ワンガンブルーの日産フェアレディZに乗りたくて【日本版編集長コラム#80】
何だかときめくフレーズ
ワンガンブルーの日産フェアレディZに乗る。
【画像】マイチェン目前の2025年モデル!ワンガンブルーの『日産フェアレディZバージョンST』(6速MT) 全43枚
何だかときめくフレーズだ。甘酸っぱいというか、平成っぽいというか、そこはかとなく青春の匂いがしてくる。人によっては汗臭いかもしれないし、人によっては切ないかもしれない。

今回の取材車は日産フェアレディZバージョンST。ボディカラーはワンガンブルー! 平井大介
昭和40年代男である筆者にとって、フェアレディZは常に憧れの存在だ。
そのあたりの話は『#6思春期の頃に影響を受けた日産車の話』で一度書いているので詳しくは割愛するが、叔父が新車で購入したライトブルーのZ31があまりに神々しかったことは、約40年を経た今でも鮮明に覚えている。
というわけで、毎月、日産自動車広報から配信される広報車リストでフェアレディZを確認する度に取材したい熱が高まっており、マイチェンを目前とした今、ついにお借りした次第だ。
取材車は2025年モデルの『バージョンST』で、トランスミッションは6速MT。ちなみに2026年モデルまでのラインナップは、標準モデル、バージョンS、バージョンST、ニスモの4グレード。6速MTと『9M-ATx』と呼ばれる9速ATを用意し、ニスモだけ9速ATのみとなる。
マイチェンは1月の東京オートサロンで2027年モデルとして発表され、今夏に発売予定。『Gノーズ』が復活したのが大きなトピックで、ショックアブソーバー大径化や、ニスモのMT追加なども気になるところだ。
「おお……いい色だ……」
日産自動車本社駐車場で対面した、ワンガンブルーのフェアレディZバージョンST。
「おお……いい色だ……」

センターコンソール上に、フェアレディZではお馴染みとなる3連メーター。 平井大介
その場には広報車担当の方とふたりだったので、もちろんこれは心の声である。
車両チェックのため一周すると、S30、S130をオマージュしたフロントまわり、Z32をイメージさせるテールランプなどが、室内に乗り込むと、フェアレディZではお馴染みとなるセンターコンソール上の3連メーターが目に入ってきた。
そういったディテールを発見する度にときめきが増し、やはりフェアレディZが好きなんだなぁと改めて実感する。
冷静になれば、プロダクトとして目新しさは特になく、電動化もされていない。現行モデルが発表される前は『EVで出てきたら凄いなぁ』と思っていたが、正直に書けば、あまりにオーソドックスすぎて肩透かしだった。
しかし実車を目に前にして冷静でいられるはずがなく、今となってはその決断に感謝せねばならない。
ボディサイズは全長4380mm、全幅1845mm、全高1315mmと、現代においてはコンパクトに感じるサイズ。ちょっと驚いたのは、体積で計算するガソリンスタンドの手洗い洗車がSサイズ扱いだったことだ。
パワーユニットは3LのV型6気筒DOHCツインターボで、スペックは405ps/475Nmとなる。型式は『VR30DDTT』で、DDとTTがふたつずつあり何だか凄そう! という記号性は実に日産らしいもの。
そう考えると車名もデザインも何も全部、『フェアレディZとは記号である』と極論できてしまう……と思った。
4000rpmくらいからの吹け上がりとサウンド
実車に乗りはじめて思ったのは、ノーズが外から見て感じたほど長くないことと、サイドミラーから見えるリアフェンダーが結構グラマラスであることだ。そこには記号性だけではない、機能性やデザイン性も感じられる。
夕方ということもあり早々に渋滞にはまり、マニュアルを借りたことを少し後悔した。ストロークがもっと短くでもいいのになぁと、段々シフトをするのが面倒になってきたほど。

3LのV型6気筒DOHCツインターボ『VR30DDTT』。スペックは405ps/475Nmとなる。 平井大介
そこで室内を眺めていて気になったのは、センターコンソールとドアパネルに使われている青いレザーの色合いが微妙に異なることだ。675万9500円もするクルマなのだから……とネガティブに思ってしまったのは、きっと長く続いた渋滞のせいである。
渋滞を抜け、西に向かって高速道路を流していて感じたのは、良くも悪くもクルマが緩いこと。肩の力が抜けているとも、クルマの緊張感が足りないとも書けるが、キツイのが欲しい人はニスモをどうぞ、ということなのだろう。
しかし自分でシフトして走るのは実に気持ちよく、都心を離れるにつれ、ネガティブな感情が少しずつ薄れていくのを感じた。
VR30DDTTの美味しいところは、4000rpmくらいからの吹け上がりとサウンドだ。街中、高速道路、ワインディングといろいろ走ってみて、その領域を使える場面をついつい探してしまった。なお、コーナリングが思いのほか気持ちよかったことは強調しておきたい。
そんな様々な場面で伝わってきたのは、スポーツカーとGTカーの中間にある絶妙なバランスだった。これこそ、歴代フェアレディZが有してきたポジショニングそのものだ。
いい意味でバタ臭い雰囲気
実は偶然にも車両引き取りの際、日産自動車本社1階のショールームで歴代モデルを展示していた。
それは『1968年ダットサン2000スポーツ(SRL311型)』、『1983年ニッサン300ZXターボTバールーフ50thアニバーサリー(カナダ仕様/Z31型)』、『1992年ニッサン300ZX 2シーターTバールーフ(Z32型)』の3台で、いずれも左ハンドルの海外向けである。

日産自動車本社1階のショールームで展示中だった歴代モデル。全て左ハンドルの海外向けだ。 平井大介
歴代モデルが北米市場で愛されてきたことはよく知られており、ミスターKが……という話は長くなるので控えるが、広大な大地や西海岸が似合ういい意味でバタ臭い雰囲気もまた、フェアレディZの魅力なのだと思う。
技術力が上がりメーカー間の品質差が少なくなった昨今、購入の決め手になるのは、クルマが持つストーリーとなる場合が多い。それは自動車に限らない話だ。しかし、プロダクト自体にストーリーがあり、さらに乗り手側からも重ね合わせたくなるストーリーがたくさんあるケースは、それほど多くない。
フェアレディZはまさにそういうクルマで、今ならかつて『EVで出てきたら凄いなぁ』と思った自分に、『こういうのでいいんだよ!』と断言できるのであった。
