“オルカン”や“S&P500”もいいけど…投資家として巨万の富を築いた杉村太蔵が今最も薦めたい投資方法〉から続く

「過去最高のポテンシャル」と言い切る日本株の投資先を選ぶ際に杉村太蔵が参考にしているのは誰でもアクセスできる“あの文書”だった――。「超インフレ時代を生き抜くための新・投資入門」(文春MOOK)より、一部抜粋し、太蔵流銘柄選びの極意をお伝えする。(全2回の2回目/最初から読む)

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政府の「骨太の方針」を熟読。杉村流、10倍株の見つけ方

――個別株の選定が難しいですよね。

杉村 たしかに、上場している株だけで4000銘柄ありますからね。そこで、私が注目するのは、政府が出す「骨太の方針※1」です。国がどこにお金を使おうとしているのか。官民一体となって解決しようとしている社会課題は何かがわかるものです。

――具体的な銘柄選びについては、政府の「骨太の方針」を熟読されるそうですね。

杉村 投資をするときに「いくらで売るか」を考えるのは素人です。プロは「いつ売るか」を考えます。私は自分の収入がなくなる時期を「老後」と考え、それまで、売るつもりはありません。その長期的な視点に立ったとき、もっとも信頼できる指針が「骨太の方針」なんです。

――国の政策に紐づいた銘柄を探す、ということですね。

杉村 そうです。「骨太の方針」を読み込んで、これから国策として推進される分野のキーワードを見つける。例えば危機管理投資、人材育成、AI……。そういった分野で、2倍、あるいは10倍(テンバガー)を狙える会社はどこか。それを探すプロセスが楽しくて仕方ないんです。


日本株のポテンシャルは過去最高

――なぜ、そこまで「骨太の方針」を重視するのですか?

杉村 そこには「この国に何が足りないか」「政府が何を解決しようとしているか」がすべて書かれているからです。官民一体となって取り組む社会課題には、必ず大きなお金が動きます。私は毎年6月に出るこの方針を読み込み、自分の中で「これは来るな」というキーワードを見つけ、関連する企業を四季報などで探していくんです。

杉村流・銘柄探しの3ステップ

Step1・毎年6月に発表される政府の「骨太の方針」を熟読する
Step2・社会課題の解決につながるキーワードを抽出する
Step3・四季報などで関連銘柄を検索し、自分の「推し」を見つける

NTT、そして北海道――杉村氏が注目する具体的なテーマ

杉村 本にはたくさん具体的な銘柄の例をあげていますが、例えばNTTの「IOWN構想※2」は非常に面白い。光による全く新しい通信スタイルの構築は、まさにゲームチェンジャーになる可能性があります。

――ご出身の北海道に関連する銘柄も挙げられていましたね。

杉村 北海道電力にも注目しています。いま北海道にはラピダス※3が半導体工場を作り、ソフトバンクが巨大なデータセンター※4を作ろうとしています。これらを実現するには膨大な電力が必要ですが、北海道には「洋上風力発電」という巨大なポテンシャルがあるんです。

――電力が不足するのではなく、むしろ余るほどの供給源になり得ると。

杉村 政府も洋上風力発電の開発を諦めていません。もしこれが軌道に乗れば、北海道は世界のデータセンターの拠点になれる。そんなマクロの展望を「骨太の方針」から読み取り、自分の故郷の企業の成長を応援する。これこそが投資の楽しさ、「推し活」としての投資なんです。

――日経平均株価の先行きについては、どう見ていますか?

杉村 私は2035年までに、日経平均は「8万円」に到達すると本気で思っています。

――8万円! その根拠は?

杉村 一つは先ほど言った、企業の稼ぐ力の凄まじさ。そしてもう一つは、地政学的な視点です。最近読んだ齋藤ジンさんの本にも感銘を受けましたが、アメリカにとって今の日本は、かつてないほど「必要なパートナー」になっています。中国に対抗するために、アジアにおける強固なサプライチェーンの拠点として、日本を勝たせなければならない。

――日米が一体となって、再び日本を経済成長のレールに乗せようとしている。

杉村 その流れの中で、80兆円の対米投資が行われ、半導体や重要物資の国内生産が加速する。円安を背景にした国内回帰の流れもあり、日本経済には凄まじい上昇圧力がかかっています。このビッグウェーブに乗らない手はありません。

「超富裕層」かもしれない男が伝えたい、投資の「本当の喜び」

――杉村さんの資産額についても気になるところです。よくピラミッドで「超富裕層(5億円以上)」などの定義がありますが、杉村さんはどのあたりに?

杉村 いやぁ、細かいことは言えませんけどね、自分では「富裕層ではないな」と思ってます。……もしかしたら「超富裕層」の方かもしれませんけど(笑)。

――(笑)。それほどの資産を築いてもなお、投資を続ける理由は何ですか?

杉村 お金が増えることもそうですが、自分の仮説が当たった時の喜び、そして日本という国が成長していくプロセスに自分がコミットしている感覚、それがたまらないんです。

――最後に、投資を始めようか迷っているビジネスパーソンにメッセージをお願いします。

杉村 今の日本株のポテンシャルは、過去最高です。内部留保300兆円、企業利益8倍、そして新NISAという最強の武器。この環境が整っているのに、何もしないのはもったいない。私の本には、私が証券会社と衆議院議員として学んだことのすべてを詰め込みました。ぜひこの本を片手に、「自分ならどの会社で子供や孫を働かせたいか」という視点で、日本株の世界に飛び込んでみてください。未来は明るいですよ!

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※1骨太の方針…正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」。毎年6月頃に政府が策定する、翌年度の予算編成や重要政策の大きな方向性を示す羅針盤である。小泉政権下で始まり、経済成長、財政健全化、社会保障など、国の最優先課題への取り組みがまとめられる。政府が今、何に最も注力し、どこに予算を投じようとしているかを知るための最重要文書である。

※2 IOWN構想…NTTが提唱する次世代の情報通信基盤。電気信号の代わりに「光」を通信と計算に使うことで、圧倒的な低消費電力、大容量、低遅延を実現する。2030年頃の実用化を目指している。

※3ラピダス…次世代の最先端半導体を日本で国産化することを目指し、トヨタやソニーなどが出資して設立された新会社。海外勢に遅れをとった半導体産業を再興させるため、政府も巨額の支援を行う。「日の丸半導体」の再挑戦を象徴するプロジェクトである。

※4データセンター…サーバーやネットワーク機器を設置・運用するための専用施設のこと。膨大なデータを処理・保存する「ネット社会の心臓部」であり、クラウドサービスAIの普及により世界中で需要が急増している。安定した電力供給と冷却設備が不可欠。

(杉村 太蔵/文春ムック)