「あのちゃん」降板、鈴木紗理奈は激怒…「サバンナ高橋騒動」とも重なる、バラエティ「陰口トーク」がもう通用しない理由
テレ朝は謝罪
タレントの鈴木紗理奈が自身のSNSにて、自分と関係性のないタレントから「嫌いな芸能人」として名前を挙げられたことに怒りを表明した。鈴木自身はそこで具体的な名前を挙げていないが、5月18日深夜放送の「あのちゃんねる」(テレビ朝日系)におけるタレントのあのの発言を指していると思われた。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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その番組内では、あのが「ベッキーの次に嫌いな芸能人は?」と尋ねられて、「鈴木紗理奈」と答える一幕があった。その場では、なぜ嫌いなのかということについて具体的な説明はなかった。
その後、テレビ朝日は鈴木紗理奈への謝罪文を発表した。その中では「あくまでも番組上の企画・演出によるもので、あの様にとっても本意ではない状況を招いてしまいました」と、あくまでも出演者ではなくテレビ局側に責任があることを示していた。

さらに、5月23日にはあのがXで番組側に苦言を呈した上で、「あのちゃんねる」を降板することを宣言した。
この件が注目を集めたのは、少し前に似たような騒動が起こっていたからだ。ABEMAの番組内で芸人の中山功太が先輩芸人からのいじめ被害を告白した一件である。
このときにも番組内では名前は伏せられていたのだが、のちにサバンナの高橋茂雄が名指しされたのが自分であることを認めて、謝罪をすることになった。そこから間を置かずに今回の事件が起こったからこそ、タレントがテレビ番組内で陰口を言うことの是非が改めて問われることになった。
中山功太の騒動では、彼が約10年間にわたってある先輩芸人からいじめを受けていると告白したことが波紋を呼んだ。その後、彼がXで「万が一『そんな事はしていない』と吹聴するなら証拠出します」と強い言葉で主張したことで、ネット上でいじめが既成事実のように扱われて、犯人探しの機運がますます高まっていった。単なる芸人同士の過去の因縁や業界の裏話ではなく、深刻なパワハラやいじめの告発として受け止められたのだ。
高まるリスク
そして今度は、鈴木紗理奈の件である。こちらは逆に、本人不在の場で「嫌いな芸能人」として名前を出された側が怒りを表明した。ここで明らかになったのは、テレビ番組の中で誰かの悪口を言うことへの抵抗感が、以前よりもはるかに強くなっているということだ。
現在でも、バラエティ番組ではタレント同士の陰口や悪口はお手軽なトークの素材としてしばしば用いられている。共演NG、嫌いな芸能人、苦手な先輩、腹が立った芸人。そういった話題には、芸能界の裏側を覗き見るようなゴシップ的な面白さがある。
視聴者も基本的には「本音を言っている」「裏話が聞ける」と前向きに受け止めていた。テレビ側も、少し失礼なことを言わせることで場を盛り上げてきた。
だが、現代ではそのような演出をすることのリスクがかつてないほど高まっている。番組内の発言は放送された瞬間に切り取られ、ネットニュースになり、SNSで拡散され、本人や関係者の目に直接届いてしまう。
スタジオ内の空気や前後の文脈は失われ、「誰が誰を嫌いと言った」「誰が誰にいじめられたと語った」という情報だけが独り歩きする。その結果、バラエティの中では軽いトークだったものが、ネット上では名指しの攻撃や告発として受け止められてしまう。
2つの騒動から見えてきたのは、もはや陰口トークがバラエティの手法としては通用しなくなっているということだ。テレビ局や出演者が「これはバラエティのノリです」と思っていても、視聴者はそう受け取らない。
ネットニュースやSNSを通じて発言内容だけが広がってしまう現在の状況では、本人不在の陰口はテレビの中だけの遊びでは済まされない。
今後はこういう企画は減っていくことになるに違いない。また、この手の過激発言を売りにしていた一部のバラエティ番組や、毒舌系のタレントは難しい立場に置かれることになるだろう。
ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。
デイリー新潮編集部
