ブライス・ハーパー(ロイター)

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 二刀流といえば、当然ながらドジャースの大谷翔平投手(31)が象徴だ。だが、その道を追うブルージェイズの若手が憧れとして口にしたのは、大谷ではなくフィリーズの看板打者ブライス・ハーパー内野手(33)だった。米老舗誌「フォーブス」が焦点を当てたのは、ブルージェイズ傘下1Aダニーデンで外野手兼投手として育成されるオースティン・スミス(23)の告白と、その言葉が逆に浮かび上がらせたフィリーズ側の不穏な空気だ。

 スミスは2025年ドラフト10巡目指名の有望株で、球団の許可を得てプロでも本格的な二刀流に挑戦中。もっとも、現時点の数字は苦しい。今季37打席で打率1割6分2厘、出塁率2割7分3厘、長打率2割1分6厘。投げても1回3分の1で2失点と、発展途上ぶりがにじむ。それでも「自分が最高だと思うメンタリティー」が好きだとして、手本に挙げたのは大谷ではなくハーパーだった。

 ただ、ハーパーも順風ではない。フィリーズは21日(日本時間22日)のカブス戦にも4―7で敗れ、泥沼の7連敗。戦績は8勝15敗でナ・リーグ東地区4位まで沈み、チームの空気は明らかに重い。ハーパー自身はこの試合で5号2ランを放ち、今季もここまで打率2割7分4厘、5本塁打、13打点、OPS.901と数字だけ見れば大崩れではない。だが、昨季終了後にはデーブ・ドンブロウスキ球団本部長から「まだエリートか」という趣旨の問いまで投げかけられており、スターの看板にはなお圧がかかっている。

 一方のブルージェイズは同21日(同22日)のエンゼルス戦に4―2で勝って3連勝。戦績こそ10勝13敗でア・リーグ東地区4位だが、岡本和真内野手(29)も在籍し、新戦力を抱えながら巻き返しを探る段階にある。岡本も打率2割2厘、3本塁打、8打点、OPS.613と苦しみながらも適応の途上だ。だからこそ、同じヒエラルキーの中でスミスが大谷ではなくハーパーに理想像を見いだした事実は興味深い。

 若き二刀流の憧れはフィリーズの象徴がまだ特別な存在の証しであると同時に、そのハーパーとチームが苦境を脱し切れていない現実まで照らしてしまったようだ。