NASAが惑星探査機「ボイジャー1号」の科学装置をまた1つ停止 大がかりな延命対策も準備中
NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年4月17日付で、惑星探査機「ボイジャー1号(Voyager 1)」に搭載されている科学装置のひとつ「LECP(Low-Energy Charged Particles=低エネルギー荷電粒子観測装置)」を停止したと発表しました。2026年9月で打ち上げから49年、電力不足に直面しているボイジャーのミッションを可能な限り継続するための努力が続けられています。

太陽要らずの電源を搭載も発電量は年々低下
2026年4月20日時点でボイジャー1号は地球から約254億km(約170天文単位)離れたところを飛行しており、通信には片道だけでも約23時間30分を要します。これほど遠く離れた場所では、太陽電池は使えません。
それなのにボイジャーが半世紀近くも稼働し続けているのは、動力源としてプルトニウム238の崩壊熱を利用する放射性同位体熱電気転換器(RTG: Radioisotope Thermoelectric Generator、原子力電池の一種)を搭載しているからです。しかし、ボイジャーのRTGの発電量は時間が経つとともに低下しており、NASAによれば毎年約4ワットずつ減少しています。
JPL(NASAジェット推進研究所)のボイジャー運用チームは、太陽圏や星間空間の観測をなるべく長期間行うために、もともと10基搭載されている科学装置のうち重要だと判断したもの以外を停止させるとともに、飛行に不可欠ではないヒーターなどの装置をオフにしたり電圧の監視方法を変更したりすることで、科学機器に供給する電力を確保し続けています。
2025年3月の時点で稼働していた科学装置は、ボイジャー1号がLECP・MAG(Magnetometer=磁力計)・PWS(Plasma Wave Subsystem=プラズマ波サブシステム)の3基。同型機の「ボイジャー2号(Voyager 2)」はCRS(Cosmic Ray Subsystem=宇宙線サブシステム)・MAG・PWSの3基となっていました。
予期せぬ電力低下を受け停止を決断
NASAによると、2026年2月27日にボイジャー1号の定期的な姿勢制御(ロール操作)を行ったところ、予期せぬ電力低下が発生しました。
もしもさらなる電力低下が起これば保護システムが作動して、各機器が自動停止する可能性があります。復旧には時間がかかりますし、それ自体がリスクを伴う作業です。
そこで運用チームは、電力を確保するために先手を打つことを決め、LECPの停止に踏み切りました。ボイジャー1号のLECPを2026年に停止することは2025年3月の時点ですでに決まっていましたが、今回の電力低下が停止のタイミングを決定する形となりました。
新たなミッション延命対策「ビッグバン」
綱渡りのような運用が続くボイジャーですが、運用チームは今後の状況改善を見据えてLECPを完全には停止させず、センサーを回転させるためのモーター(消費電力0.5ワット)は意図的にオンのまま残してあるといいます。
実は、運用チームはボイジャーの運用期間を延長するための新たな省電力化計画を準備しています。「ビッグバン(the Big Bang)」と呼ばれるこの対策は、複数の機器をオフにして消費電力がより低い機器に切り替えることで、科学装置の稼働や保温に回せる電力を確保しようというもの。この“省エネ対策”がうまくいけば、今回停止したLECPを再稼働できる可能性さえあるといいます。
ビッグバンはまず電力に比較的余裕があるボイジャー2号で2026年5月から6月にかけてテストされる予定で、良い結果が得られれば7月以降にボイジャー1号でも試みられるということです。星間空間の貴重な観測を行い続けるボイジャーの旅は、まだしばらく続きそうです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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