性。自分の年ではちょっと可愛すぎるかも……。そんなふうに迷っている人に強く言い切ることで、「いくつになっても女子の遊び心を持っていたい」というメッセージを受け取ってもらいたいと考えました。

押すべきか引くべきか。広告の意図によって、選ぶ言葉は変わります。変わらないのは、ミットがないところにボールを投げてはいけないという原則だけです。

誰もが尊敬する人のつくった言葉ならば、どこに球を投げても受け手がありがたがって拾いに行きます。でも、普通は自分が投げると同時に、受け手のキャッチャーミットを用意しなきゃいけません。

キャッチャーミットとはつまり、自分に関係があると思えるポイントのこと。相手に自分ごと化させるために、私は微細な時代の空気をつかむことを意識しています。

政治、経済、文化……世の中の出来事に、女性も男性と同じように左右されます。ただ、反応は世代や性別によっても微妙に違う。その違いを丁寧に見ていきます。例えば同じ龍馬ブームでも、50代の男性ファンなら「それに比べて今の若者は……」と問題提起した人が多いかもしれないし、30代の未婚女性には「男は見かけによらないな」と自分の周囲を再確認する人もいたかもしれません。

20代OLのリアルは、正直、私にはわかりません。まして男子中学生の気持ちはもっとわからない。だから私は、電車の中で普段はあまり接触しなそうな人の近くに立ち、会話を盗み聞きするようにしています。その人たちの言葉がそのままコピーに使えるわけじゃないですが、どんな言葉づかいで、どんなテンションで話しているのかを知ることには意味がある。ディテールから、時代の流れが見えてくることもあります。

ただし、わかったつもりになったおもねりは禁物。若い女性とお茶をしているときに、「今の子たちってカフェ好きだよね」と言っても、「この人、うっとうしい」と思われてしまいがちです。私なら、「僕は麦茶が好きなんだよ」とか、素直な思いを話してほしいし、そのほうが共感を得られる可能性はずっと高い。コピーをつくるときも同じで、合わせたつもりでもすぐ見破られてしまいます。

ここまで「自分ごと化」の話を続けてきましたが、女性は共感だけで動くほど甘くもない。気持ちを前に向けないと動きません。

LUMINEで書いた「何を着てもかわいくない日も、たまにはあるけど。」というコピー。こだわりは「けど。」にあります。

他人にはいつもと同じように見えても、顔がむくんでいたり髪型がまとまらなかったりして、ちぐはぐに感じる日があることは女性ならみんなわかるはず。でも、その「残念な日」に共感するだけでは何も生まれません。「けど」をつけることで、「それでもあなたは素敵だよ。だからオシャレ楽しもうよ」と伝えたかったんです。

女性を動かすには、客観的な数字ですら意味をなさないときがあります。自ら前向きな気持ちになって初めて、「よし、買いに行こう!」と思う生き物ですから。

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博報堂 コピーライター 尾形真理子
1978年生まれ。2001年、博報堂入社。主な仕事に、資生堂、LUMINE、日産自動車など。朝日広告賞グランプリ受賞。10年には『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』で小説デビュー。

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博報堂 コピーライター 尾形真理子 構成=大宮冬洋)