引退試合に勝利し会見する武尊

写真拡大

◆ONE「ONE SAMURAI 1 フライ級キックボクシング暫定王座決定戦 ロッタン VS 武尊」(29日、有明アリーナ

 世界最大の格闘技団体「ONE Championship」は29日、有明アリーナで「ONE SAMURAI 1 フライ級キックボクシング暫定王座決定戦 ロッタン VS 武尊」を開催した。

 メインイベントでこの試合で「引退」を公言した元K―1三階級制覇王者の武尊がロッタン・ジットムアンノン(タイ)が5回2分22秒、TKOで倒し劇的な勝利で有終の美を飾った。

 試合後の会見で武尊は「本当に嬉しいの一言しかないですけど…34歳、今の年まで現役やるとも思ってなかったし、身体的にも…持たないかなと思ってたんですけど、本当にたくさんの人の支えのおかげでここまで格闘家としてやってこれて、最後にチャトリがタイトルマッチ組んでくれて、そのおかげでこの引退試合のモチベーションがやっぱ、めちゃくちゃ変わったんで。本当にONEのスタッフ、チャトリ、みんなにホント感謝ですね。現役最後、この試合ができて本当に幸せです。ありがとうございます」と感謝の思いを明かした。

 代表質問で今後の目標や展望を聞かれ「現役生活は今日で終わりですけど、本当にこの格闘技の熱だったり…を止めたくないし、僕はやっぱ、魔裟斗さんが盛り上げた日本格闘技界…魔裟斗さんが引退して一回盛り下がって、僕が憧れてK―1目指して東京出たけど、K―1が1回消滅しちゃって、テレビでとか…表舞台から格闘技がなくなっちゃって。最初に苦しい時期を過ごしたので。僕に憧れて格闘技を始めてくれた子供たちとか、これからのファイターにちゃんと同じようにこの盛り上がる舞台を残してあげたいし。次の格闘技を引っ張る選手が出てくるまで、僕はK―1とかRISEとかいろんな団体がありますけれど、どの団体も一緒に盛り上げたいと思ってるので、できることがあれば僕も協力するんで。格闘技界をこれから盛り上げ続けていくことをやっていきたいなと思ってます」と明かした。

 フリーライターから「最大の勝因」を聞かれた。

 「ONEに来て自分の弱さをちゃんと認識できたのが…今までの闘いって…ずっと勝ち続けてきた時って、本当に自分が負けない、絶対勝てると思ってやってたんですけど、ONEに来て、こんな弱いところがあるんだなぁとか、いろいろ自分で発見できて。それをこの最後の試合で、今までONEで感じた自分の弱さだったり…それこそ身体もどんどん壊れていくところもあったり、そういう自分の弱い部分をちゃんと認識した上で、それに合った自分の戦いだったり、身体作りっていうのを最後にバチッとハメれたっていうことかなと思います」

 続けて「弱い自分も克服できた?」と聞かれた。

 「そうですね、克服っていうか…弱点とかももちろん、そうなんですけど。今までできたことができなかったりとか…そういうことがいっぱいあって。だけど今までと同じようなことをしちゃってたので。それで壊れちゃってた部分もあったりしたので、そこを自分で認識してやり方を変えたりとか…難しいですけど…はい…上手く修正、最後だったからできたっていうのはあるんですけど。今日まで身体を全部使い切って壊れてもいいつもりで追い込みもやったし、そのギリギリを上手く…ちょっとすいません、言葉が難しいですけど、それができたのが良かったなと」

 スポーツ紙の記者からラストマッチで「ベストバウトを戦うことができた気持ち」を聞かれた。

 「自分の試合をまだ見てないので、まだ実感がないんですけど…実感がないですね。試合前、弱音を吐きたくなかったんで言わなかったんですけど、毎日また倒される、自分が失神してる夢とか。足の骨折れてる夢とか…毎日見てて、ホント怖かったんですよ。みんなの期待を裏切っちゃうなとか…だから生きて帰ってこれてよかったなみたいな…そんな感じです。今はまだ試合見てないんで、そんな感じです」

 試合後のリング上でマイクを使わずに地声でメッセージを送ったが、聞き取りずらかったため、ネットメディアの記者から「どんなことをおっしゃっていたんですか?」と聞かれた。

 「え〜っと…一言一句は思い出せないですけど。僕って格闘技センスが本当になかったんですよ小学校から格闘技を始めて。勝てなかったし、運動神経も普通なんですよ。だけど、こういう風に強くなれたし、結果も残せたので。夢を持つ人は絶対諦めてほしくないなって。みんな天才とかエリートって思っていると思うんですけど、全然ホントそうじゃなくて。本当に勝てなかったので。それを伝えたかったのと。あとは今、格闘技界にいろいろ団体の壁だったり、いろいろ問題があったりとかして、一回盛り下がりそうだなみたいになって。それがすごい僕的にはつらかったし、僕が引退することで魔裟斗さんが辞めた後みたいにK―1がなくなったりとか、こういうONEみたいな大きな舞台が日本からなくなっちゃうのは凄い悲しいことなので。そういう次のファイターが出てくるまで、ファンの人たちみんな一緒に格闘技界を盛り上げましょうっていう。いろいろな団体、K―1もRISEもKNOKC OUTも…みんな日本の団体一緒に格闘技界を盛り上げましょうって…感じですかね」

 さらに同じ記者から、試合中に笑顔を浮かべ、ロッタンへ「来い」とやったことを、覚えているかを聞かれ「はい、覚えてます」と答えた。これに記者が試合中に楽しい感覚を感じていたかをさらに問われ「はい、楽しかったですけど。なんか殴り合いたいなっていうか…そんな感じです」と明かし「勝ちたいのはもちろんあるんですけど、格闘家人生、小学校から始めて30年ぐらいやってきて、この5ラウンドで終わっちゃうんだと思ったら、勝ちたいよりロッタンのパンチをもっともらっておきたいなって…なんかそれと戦ってましたね」とほほえんだ。

 また、同じ記者から今回の一戦へ那須川天心インタビュー動画がアップされたが、この動画から感じるものを聞かれた。

 「ああいうインタビューで僕のことをああいうふうにちゃんと喋ってくれたことがなかったと思うので、応援してくれたのも嬉しかったし、勝って欲しいって言ってくれたのも。本当に闘った戦友として嬉しかったし。天心選手もこれからボクシングでずっと活躍していくと思うので。ボクシング、キックボクシング、ムエタイ関係なくみんなでこれから盛り上げたいなと思います」

 さらにネットメディアの記者からノーガードでロッタンにかなり打たれたシーンについて「前回はKOされた武尊が今回立っていられたのは何だったんでしょうか?」と問われた。

 「いろんな要因はあるし…戦い方もすごい研究したんで。前回…ロッタン選手ってブンブン振り回してるようですごい達人みたいな動きをするので。それを前回の試合ですごい感じて…それで勉強できたっていうのもあるし。前回は、言い訳はしたくないですけれど、実際戦えるような状態ではなかったと思うので。胸骨と肋骨が折れて。脳では頭をガードしなきゃと思うんですけど、お腹を守らなきゃなと…たぶん、自然と動いちゃったのもあったし。今日は、絶対ロッタン選手のパンチが強いとか効くっていうのも分かった上でもらったので耐えられたのもあるし、最後なんでみんなの期待を裏切れないし、死んでも倒れるかと思ってパンチをもらいました」

 同じ記者から「やり切りましたか?きょう改めて格闘技の楽しさを感じて、もう一度、みたいなものが盛り上がってるとはないですか?」と聞かれた。

 「やれるならやりたいですけど、本当に今日このリングに立てるかどうかも分からないぐらい、僕の中では身体持つのかなっていう不安の方が大きくて。今日で使い切ったかなっていう。そんな感じです」

 さらに「ベタな質問になるんですけど、武尊さんにとって格闘技、キックボクシングっていうのはどういうものでしたか?」と問われた。 

 「僕は格闘技と出会っていなかったら本当にろくでもない人生だったなっていうふうに思うし。34ですけれど、こんな最高な人生にしてくれたのは格闘技のおかげなので。格闘技に感謝しかないですね」

 最後にフリーライターから「殴り合いながらも、しっかりカーフ、ミドルを蹴れたりしましたけど、落ち着いてましたか?興奮してましたか?」と聞かれた。

 「頑張って興奮を抑えてましたね。それこそホントに丁寧にやろうっていうのもあるんですけど。僕、試合のイメージを作る時にどうしても我慢できなくて殴り合いに行っちゃうんですよ。何回イメージしても。試合直前までちゃんと丁寧に削って。自分が強かった時の戦い方を思い出して。ロッタンだから思い切り殴り合いたいけれど、丁寧に削ってから殴って…意識しましたね、頑張って。今日来てくれた人もそうですけど、応援してくれてた全ての人たちに勝ちを届けたかったので、このベルトを届けたかったので。自分と戦いました」

 同じ記者から明日からの生活を「想像できますか?」と聞かれ「ジムには行くと思います。言ってないですけど、いろいろ身体も壊れてるところもあるので、それを治しつつ…私生活に支障が出ない程度に格闘技をやろうかなと思ってます」とほほ笑んだ。

 会見が終わると会見場は拍手が起こり格闘技に人生をかけた男を送り出した。

 ◆武尊(たける) 本名・世川武尊(せがわ・たける)1991年7月29日、鳥取・米子市生まれ。34歳。小学生時代にテレビでK―1を見て空手を始める。2011年9月、プロデビュー。14年11月3日に新生K―1「旗揚げ戦」に参戦。15年4月にスーパーバンタム級王座、16年11月3日にフェザー級王座、18年3月にスーパー・フェザー級王座を奪取しK―1史上初の三階級制覇を達成。22年6月19日に東京ドームで那須川天心と対戦も判定で敗れる。その後、K―1と契約を解除し23年5月に「ONE」と契約した。妻は、タレントの川口葵。身長168センチ、体重61・1キロ。戦績51戦46勝(28KO)5敗。