年間およそ3600人、増加する「死んだ夫と離婚した妻たち」の告白

写真拡大 (全4枚)

タダ働きの介護要員にさせられて

「昨年1月に夫が脳出血で急死しました。56歳でした。その悲しみも癒えないうちに80歳の舅が脳梗塞で倒れて麻痺が残り、介護が必要になったのですが、2歳下の姑(78歳)と小姑たちが、舅の介護を私に丸投げしたんです。

パートを辞めざるを得ず、自宅にも戻れず、住み込み状態で介護をしました。にもかかわらず、姑は『死んだ息子のぶんまで私たちに尽くしてちょうだい』などと言っては、介護のやり方に不満や文句をぶつけてきました。

介護ベッドの購入や、手すりを付けて段差をなくす家のリフォーム代なども夫の遺産から出すように頼まれる。遺産は子供や孫への貯蓄でもあったので、当然のように私の息子と娘は激怒しました。

『タダ働きの介護要員にさせられただけじゃなく、財産までむしり取られたらたまったもんじゃない。もう婚家とは縁を切ったほうがいい』と死後離婚をすすめられたので、昨年11月に姑に伝えました」

増え続ける「死後離婚」とは

栃木県に住む桐生京子さん(55歳、仮名)が、死後離婚したときの体験をそう明かす。姑は案の定、「親を見捨てるなんて薄情な嫁だ!」と罵声を浴びせたというが、京子さんも負けなかった。

「義両親よりも、今後の生活や子供たちのほうが大切だったので、それを聞き流し、12月に死後離婚しました。今は自宅でのびのびとひとり暮らしを楽しんでいます。

今年に入ってすぐに元舅が亡くなりました。私はもう他人なので葬儀には行きませんでしたが、子供や孫たちは参列したようです。先日、弁護士から、舅の遺産を子供たちが相続できると告げられて、ホッとしています」

京子さんが決意した「死後離婚」とは、配偶者と死別した後に、義理の親族(姑・舅など)との姻族関係を終わらせる手続きである。生きている配偶者が、本籍地か居住地の市区町村役所に、「姻族関係終了届」を提出するだけで手続きは済む。義理の親族にあらかじめ提出を告知する必要はない。

死後離婚に詳しい、ガーディアン法律事務所の弁護士・園田由佳氏が解説する。

「3親等内の姻族については、介護などの特別な事情がある場合に、その扶養義務を負わされることがありますが、姻族関係終了届を出すことで、この義務を負うリスクをなくせます。

終了届の届け出件数が統計的に徐々に増えているのは、核家族化とお墓の問題が影響しているように感じます。ひと昔前の結婚は家と家との結びつきでしたが、今は夫婦同士の結びつきのほうが重要になりました。配偶者の死後は、姻族との関係にとらわれる必要はないという価値観に変わってきたのでしょう」

離婚協議を進めている最中に……

'14年にNHKの番組『あさイチ』で「死後離婚」についての特集が組まれてから届け出件数は急増、'17年度には4895件と過去最高を記録した(下図参照)。'24年度も3627件と依然多く、勇気をもって親族を手放す人々がいることを示している。

男女問題に詳しい行政書士の露木幸彦氏は、「死後離婚する人の9割は、生前の夫婦関係が破綻しています」と前置きしたうえで、こんな事例を挙げた。

都内在住の高橋幸子さん(58歳、仮名)は、年収450万円を稼ぐ正社員。一人娘(28歳)が独立し、夫(59歳)と姑(84歳)の3人で暮らしていた。自営業の夫は亭主関白で、稼いだおカネはギャンブルにつぎ込み、カードローンにも手を出した。

3年前、姑が脳梗塞で倒れて脚の一部に麻痺が残ると、夫は「母親のシモの面倒なんて見られるわけないだろ」と、介護を幸子さんに押し付けてきた。介護される姑も「嫁は何もしてくれない」と、感謝の一言もない。

離婚の文字が頭によぎりながら、姑の介護を始めて2年半が過ぎたころ、今度は夫が倒れる。搬送された夫は肝臓がんと告知され、数ヵ月後に亡くなった。夫の財産は残らず、姑の介護が残ったのだ。

生前、夫の遊びをたしなめなかった姑への怒りもあり、義理の弟に母親の面倒を見てほしいと切り出して、死後離婚した。露木氏が語る。

「義母は、離れて暮らす次男に長男の嫁である幸子さんの愚痴を何度もこぼしていたため、次男は『ろくでもない女』だと信じ切っていた。なので、次男は『そんな人間に母親の介護など任せていられない』と、すんなり死後離婚できた事例です」

【後編を読む】「嫁のせいで息子は死んだ」と義両親に…「死後離婚」を決意した妻が直面した「思わぬ後悔」

「週刊現代」2026年5月11日号より

【続きを読む】「嫁のせいで息子は死んだ」と義両親に…「死後離婚」を決意した妻が直面した「思わぬ後悔」