テレビで、住居費を経費計上して節税しているというタレントを見ました。こういった方法は一般の人でも可能なのでしょうか?
「住居費を経費計上して節税している」とはどういうことか?
本事例において、まず理解しておかなければならないのは、税制における「タレント」の立場です。一般に、会社(芸能事務所など)とタレント(個人)は、マネジメント契約により結びついています。
会社員のように会社と雇用契約により結びついているわけではありません。つまり、タレントは個人事業主であり、所得の種類は事業所得となります。事業所得は、以下のとおり計算します。
事業所得の金額=総収入金額-必要経費
総収入とは、主に事業の売上金額のことをいいます。必要経費とは、収入を得るために要した費用のことをいい、家賃も業務に関する部分については必要経費に含まれます。
ただし、必要経費として認められる家賃は、業務を行ううえで直接必要であったと認められる部分に限られ、業務上必要とは認められない部分については必要経費として経費計上することはできません。
したがって、家賃のうち業務に関する部分については、経費計上することで事業所得金額が下がるため、所得税を節税できるといえます。
一般の人でも住居費による節税は可能なのか?
家賃を必要経費とすることによる節税は、事業所得者である個人事業主であれば可能ですが、給与所得者である会社員にはできません。給与所得は、以下のとおり計算します。
給与所得の金額=収入金額-給与所得控除額
収入金額とは、主に年収のことをいいます。給与所得控除額とは、収入金額に応じて差し引かれる金額のことをいいます。給与所得の計算には必要経費がないため、事業所得のように家賃を必要経費にすることで節税をするということができません。
しかし、別の方法によって節税することができます。社宅や寮を借りるとき、節税できるといえます。会社が物件を借りて従業員に提供する住宅を社宅・寮といいますが、従業員が会社に一定額の家賃を支払っている場合、所得税が課税されないためです。
先ほど、収入金額は主に年収のことといいましたが、実は収入金額には、金銭で支給されるもののほか、金銭で支給されない「経済的利益」も含まれます。
もし、従業員が社宅や寮を無償、または低額で借りたとしたら、それは経済的利益として収入金額に含まれ、所得税の課税対象になります。しかし、従業員が一定額の家賃(賃貸料相当額の50%以上)を支払って社宅や寮を借りれば、それは経済的利益には該当せず、所得税の課税対象にはなりません。
例えば、賃料相当額が10万円の住宅を従業員が会社から借りるとします。従業員が会社に払う家賃が3万円の場合、賃料相当額の50%以上に該当しないため、賃料相当額10万円と家賃3万円の差額7万円は給与とみなされ、所得税の課税対象となります。
一方、家賃として5万円支払う場合、賃料相当額の50%以上に該当するため、賃料相当額10万円と家賃5万円の差額5万円は給与とみなされず、所得税の課税対象にはなりません。つまり、この部分において節税できるといえます。
まとめ
本記事では「『住居費を経費計上して節税している』とはどういうことか?」「一般の人でも住居費による節税は可能なのか?」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。
・「住居費を経費計上して節税している」とは、事業所得を得ている人が家賃を必要経費に含めることで、所得税を節税しているということ
・一般の人でも社宅や寮を借りている場合は、経済的利益についての節税は可能
事業所得において、家賃を必要経費に含めることができるのは、事業に関する部分(割合)においてのみです。事業に関係のない、住居としてのみ使用している部分については必要経費に含めることができません。
会社員が社宅や寮を借りている場合、経済的利益を得ます。この経済的利益は、給与として所得税の課税対象になります。しかし、一定額(賃料相当額の50%以上)の家賃を支払っている場合、たとえ賃料相当額より低額であっても、その差額に対し所得税は課税されません。
タレントが得ている所得は事業所得であり、会社員が得ている所得は給与所得です。所得の種類の違い(事業所得か給与所得か)により節税の方法も異なることをご理解いただけたのではないでしょうか。
出典
国税庁 No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)
国税庁 No.2210 必要経費の知識
国税庁 No.1400 給与所得
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 上級心理カウンセラー
