雨に打たれる背中に、焦りが滲み出ていた。

「試合になったらパーンと感じたことを、やっていかないと勝てない。ベストパフォーマンスをしているときは、どの競技でもよく覚えていないというか、無心になっているんですよ。そういう状態で、選手をプレーさせなきゃいけない」

そう言って岡田監督は、「選手自身が感じることが大事なんです」と付け加えた。1年ほど前にインタビューをしたときのことである。

2月11日に行なわれた香港戦で、岡田監督は前半だけで8回もテクニカルエリアへ出ていった。1月6日のイエメン戦はフルタイムで4回、2月6日の中国戦も同じく4回だった試合中の指示が、前半だけで倍になっていたのだ。無言でベンチへ引き上げることもあったが、それだけ気になる点があったのは間違いないだろう。

香港戦の前日会見で、岡田監督は「オフ明けでこういう状態ですけど、去年あれだけ成熟していたので、もうちょっと早く取り戻せると思っていた」と明かした。「早く取り戻せる」と想定していたものは、言うまでもなく「自分たちのサッカー」だろう。

指揮官の誤算は、どこで生じたのか。

ベネズエラ戦からの3試合については、「コンディションをあげている段階」という言い訳を、選手自身が用意していた気がしてならない。油断をしているわけではないのだろうが、どこか弛緩したムードが感じられた。中国と引き分けたことでさすがに雰囲気は引き締まってきたが、今度は「早く点を取らなければいけない、早く自分たちのサッカーを取り戻さなければいけない」という焦りが先行するようになった。

メンタルを含めた選手自身の回復力に期待していたが、香港戦が始まってもきっかけが見えない。このまま動かないと、取り返しのつかないことになってしまう。選手自身が感じ取って判断するまえに、指示を出さざるを得ない──指揮官の背中に焦りが滲み出ていたというのは、そういう意味である。

香港を3−0で退けたことで、チームはひとまず落ち着きを取り戻した。しかし、韓国との最終戦で負けるようなことがあれば、チームは再びざわめきに包まれる。

優勝できるかどうかは、大きな問題ではない。韓国を下すことで、自分たちのサッカーへの自信を深めることが大切なのだ。ほぼ2年ぶりとなる14日の日韓戦は、様々な意味でチームの今後を左右する一戦となる。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖