大連デモと工場撤去から見る環境意識―環境保全の担い手は?
中国における環境問題と消費者意識 第3回
(1)環境破壊、あるいは動き出す人民たち
8月6日から翌週にわたって到来した台風9号(中国名:梅花)は、上海の東を北上して東北地方に上陸した。その影響で、大連にある石油化学工場の防波堤が決壊したことから、工場の有害物質が漏洩するのではないかという噂が広がった。この情報は地域住民の避難に始まり、やがて中国版ツイッター(微博:ウェイボー)等を通じて瞬く間に拡散、大規模なデモへと発展した。
この化学工場は、撤去されるという決定が下されたものの、身の回りで起こる環境破壊や健康被害への不安と、一瞬にして拡散する情報、そして大規模なデモという、近年の中国で頻発する抗議のありかたを如実に示すものとなった。身の回りに押し寄せる環境破壊に対して、人々は頑として抵抗する姿勢を見せ付けたのだ。
中国の環境問題に対する風当たりはますます強くなるばかりだ。日本でも中国の環境が危機的な状況にあるなか、その「失態」を報道したり、各所から様々な意見が表明されている。国際社会も、中国に対して環境保全に関する提言を行っている。
(2)諸外国への期待と政府の役割
サーチナ総合研究所(上海サーチナ)は2011年7月、中国全土3000人を対象にインターネット調査を実施。「諸外国も中国の大気汚染、生物多様性の喪失に対して改善のための提言をしていますが、あなたの考えは?」という設問に対し、回答は以下のようなものだった。
・諸外国からの提言は積極的に受け入れたい……43.4%・世界各国が共同し、国際的な枠組の中で解決するべきだ……22.6%・多国籍企業の進出にも原因があり、諸外国は協力すべきだ……20.3%・内政問題であるから諸外国からの提言は必要ない……10.2%・よくわからない……3.5%
高速鉄道の事故によってそのイメージは大きく損なわれてしまったものの、中国は最近まで日本への技術支援を切望し、被援助側から援助側の役割へさらに舵を切りたいと考えていた。こうした背景から、日本でも中国に技術支援をする必要はないという空気が散見されるが、中国の人々はなお諸外国からの提言を積極的に受け入れたいと考えているのだ。ここには、日本や欧米諸国における環境の取り組みが、繰り返しメディアを通じて喧伝されていること、そして、いかに中国の科学技術が発達しようとも、それが人々の生活環境の改善とは縁遠いと看做されていることだ。もっとも、環境は常に「外国頼み」というわけではない。
続いて、「あなたはこれらの課題の解決のために必要なことは何ですか」という問いに対し、以下のような答えが得られた。ここでは、それぞれ上位三項目を取り上げる。
水資源の汚染1.政府による政策の充実や法整備(88.1%)2.個人のたゆまぬ努力(79.1%)3.企業による環境にやさしい製品の開発(77.9%)
大気汚染1.政府による政策の充実や法整備(86.0%)2.企業による環境にやさしい製品の開発(79.1%)3.個人のたゆまぬ努力(78.0%)
気候変動1.政府による政策の充実や法整備(81.1%)2.個人のたゆまぬ努力(76.8%)3.企業による環境にやさしい製品の開発(75.8%)
森林伐採1.政府による政策の充実や法整備(88.6%)2.個人のたゆまぬ努力(78.2%)3.企業による環境にやさしい製品の開発(66.9%)
生物多様性の損失1.政府による政策の充実や法整備(86.5%)2.個人のたゆまぬ努力(77.2%)3.国際的な環境政策や環境法の整備(72.2%)
ここで明らかなように、すべての項目において政府の役割が最も必要と考えられていることだ。また、本設問では「他国からの環境技術協力」という項目も設けているが、いずれも40%前後で推移し、最下位だった。つまり、何をおいても政府に最大限の努力を求めつつ、諸外国から提言があれば、可能な限り受け入れたいというのが現実的なようだ。
そしてもう一つ、「個人のたゆまぬ努力」とは、今度どのような活動として顕現するのか。それは冒頭で述べた大連の石油化学工場のように、「デモ」という形としてしか体現されることはないのだろうか。いずれにせよ、政府、企業、そして諸外国の援助だけでは、もう自分の身を守ることはできない。そうした切実さが現れていると言えるだろう。(編集担当:前田直人・サーチナ総合研究所研究員)
