「糖尿病」を発症すると「体臭」が変化する原因はご存知ですか?【医師監修】

糖尿病があるからといって、すべての方に体臭の変化が起こるわけではありません。しかし、血糖管理が長期間乱れている場合や、糖尿病が重篤な状態に進行した場合には、代謝や体内環境の変化が排泄物や呼気に影響し、体臭や口臭、尿や汗の匂いが変化することがあります。

本記事では、糖尿病で体臭が変化するメカニズムなどについて解説します。

※この記事はMedical DOCにて『「くも膜下出血の原因」となる可能性の高い食べ物はご存知ですか?医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
上田 莉子(医師)

関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

糖尿病で体臭が変化するメカニズム

なぜ糖尿病になると体臭が変化するのですか?

糖尿病による体臭の変化は、血糖値が高い状態が続くこと自体が原因ではありません。

インスリンの作用が著しく低下すると、身体はブドウ糖をエネルギーとして十分に利用できなくなり、脂肪を分解してエネルギーを確保しようとします。結果として肝臓でケトン体が大量に産生されます。

肝臓や腎臓での処理能力を超えるほどのケトン体は、呼気や尿などを通じて体外へ排出されます。結果として、アセトン臭と呼ばれる甘酸っぱい匂いが生じます。

参照:
『においと疾病─生体ガス測定から何が拓けるか』(におい・かおり環境学会誌36巻5号平成17年)
『ケトーシス, ケトアシドーシスの鑑別』厚生労働科学研究成果データベース

尿や汗の匂いが変わる理由を教えてください

尿や汗のにおいの変化は、体内でケトン体が過剰に生産されることと深く関係しています。

インスリンが極端に不足した状態では、ケトン体が血中に増加し、尿中にも排泄されるようになります。結果として、尿から甘酸っぱいようなアセトン臭が感じられることがあります。尿中にケトン体が排出される状態は、通常は糖尿病性ケトアシドーシスと呼ばれる急性の合併症でみられるもので、軽症の糖尿病や糖尿病予備軍で起こるものではありません。

参照:
『腎グルコーストランスポーターと抗糖尿病薬』田辺三菱製薬株式会社薬理研究所薬理第二部薬理2Aグループ
『糖尿病に関するQ&A』(日本糖尿病協会)
『においと疾病─生体ガス測定から何が拓けるか』(におい・かおり環境学会誌36巻5号平成17年)
『ケトーシス, ケトアシドーシスの鑑別』厚生労働科学研究成果データベース

なぜ糖尿病で口臭がきつくなるのですか?

血糖値が高い状態では、身体が慢性的に脱水傾向となり、唾液分泌が低下しやすくなります。唾液は、口腔内の細菌を洗い流し、匂い物質の発生を抑える役割を担っています。そのため、唾液の分泌が低下すると舌苔や歯周ポケット内の細菌が増え、口臭成分が産生されやすくなります。

また、血糖管理が著しく悪化し、インスリンが極端に不足した状態では、エネルギー源として脂肪の分解が進み、ケトン体が体内で多量に産生されます。結果として、ケトン体の一種であるアセトンが呼気として排出され、甘酸っぱいアセトン臭と呼ばれる口臭が発生します。

参照:『糖尿病と口の中の健康』(糖尿病情報センター)

編集部まとめ


糖尿病があるからといって、必ず体臭や口臭が変化するわけではありません。多くの糖尿病患者では、日常生活のなかで明確なにおいの変化はみられないのが実情です。
一方で、血糖管理が不十分な状態が続いた場合には、口臭や尿の匂いが変化する可能性があります。

ただし、甘酸っぱいアセトン臭は、糖尿病性ケトアシドーシスなどの重篤な代謝異常時にみられる症状であり、軽症の糖尿病や糖尿病予備軍で一般的に起こるものではありません。

気になるにおいが続く場合や、急激な変化を感じた場合には、自己判断せず、医師に相談しましょう。

参考文献

『においと疾病─生体ガス測定から何が拓けるか』(におい・かおり環境学会誌36巻5号平成17年)

『ケトーシス, ケトアシドーシスの鑑別』厚生労働科学研究成果データベース

『腎グルコーストランスポーターと抗糖尿病薬』田辺三菱製薬株式会社薬理研究所薬理第二部薬理2Aグループ

『糖尿病に関するQ&A』(日本糖尿病協会)

『糖尿病と口の中の健康』(糖尿病情報センター)