こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した不規則銀河「NGC 4485」。りょうけん座の方向、地球から約3000万光年先にあります。


【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が観測した不規則銀河「NGC 4485」(Credit: NASA and ESA; Acknowledgment: T. Roberts (Durham University, UK), D. Calzetti (University of Massachusetts) and the LEGUS Team, R. Tully (University of Hawaii), and R. Chandar (University of Toledo))】

不規則銀河は、渦巻銀河で見られるような星々が集まった中心部や渦巻腕(渦状腕)、回転対称の円盤部といった明確な構造を持たない銀河とされています。


画像のNGC 4485は、左右で異なる特徴的な姿を見せています。比較的穏やかな左側には渦巻構造の痕跡が残されているように見えますが、混沌とした右側では星形成活動が活発で、若く高温の青い星々や、星形成領域の存在を示す電離水素領域(HII領域)からの赤い輝きが入り乱れています。


銀河どうしの重力を介した相互作用

どうして同じ銀河の左側と右側で、これほどの違いが生じているのでしょうか。


実はNGC 4485は、下方向の視野外に存在する別の銀河「NGC 4490」との間で、過去に重力を介した相互作用があったと考えられています。天文学者のHalton Arpが1966年にまとめた特異銀河(特異な形態を持つ銀河)のカタログ「Atlas of Peculiar Galaxies」では、NGC 4485とNGC 4490は「Arp 269」として収録されています。


NASA(アメリカ航空宇宙局)やESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、現在観測されている2つの銀河は最接近を終えて遠ざかりつつある段階ですが、あたかも島と島をつなぐ橋のように、差し渡し約2万5000光年におよぶガスなどの流れ(ストリーム)でつながっています。


接近時の重力相互作用によって、もともとあったNGC 4485の秩序立った構造は破壊されたものの、ガスや塵(ダスト)の密度の高い領域が生じたことで、星形成活動が促進されたと考えられています。銀河の接近や衝突は破壊的なだけでなく、新たな星々の誕生にもつながることから、ESAは“創造的破壊”と表現しています。


次世代へ続く星々のサイクル

恒星は誕生した時の質量が軽いほど低温で寿命は長く、重いほど高温で寿命は短くなります。NGC 4485の片側を彩る青い大質量星は短命であり、恒星としての生涯を劇的な超新星爆発で終えることになります。


超新星爆発もまた破壊的な現象ですが、恒星内部の核融合反応や、爆発時の極限的な環境で生成された様々な元素を宇宙空間に撒き散らし、次世代の恒星や惑星を形成するための材料を供給するという、創造的な役割も担っているのです。


冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の観測装置「ACS(掃天観測用高性能カメラ)」と「WFC3(広視野カメラ3)」で取得したデータを使って作成されたもので、NASAとESA/Hubbleから2019年5月16日付で公開されました。


本記事は2019年5月19日公開の記事を再構成したものです。


関連画像・映像

【▲ ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡が観測した銀河「NGC 4485」(右)と「NGC 4490」(左)(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, A. Adamo (Stockholm University), G. Bortolini, and the FEAST JWST team)】

 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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