アフリカ全土で燃料価格は15%から40%の急騰を記録している/Francis Kokoroko/Reuters

ナイジェリア・アブジャ(CNN)マラウイの北部で、ステニ・ウィリアムズ・ンサンバさんは自身の小規模農場に使う肥料を購入するのに苦慮している。農場ではトウモロコシ、落花生、タバコを育てている。イランでの戦争により生活費は急騰。海運の混乱が11月の栽培シーズンまで続けば、「壊滅的な低収量」は避けられないと警戒感を募らせる。

「多くの物価が上昇し、生活は耐え難いものになるだろう」。ンサンバさんはCNNの取材にそう語った。

ンサンバさんの苦境はアフリカ全土に共通のものだ。燃料価格の高騰が経済に深刻な打撃を与え、貿易ルートの遮断が重要な作付けシーズンに肥料不足を引き起こす。

米国とイランの間で発表された2週間の停戦は希望をもたらしているが、たとえ停戦が維持されたとしても、事態がすぐに正常化すると期待する者はほとんどいない。ナイジェリアにあるアフリカ最大の石油精製所のオーナー、アリコ・ダンゴテ氏は先月、CNNに対し、石油価格が安定するまでには数カ月かかる可能性があると語った。

イランでの戦争は世界のあらゆる地域に影響を及ぼしたが、アフリカ諸国は特に脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれている。燃料や食料、肥料の多くを輸入に依存しているためだ。

アフリカ連合(AU)の元ソマリア・サヘル地域特使、サイモン・ムロンゴ氏はCNNに対し、資源価格の高騰に直面するアフリカ諸国の苦境を和らげるには、この一時的な停戦は手遅れだと語る。同氏によれば、アフリカ大陸の一部の石油輸入国は「通貨への圧力、補助金負担の増大、そしてガソリン価格の高騰」に直面しているという。

アフリカ全土で燃料価格は最大15%から40%急騰し、すでに苦境にある経済にさらなる負担を強いている。マラウイではガソリン価格が34%上昇。ジェット燃料価格は81%跳ね上がった。

またしてもアフリカ諸国は、自分たちの関与が及ばない遠く離れた地域の戦争の犠牲者となっている。

「新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)やロシア・ウクライナ戦争といった過去のショックは、アフリカ経済がいまだに世界的な変動の影響を強く受けやすい状態にあることを示している」と、政治学者で国際安全保障アナリストのフォラ・アイナ氏は述べた。

遠くの戦争が地元の重荷に

他地域での紛争がもたらす経済的影響は、これまでもアフリカ大陸一帯を苦境に陥れてきた。現状で同地域は、ロシアによるウクライナでの継続的な戦争が引き起こした物価の衝撃からようやく回復しつつあるところだった。

2022年にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始する以前、この2カ国は多くのアフリカ諸国にとって重要な農産物の供給源だった。

シンクタンクのODIグローバルが24年に実施した調査によると、アフリカ大陸の主要経済国であるケニアとエジプトは、小麦輸入の相当部分をロシアとウクライナに依存。その割合はそれぞれ最大85%、67%に達していた。

今回の影響の多くは、ホルムズ海峡の実質的な封鎖に起因している。世界の注目は主に石油に集まっているが、この要衝は肥料の輸送においても極めて重要なルートであり、収穫や人々の日々の食事を危険にさらしている。停戦が成立しているにもかかわらず、海峡を通過できる船舶はごくわずかだ。

アフリカが世界のサプライチェーン(供給網)に依存していることを示す数字は、極めて厳しい実態を浮き彫りにする。

国連によると、アフリカの年間食料輸入額は700億ドル(約11兆円)から1000億ドルに上る。また、アフリカ大陸は毎年600万トン以上の肥料を輸入している。さらに、石油精製製品への支出は年間1200億ドルを上回る。

国連貿易開発会議(UNCTAD)は昨年発表した報告書で、「アフリカ経済は世界的なショックの際に、世界の他の地域よりも大きな不確実性に直面した」と指摘した。その原因として輸入への依存度の高さだけでなく、高水準の債務と脆弱(ぜいじゃく)なインフラにも言及している。

「援助後の時代」最初の大きな危機

イラン戦争の波及効果は、石油危機にとどまらない。

援助機関は、この紛争がアフリカ全土の人道支援活動も阻害すると懸念。すでに外国からの援助の急激な減少に苦しむアフリカ大陸の食料不安が一段と悪化する可能性について警鐘を鳴らしている。

紛争が始まる前から、世界食糧計画(WFP)は西アフリカと中央アフリカで5500万人が飢餓の危機的状況に陥ると予測し、「悲惨な」一年になると警告していた。

人道支援団体マーシー・コープスのアフリカ担当副代表、メラク・イルガ氏はCNNに対し、スーダン、ソマリア、エチオピアでは「すでに何百万人もの人々が干ばつや飢餓に見舞われ、住む家を失い、紛争に苦しんでいる」と語った。同氏はさらに、「援助後の時代における最初の大きな危機が目前に迫っているのかもしれない。そこではニーズが膨大であるにもかかわらず、支援が全く届かないという状況に陥る」と警告した。

国際救済委員会(IRC)は、輸送の遅延により、重要な援助物資の配送に深刻な支障が生じていると報告している。それによれば、内戦で荒廃したスーダンで2万人を支援するために用意された医薬品はドバイで足止めされており、ソマリアについても重度の栄養失調の子どもたち1000人以上の命を救う可能性のある治療食600箱以上がインドで滞留している。

WFPによると、スーダンとソマリアの両国はホルムズ海峡を経由して輸送される輸入肥料に依存しており、この危機が長引けば深刻な飢餓のリスクが高まるという。

中東情勢の緊迫化は、多くのアフリカ諸国における主要な作付け時期である3月から5月と重なる。この時期、肥料需要はピークを迎える。

「これは農業生産に影響を与え、危機的状況や緊急事態レベルの食糧不安のリスクを増大させるだろう。とりわけ低所得世帯や輸入依存型経済が打撃を受ける」と、国連開発計画(UNDP)が発表した政策概要書は述べている。

WFPは、今回の紛争が援助サービスへの資金不足と重なるため、世界中で新たに4500万人が深刻な飢餓の危機に見舞われる恐れがあると推定している。

長期的な見通し

紛争によって引き起こされた今回の危機に対し、アフリカ諸国政府の対応は様々だ。

タンザニアのサミア・スルフ・ハッサン大統領は、自身の車列を縮小。原油価格の高騰を受け、燃料節約のため同行する高官らに相乗りバスでの移動を指示した。

マダガスカルは、エネルギー供給の継続的な混乱を受けて、国家規模でのエネルギーの非常事態を宣言。電力のほぼすべてを化石燃料に頼る南スーダンでは、石油不足への対応として首都で電力配給制を実施している。輸出用の石油を生産する同国だが、国内の精製能力が乏しいため、使用する石油のほとんどは輸入への依存を余儀なくされている。

エジプトはエネルギー消費削減のため、レストラン、カフェ、商店に対し午後9時までの閉店を義務付ける全国的な政策を実施した。

これらのアフリカ諸国にとって現状できるのは、米イラン間の停戦がいくらかの安堵(あんど)をもたらすのを期待することだけだ。

それでも元AU特使のムロンゴ氏は、アフリカに停戦を喜んでいる余裕はないと指摘する。「停戦で状況が悪化するリスクは軽減するが、構造的な脆弱性はそのまま残る。輸入国は依然としてインフレに直面し、輸出国は一時的な恩恵しか受けない。この停戦が与えてくれるのはあくまでも一息つくだけの時間であって、継続的な安定ではない。油断すると痛い目に遭う」(同氏)