プレミア1年目のシーズンが間もなく終わる。田中にとって貴重な1年だったはずだ。(C)Getty Images

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 プレミアリーグ残留が決まった直後の一戦で、田中碧が所属するリーズは気を緩めなかった。

 5月11日、トッテナム・ホットスパー・スタジアム。残留争いの渦中にあるトッテナムを相手に、リーズは1−1で引き分けた。

 試合は、ホームの大歓声を受けたスパーズが立ち上がりから主導権を握り、リーズが押し込まれる時間帯が続く展開となった。3−4−2−1のセントラルMFで先発した田中も、まずは守備対応に追われる形となる。

 トッテナムは球際の強度と勢いで押し込み、リーズはなかなかボールを落ち着かせられない。それでも田中は、中盤で相手のパスコースを消しながら走り続け、時には相手SBのペドロ・ポロからボールを奪うなど、守備面で粘り強く対応した。

 一方で攻撃では難しさを抱えた。チーム全体が押し込まれ、自陣から前進する回数自体が限られる。田中自身も、左サイドから左足で狙ったシュートが外れる場面があり、得意とするテンポ作りや前向きな配球を十分に発揮できたとは言い難かった。

 後半、トッテナムが先制すると、スタジアムの空気は一気にホーム側へ傾く。だがリーズは崩れない。イーサン・アンパドゥが相手エリア内でハイキックを受け、VAR介入の末にPKを獲得。ドミニク・キャルバート=ルーウィンが決め、試合を振り出しに戻した。

 するとリーズは、むしろそこから前向きさを増していく。田中は自陣深くまで戻って危険なスペースを埋め、スライディングタックルで相手のカウンターを潰すなど、守備面で存在感を示した。

 アディショナルタイムは13分。90+3分、田中はショーン・ロングスタッフと交代した。ベンチへ戻る際、ダニエル・ファルケ監督は田中の肩を叩き、労をねぎらう。その仕草からは、終盤まで走り続けた背番号22への信頼もうかがえた。
 
 ファルケ監督は試合後、「このクラブのシャツを着るなら、常にすべてを懸けてプレーしなければならない」と語った。残留決定後の試合でも戦う姿勢を崩さなかったリーズ。その姿勢を、田中もまたピッチ上で体現していたと言える。

 この日の田中は、攻撃面で違いを作るというよりも、チーム全体のバランスを保つ役割が強かった。 田中の特長は、常に小刻みに動きながら、次に立つべき場所を探し続けるところにある。首を頻繁に振りながら上下左右に細かく動き、状況に応じて最適な位置を探りながらプレーする。その探知能力は、リーズの中盤に攻守両面でリズムを与えようとしていた。

 一方で、課題が見えた場面もある。65分には中盤の底で相手のプレスを受けながらボールを受け、やや慌てた形で左サイドへパスを展開。これは途中でカットされた。

 大きなピンチにはならなかったが、プレミアリーグ特有の強度とスピードの中では、一瞬の判断のミスがそのまま流れを左右する。そうした難しさを感じさせる場面でもあった。

 トッテナム戦後、リーズの選手たちはアウェーまで駆けつけたサポーターのもとへ歩み寄った。残留決定の喜び、そしてトッテナム相手に粘って勝点1を持ち帰った充実感。スタンドとピッチの間には、今季の苦闘を分かち合うような時間が流れていた。田中もまた、拍手を送りながらサポーターの声援に応えていた。
 
 リーズの残留は、この試合前にすでに決まっていた。週末に行なわれたウェストハム対アーセナルで、降格圏18位のウェストハムが敗戦。この結果により、リーズのプレミアリーグ残留が確定した。昇格組が苦しむ近年のプレミアリーグにおいて、残り3試合の時点で安全圏に到達した意味は小さくない。

 ファルケ監督も「クラブにとって非常に大きな成果だ」と胸を張った。さらに「過去の昇格チームほど、我々は資金を使っていない。3試合を残して残留を決めたのは本当に大きい」とも語っている。