「独断で参加を決められるわけがないのに…」 小泉防衛相にハシゴを外された「自衛隊の歌姫」の素顔
「陸自の歌姫」には、とんだトバッチリだったに違いない。都内ホテルで自民党大会が開催されたのは、4月12日のこと。陸上自衛隊中央音楽隊の鶫真衣(つぐみまい)3等陸曹(38)が制服姿でステージに上がり、国歌斉唱を披露した。すると、自衛隊法違反の疑いをかけられるハメになったのだ。
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参加させなかった可能性
自衛隊法第61条には、〈政治的行為の制限〉として、〈隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、(略)選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない〉とある。
〈自民党大会で陸上自衛隊員が国歌歌唱 防衛省関係者「軽率では」〉(朝日新聞)
〈自民「法抵触ない」、党大会で自衛官国歌斉唱 「政治的行為」批判も〉(毎日新聞)
などと報道各社は批判を展開した。それに対し、自民党は火消しに躍起となった。政治部記者が解説する。

「高市早苗首相は“会場に着くまで自衛隊員が出ることを知らなかった”“私人として参加し、国歌を歌ったので問題ない”などと主張しました。一方、小泉進次郎防衛相は“仮に(自分に)情報が上がっていれば別の判断もあり得た”といまさらながら鶫3曹を党大会に参加させなかった可能性を口にし出した。しかし、党大会直後には自身のXに“鶫さんをはじめ自衛隊の音楽隊を誇りに思います”と投稿(後に削除)。当初、何の問題意識も持ち合わせていなかったのは明らかです」
オファーが殺到
突如、渦中の人となった鶫3曹は石川県金沢市の出身。国立音楽大学を卒業後、洗足学園音楽大学大学院を修了し、2014年4月、陸自初の声楽要員として入隊した。
防衛省関係者によれば、
「大学院修了直前に、鶫さんの出演するコンサートに自衛隊関係者が赴き、陸自がボーカリストを募集していることを伝えました。祖父が警察官だったこともあって、両親も入隊を後押ししてくれたそうです」
入隊後3カ月間、朝霞駐屯地で射撃、ほふく前進などの基礎訓練を受けた後、中部方面音楽隊(兵庫県)に配属された。
「彼女が練習に最も力を入れたのは、『君が代』でした。15年4月、マツダスタジアムでの広島−巨人戦で君が代を独唱しました。観客席が静まり返り、歌い終わった途端、拍手が沸き起こった。鶫さんが加わった中部方面音楽隊には演奏オファーが殺到するようになりました」
18年6月、中部方面音楽隊はCDデビュー。鶫3曹の歌唱力がSNSなどでも話題になっていたからだ。22年に東京の中央音楽隊に移ってからも、能登半島地震の慰問公演などで活躍を続けた。
責任の押し付け
「鶫さんはおしとやかな人柄で、大和なでしこという表現がぴったりの女性です。今回、自民党大会への参加は運営元のイベント会社から直接、鶫さんが連絡を受けています。しかし、彼女が独断で参加を決められるわけではありません」
実際、鶫3曹は中央音楽隊を通じ、陸自の最高機関である陸上幕僚監部などに報告を上げている。
「陸自上層部で、自衛隊法61条に抵触しないかどうかの検討が行われました。その結果、自民党大会への参加が承認されたわけです。その判断には賛否両論でしょうが、高市首相や小泉防衛相は“私人だから”で問題を片付けようとしている。それではまるで、鶫さん個人の行為だとして、すべての責任を押し付けているようなものではないでしょうか」
お気の毒というほかあるまい。
「週刊新潮」2026年4月30日号 掲載
