オイシックスのCBOに就任した桑田氏【写真:羽鳥慶太】

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オイシックスの桑田真澄CBO、小学校時代に思っていた「何で?」

 今季、1リーグ3地区制に再編されたプロ野球の2軍「ファーム・リーグ」は、開幕から1か月が過ぎた。東地区を戦う“2軍球団”のオイシックスに加わったのが、巨人でNPB通算173勝を挙げ、昨季は2軍監督を務めた桑田真澄氏。チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)として、若いチームに良い文化を作ろうと奮闘している。桑田氏が指導で重視するのが、選手の気付きを促し、主体的な行動を促すこと。これは自身が幼少期に“昭和の指導”に対して抱いた違和感がきっかけだという。

 桑田氏は巨人を2006年に退団した後、39歳で大リーグに挑戦。パイレーツで投げて現役引退した後は早大大学院で学んだ。指導者としては選手本人が足りないものに気付き、理解、納得した上で取り組むことを求めてきた。

 ただ自身の成長期は“昭和の野球”ど真ん中の時代。命令や押しつけから始まる指導では選手は伸びないと気付いたのは、いったいどこだったのだろうか。桑田氏に問うと「小学生の頃から問題意識を持っていましたよ」と驚きの答えだ。「昭和的な指導が大嫌いで。みんな僕が『優しい』とか『甘い』とか思っているから、本当のことを知らないんですよね」と笑う。

「厳しい中で育ってはきましたけど、それが嫌だったんですよ。『何でそうするんですか?』と聞いても、誰も答えてくれない。いいからやれという時代でしたからね。『なぜならば…』と説明してくれる人がいなかったんです。だから僕が指導者になったときには、必ず『なぜならば』を説明できる指導者になろうと、こう思っていたんです」

 オイシックスではユニホームこそ着ないものの、選手育成面での貢献も期待されている。最終的に選手に期待するのは、自身の考え方の変化に伴って行動まで変わり、やがて定着していく「行動変容」だ。

「行動変容は『やれ』と言われてやっているうちは身についていないんです。理解して、納得して『よしやろう』と自分で思わない限り、起こらないと思っています。難しい言葉で言えば“内発的動機”が必要なんですね。選手が『俺にはこれが必要なんだ、だからこうするんだ』とならなければ、行動って変わらないんですよ」

 進歩のための行動を、放っておいてもできる集団になるには時間が必要だと、桑田氏も認める。オイシックスではまだスタート地点だ。「粘り強く、根気強く同じことを選手には伝えています。どれだけ理解できているかを確認しながら。まだできていないようだったら数字を見せたり、少し感覚の話をしたりして。『俺にはこれが必要なんだ』と思ってくれるまで、そこは粘り強く話をしていきます」。

選手への声かけに仕掛け…質問に「もっていく」のはなぜ?

 自分に必要なものにいつ気付けるかで、選手としての未来は全く違ったものになる。「学校でもそうじゃないですか。同じ授業を40人が受けても、優秀な人とそうじゃない人が出る。『これが大事なのか』とすぐにわかる人と『もうわかんないからいいや』と諦める人の差はどんどん開いていく。同じ話をしてもそうなってしまうので、できるだけ選手のタイプに合わせてやるようにしています」。そこで大事にしているのが、話をするタイミングだ。

「会った時に、いつも同じことを言われても嫌じゃないですか。だから『ここは言わないでおこう』とかタイミングを図っています。本当に伝えたい人とは別の人にまず言って、『ちょっと質問してもいいですか』と動くように持っていくこともありますね」

 2月のキャンプでは選手をはじめ、チーム全体を見るところからスタートした。NPB経験豊富なベテランも、春まで学生だった選手も、ちょっとした気づきで生まれ変わる可能性があると信じるからだ。「そこで気づくか気づかないかは、本人次第なんですけど……」。あらゆる方法で導くのも、指導者の役割だという。

「できるだけ、本人に一歩踏み込ませたいんですよ。聞こうという一歩を踏み出してほしいんです。『ちょっと質問あるんですけど』と言うのはもう、意志ですから。そのために話しかけることは多いですね。『おはよう、元気か』とか『どうだ? 体張ってないか?』とか言いながら、実は『聞いて来ないかな……』と思っている。今日も来なかったなと思っても、僕は根気強いですよ」

 昨年まで指揮を執った巨人と、NPBの2軍に参加して3年目のオイシックス。人員や設備といったハード面での違いは大きいが、選手の資質については「そんなに大きな差はないと思うんです」という。

「守備だってある程度うまいですし、球威があるピッチャーもいます。あとはデータに出ないところですかね。球速を追うばかりでなく、タイミングを外すとか、ボールの中での駆け引きとか。そういう部分は伝えていきたいですね。知恵としてね」

 17日には、U-12日本代表の監督就任も発表された。自分に必要なものに気づき、地道に磨いた選手はぐんぐん伸びていく。「育てるには、時間と情熱と愛情が必要だと思いますので」。桑田氏はより多くの選手を変化に導こうと、粘り強く仕掛け、伝え続ける。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)