自動車雑誌にもよく登場する「ヨー」「ロール「ピッチ」ってなに? 知ってるつもりの人が多いクルマ用語をズバリ解説!

この記事をまとめると
■クルマを評価する際にヨー/ロール/ピッチという単語が出てくる
■それぞれの単語はクルマの動きの方向を表現する単語だ
■市販車にはどれも絶妙なバランスが求められるので開発時に苦労する要素といわれている
クルマを語る上で欠かせない3つの要素
新車試乗記などで出てくる、ヨー/ロール/ピッチとは、何なのか?
ヨーは、英語でyawと書く。乗り物が左右方向へ回転する動きを指す。クルマが、右や左に向きを変えるときの動きだ。動きのある挙動なので、ヨーイング(yawing)といういい方をする場合もある。ハンドル操作によってクルマが進路を変える際、素早く向きを変えはじめれば、ヨーが速いという。あるいは、ヨーの応答がよいともいう。

ハンドル操作を前輪へ伝えるステアリングギヤボックスのギヤ比が速い設定だと、ヨーの立ち上がりが速く、キビキビとした運転感覚になる。逆に、ギヤ比が遅い設定だと、クルマの向きが変わりはじめるのがゆっくりになる。
ただ、この速いと遅いに優劣があるかというと、必ずしもそうとは限らない。たとえばキビキビとした走りで向きが変わりやすいクルマは、一方で、まっすぐ走っているとき少しでもハンドルが動くと向きを変えてしまい、かえってふらふらした走りとなりやすい。高速道路など比較的カーブの少ない道を高速で走り続けるようなときは、ハンドルのわずかな動きに対しクルマがゆっくり向きを変える方が安定するし、安心できる。

クルマが向きを変えるヨーの動きは、ハンドル操作や、ステアリングギヤボックスのギヤ比だけでなく、タイヤ寸法や、その性質の影響も受ける。
タイヤ寸法が扁平で幅広く、かつ接地面となるトレッドゴムのグリップ(接地力)が高い銘柄は、ハンドル操作に対し素早くクルマが向きを変えやすい。逆に、寸法が扁平でなく、細身で、トレッドゴムが燃費に効果的な転がりのよさを重視する銘柄は、ハンドル操作に対しそれほど急に進路を変えることがなくなる。その分、ハンドル操作をより多めにする必要があるかもしれないが、日常的には運転しやすく、また燃費の節約にもなる。

クルマの進む向きを変えるヨーの動きは、時と場合によって良し悪しがあり、それを日常的に扱いやすく調整するのは、自動車メーカーの腕の見せ所だ。
ロール(roll)は、旋回中に車体が傾く様子をいう。これも、ローリング(rolling)といういい方をする場合がある。ロールは、旋回時だけでなく、左右のタイヤが通る路面に高低差がある場合も、車体が影響を受ける。ロールは、サスペンションの伸縮によりもたらされる。

旋回で遠心力が働くと、車体を外へはらませようとする力が働くが、タイヤの接地力(グリップ)でそれを道路に止めようとすると、伸縮するサスペンションによって車体が傾く。
固めすぎもよくなれば柔らかすぎるのもよくない
傾きの程度は、主にサスペンションのバネがもたらす。硬いバネであれば、あまり傾かない。柔らかいバネであれば、より大きく傾く。
クルマの走行安定性からすれば、硬めのバネのほうが効果的だ。一方、硬いバネは振動を車体に伝えやすいので、乗り心地が悪くなる。乗り心地の良い快適性を求めるなら、柔らかなバネがよい。

またバネは、硬くても柔らかくても、一度振動をはじめるとなかなか収まらない。一方で、クルマはたとえ低速で走っていて、たとえば時速20kmでも1秒間に5.5m先へ進む。その間、振動が収まらないと不安定になる。伸縮を素早く収束する働きをするのが、ダンパーだ。
バネの振動を制御するダンパーとの組み合わせ方でも、ロールの仕方を調整することができる。
さらに、スタビライザーという部品があり、これの有無や、強弱でもロールの程度を調節できる。スタビライザーは、ねじれを利用した仕組みで、左右のサスペンションに細い鉄の棒を渡して取り付け、旋回でのサスペンションの伸縮を制御する。

これら複合的な要素を調整し、兼ね合いをはかるのが、やはり自動車メーカーの腕の見せ所となる。
ピッチ(pitch)は、車体が前へ傾いたり後ろへ傾いたりする動きだ。加速するときは車体の後ろが下がる姿勢になる。減速では、車体の前が下がる動きになる。これがピッチである。また、ピッチング(pitching)といういい方もする。

この動きを加減するのも、サスペンションのバネとダンパーだ。ロールのところで出てきたスタビライザーは、無関係である。
走行安定性や、加速/減速といった機能をよりよく働かせるには、ピッチは少ないほうが安定し、安心も高まる。
一方で、あまりにもピッチの動きがないと、加減速の様子をつかみにくくなる可能性がある。また、動きが少ないということは、路面変化を車体に伝えやすいことにもなり、乗り心地が悪くなる懸念もある。

ロールとピッチは、どちらもサスペンションとかかわる動きであり、硬さや柔らかさの適切な妥協点が求められ、調整の難しい要素といえる。
ヨーを含め、これら3つの動きは、タイヤ性能もかかわり、複合的な要素の絶妙な調和が必要で、人によって千差万別な使い方が想定される乗用車開発では、勘所をつかむため、ある程度の走り込みといった実地での経験が不可欠になる。


