【中川安奈のFRIDAYReport】フェンシング・江村美咲から学ぶ「強いメンタルの作り方」

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異彩を放つブロンドの五輪メダリストが登場!昨季世界ランキング1位、にもかかわらず揺らいだメンタル。頂点の先に見えた″心の整え方″とは。

第2回ゲストは江村美咲(写真右)さん!

ご機嫌でいるために

中川 初めて江村さんを拝見したのはパリ五輪に臨む選手団の結団式でした。あの時は旗手を務めてらっしゃいましたよね。目をひく金髪に凛とした佇まいがまるでモデルさんのようでもあって。そうかと思えば、メダル獲得後に『サンデースポーツ』のスタジオでお会いした時には、クシャッとした笑顔がとってもキュート。ギャップにやられてしまいました。

江村 話したことがない人には見た目だけで結構怖がられます(笑)。試合中のピリッとしたイメージしかないでしょうし。

中川 パリ五輪の団体銅メダルに続き、昨シーズンは世界ランキング1位を獲得。現在も大会のたびに世界を回っています。そんななか、YouTubeで発信されていましたが、五輪後にモチベーションを保てない時期があったそうですね。

江村 それは今でも安定していません。気持ちがフレッシュじゃないまま試合に臨んでいる自分がいるのは事実です。不思議なものでそういう時ほど、大会で1位を獲れたりもする。ただそんな形で優勝できたところで再現性がないから、このテンションで次の五輪に向かうことはあり得ません。自分でコントロールできるよう、試行錯誤している段階です。

中川 現在27歳で、選手としては成熟期。そのあたりの難しさがあるということでしょうか。

江村 ここまでキャリアを積み重ねてきたからこそ感じることだとは思います。今は結果はもちろんですが、自分がやりたいフェンシングができているかとか、パフォーマンスの質とか、なにより楽しめているか。そういったことを叶えながら試合に臨みたいなって。元々、好きで始めた競技ですから。強くなりたくて、倒したいライバルがいてずっと頑張ってきた。だけど、それがいなくなって目指すべき目標が変わってきたというのが現状ですね。自分のやりたいフェンシングをどう追求するかということにも気持ちが向いています。

中川 この取材前に話されていて驚いたのですが、海外遠征時の飛行機をご自身で手配されることもあるそうですね。

江村 そうですね。協会に手続きをしてもらうこともありますが、自分で調べたほうがたいてい安くなるので。自分でやることは珍しくないですね。基本、渡航費用はほとんどの選手が自己負担なんです。フェンシング協会は規模が大きくはないので。

中川 そうなんですか! たとえば疲労が少ない直行便よりも、予算優先で大変な乗り継ぎ便を選ぶこともありますか?

江村 ありますね。基本エコノミーですし、直行便は珍しいかもしれません。私はありがたいことにスポンサーさんもいるので、正直恵まれているほうですが、学生の選手はそういう面で大変です。

「オフという予定」の大切さ

中川 コンディションを整えるだけでもひと苦労ですね。肉体的なことに加えてメンタル的な安定も重要でしょうし。

江村 メンタルに関しては元々完璧主義なところがあって、前は常にイライラしていました。大きな大会の前は周りの人たちが敵みたいにすら思えてきて。

中川 アスリートでもなんでもない私が言うのも差し出がましいですが、すごくわかります。自分が敏感になっている時って、周りの人が良かれと思って発する言葉ですらちょっと遠慮願いたくなることもあったりしますよね。

江村 そうなんです。じゃああなたのアドバイス通りにして結果が出なかったとしたら誰が責任取ってくれるんですか?  なんて思ったり。試合前は確実に性格が悪くなっていました。

中川 それって改善できるものなんでしょうか? 私はまだまだ全然……。

江村 私も模索中ではありますが、試合当日をいかにご機嫌な状態で迎えられるかということは意識するようになりました。結果的に試合のパフォーマンスにも直結することに気がついて。短期的にも長期的にも、ご機嫌でいることを大切に。

中川 休日をしっかり設けるとかでしょうか。

江村 そうですね。かつてはオフらしいオフも作っていなくて。あったとしても走りに行ったり、なにかしら動いていないと落ち着きませんでした。

中川 私なんて今がまさにそうです。フリーになったばかりなので、お仕事がスケジュールにしっかり入っているだけでホッとします。

江村 私も試合で後悔を残したくないという一心で、今思い返すとすごいなってくらい毎日練習していました。それがあるころからフェンシング漬けの日々に限界がやってきて。東京五輪後、’22年の時でした。身体にも影響が出始め、吐き気や下痢で練習ができない日もありました。

中川 それは振り返ってみると、メンタルから来たものだと思いますか?

江村 確実にそうだと思います。その後、2週間の休暇をいただきました。フェンシングを始めてからそんなに長い期間休んだことは一度もなくて。その時にすべてリフレッシュしたいなって思い、この金髪にしました。やってしまえ! って(笑)。そこで初めて休息すること、切り替えることの大切さを学べましたね。

中川 その思い切りがこれまでの結果に繋がっているんですね。普段の休みはなにをされていますか?

江村 「オフという予定」を入れている感じです。たとえば誰かに誘われても、オフだからごめんなさいする感じで。

中川 素敵な発想ですね。

江村 朝起きる時間も決めないし、目覚ましすらかけません。なににも追われない日を作ってバランスを取っています。

《えむら・みさき/大分県出身。’21年に中央大学法学部を卒業後、フェンシングで日本初のプロ選手となる。’24年パリ五輪では団体で銅メダルを獲得。2024-2025シーズンの国際フェンシング連盟ランキングで日本女子サーブル史上初の1位に輝いた》

《なかがわ・あんな:東京都出身。幼少期をフィンランドやプエルトリコで過ごす。’16年にNHKにアナウンサーとして入局し、『サンデースポーツ』やパリ五輪の現地キャスターとして活躍。’25年春に同局を退局後、芸能事務所のホリプロに所属しフリーアナウンサーやタレントとして幅広く活躍する》

『FRIDAY』2026年5月1・8日合併号より