約3か月間の離脱を強いられた久保。(C)Getty Images

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「Bueltan naiz(戻ってきた)」

 バスク語で綴られたこの短いメッセージが、タケ・クボ(久保建英)の公式Instagramに投稿された。負傷による離脱期間は、クラブが認めていた通り2か月を超え、実質的には3か月近くに及んだ。この長すぎる空白は、それまでタケのプレーに大きく依存していたラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)にとって、あまりに大きな代償となった。

 1月18日、首位バルセロナを相手に幸運な勝利(2−1)を挙げてから、チームの状況は一変した。タケ不在の2か月半の間に、ラ・レアルは来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を争う位置まで這い上がり、今週末にはコパ・デル・レイの決勝という大舞台に挑む。

 ラ・リーガ第31節のアラベス戦。53分にその時は訪れた。降りしきる雨と強風の中、タケがサイドラインに姿を現すと、悪天候で静まっていたアノエタは歓喜の爆発に包まれた。83日という永遠のような時間を経て、ワールドクラスの才能がようやく帰ってきたのだ。

 本来であれば、セビージャで行われる決勝に万全の状態で臨むはずだった。しかし、そのリハビリテーションは、リスクを最小限に抑えつつ最短距離を走るという、困難な時間との戦いとなった。タケはラ・レアルでの活動に専念するため、3月シリーズにおいて日本代表に合流する選択肢を辞退した。

 マタラッツォ監督は、環境を変えることが気分転換になると考え、スコットランド戦とイングランド戦が行われる英国に行き、日本代表のメディカルチェックを受けることを許可していたが、タケはそれを断り、スビエタ(練習場)で決勝に向けたコンディション作りに没頭する道を選んだ。

 前節のレバンテ戦で決勝での先発出場の目処を立てる計画もあったが、調整は予想以上に難航した。マタラッツォ監督が慎重を期して復帰を一週間遅らせた結果、今回のアラベス戦もベンチスタートとなり、18日のアトレティコとの決勝でスタメンに名を連ねる可能性は極めて低くなった。

 もし万全であれば、ゲデス、オジャルサバルと共に「恐怖のトリデンテ」を形成していたはずだが、現時点ではスペイン代表デビューを飾ったばかりのアンデル・バレンネチェアが先発の座を射止める公算が高い。
 
 それでも、タケは復帰戦で自らの価値を証明した。投入4分後に外側を追い越すアランブルへ正確なパスを供給。その折り返しからゲデスが狙うも、シュートは枠を外れた。60分、FKのクリアボールを拾ったゲデスがファーサイドへ絶妙なクロスを上げる。これをタケが知性と繊細さを兼ね備えたヘディングで折り返し、オスカールソンの頭へと完璧なラストパスを届けた。この一撃がネットを揺らし、スコアは3−2。タケのお膳立てにより、逆転劇は完成したかに見えた。

 さらに80分には、この日最高の個人技を披露する。カルロス・ソレールからの展開を右サイドで受けると、対峙したレバシュを鮮やかな切り返しで翻弄。利き足とは逆の右足で鋭いクロスを供給した。ソレールはこれに必死に飛び込んだものの、シュートとしてミートさせるには、文字通り紙一重のところで間に合わなかった。ボールはわずかに頭を掠め、そのまま後ろへと流れていった。

 しかし、悲劇は97分に訪れる。まだコンディションが万全ではなく、エンジンに油を差している途上にあることは明白だった。疲労の色が見えるソレールから、判断の難しい厄介なパスを足元に預けられたタケは、ボールを収めきれずにロスト。これが致命的な同点弾へと繋がり、試合は痛恨の3−3で幕を閉じた。

 練習では数週間前から良好な動きを見せているというが、やはり決勝での先発出場はないだろう。だが、マタラッツォ監督の手元には、ベンチから戦況をひっくり返す「破壊的な切り札」がある。

 自身初の決勝という舞台、少なくとも30分は出番が巡ってくるはずだ。それは、自軍を優位に立たせ、勝利を決定づけ、あるいは窮地からチームを救い出すには十分すぎる時間である。

 主役の準備は整った。あとはその時を待つだけだ。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

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