「ALS(筋萎縮性側索硬化症)のリハビリ」はどんなことをするの?治療法についても解説!

ALS(筋萎縮性側索硬化症のリハビリや治療法とは?Medical DOC監修医が解説します。

※この記事はメディカルドックにて『「ALS(筋萎縮性側索硬化症)の寿命」はご存知ですか?寝たきりになるまでの期間も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
神宮 隆臣(医師)

熊本大学医学部卒業。熊本赤十字病院脳神経内科医員、熊本大学病院脳神経内科特任助教などを歴任後、2023年より済生会熊本病院脳神経内科医長。脳卒中診療を中心とした神経救急疾患をメインに診療。脳神経内科疾患の正しい理解を広げるべく活動中。診療科目は脳神経内科、整形外科、一般内科。日本内科学会認定内科医、日本神経学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医、臨床研修指導医の資格を有す

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」とは?

ALS(筋萎縮側索硬化症)は、運動をつかさどる上位・下位運動ニューロンの両者が変性してしまうことで、徐々に筋肉が萎縮してしまう病気です。上位運動ニューロンとは、大脳皮質の運動野から始まり脳幹を通り、運動の指令を下位運動ニューロンに情報を伝える神経細胞です。この上位運動ニューロンが脊髄を通る場所が側索です。下位運動ニューロンは、上位運動ニューロンからの指令を受け取り、筋肉に信号を送って実際に身体を動かす役割を担っています。
ALSの症状には、運動情報を手足が動かしづらくなる、ろれつが回らなくなる、あるいは飲み込みづらくなるといったものがあります。
今回の記事では、ALSの症状や予後、治療、家族の方が知っておくべきことなどについて解説します。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)のリハビリ

ALSのリハビリについて、解説していきます。

運動療法

手足・体幹のリハビリとして、運動療法があります。心身機能や日常生活活動、社会参加維持・向上を目的として行われます。特に、運動療法の中でも関節可動域(range of motion:ROM)エクササイズは、全病期を通じて有効とされています。可動域を保ち、拘縮を防ぐために理学療法士などと一緒に行われます。手足や肩、首周りのストレッチなどがあります。
また、筋力増強運動は、軽度から中等度の筋力低下を示す患者さんたちの転倒防止やQOL維持などに効果がある可能性が示唆されたという報告もあります。しかし、過度な運動負荷は過用性筋力低下(overwork weakness)を招く可能性があるので、負荷量には注意が必要です。筋肉痛が来ないような強度に設定することが肝要です。
最近、ロボット・リハビリテーション医療がALS症例に導入されています。その一つに装着型サイボーグHybrid Assistive Limb®(HAL®)があります。HAL®は、歩行機能の維持改善に効果がある可能性があるとされています。

呼吸リハビリテーション

ALSの呼吸機能障害の原因の一つに、呼吸筋の筋力低下があります。そのため、呼吸機能障害に対しては、吸気筋トレーニングなどが行われます。運動療法に比べて、呼吸リハビリテーションはイメージがしづらいかもしれません。具体的には、口をすぼめて呼吸をしたり、おなかの筋肉をつかった腹式呼吸をしたりして楽な呼吸法を獲得したりします。家族の方はもちろん、訪問リハビリテーションや訪問看護によって、排痰などを含めた呼吸リハビリテーションを受けることが可能です 。

摂食嚥下訓練

嚥下障害が早期から目立つ球麻痺型だけでなく、ほぼ全例でALSは進行すると嚥下機能も障害されてきます。そのため、食べ物や水分を飲み込むための嚥下訓練は非常に重要になってきます。主に言語聴覚士や摂食嚥下リハビリテーション認定看護師が行います。また、口腔内の清潔を保つために歯科衛生士や歯科医師と協力することもあります。
摂食嚥下訓練には、食物を使う直接訓練と、使わない間接訓練があります。
直接訓練では、飲み込みやすい姿勢や体位を調整し、学んでいきます。また、食事の形態や摂り方も指導されます。だんだん摂食嚥下機能が改善してきた場合は、摂食嚥下訓練のスタッフとともに、次の段階の食事を食べる訓練も行います。
間接訓練では、食べ物を使わずに摂食嚥下機能の改善を目指します。主に食事がとれなくなったかたに行いますが、残された摂食嚥下機能を維持し、少しでも改善させることは重要です。嚥下体操や頭部挙上訓練、ストローでコップの水を泡立てるブローイング訓練、アイスマッサージなどがあります。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療法

ALSに対する根本治療はまだ開発されていません。現時点で、日本で保険適用になっている薬物療法と、さまざまな症状に対する非薬物療法について紹介します。

リルゾール

リルゾールは、シナプスからのグルタミン酸放出阻害作用などによって神経を保護する働きがあると考えられている薬です。日本では、ALSの治療に対して保険適用が認められており、1日100mgを経口投与します。無力感や吐き気、めまいなどの副作用に注意が必要です。また、重篤な肝機能障害がある場合には禁忌とされています。

エダラボン

エダラボンは抗酸化作用を持つ薬で、以前から脳梗塞急性期に用いられていました。日本では、ALSの運動機能障害の進行抑制に対して2015年に保険適用の認可がおりました。
1日60mgを初回14日間、1回1時間かけて点滴静注し、その後14日間休薬します。そして、10日間投与と14日の休薬期という4週間のサイクルを続けます。重篤な腎機能障害がある場合には禁忌です。点滴の場合でも入院は必ずしも必要ではありません。
当初は点滴薬のみでしたが、2023年から内服でも投与できるラジカット内用懸濁液が発売されました。点滴の針を入れる必要がなくなり、治療がしやすくなりました。

対症療法

症状の進行そのものや、病気の進行の受け入れ、生活の変化などに伴って、不安やうつ状態になってしまうことがあります。これらに対しては、家族や主治医のみならず、臨床心理士などのさまざまな職種が連携し、心理ケアやサポートを行っていきます。また、必要であれば不安に対しては抗不安薬、うつに対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬が用いられます。筋力低下による疼痛などには湿布薬などの貼付剤や鎮痛剤などが処方されることもあります。
また、前述したようなリハビリテーションも非常に重要となります。

「ALSの寿命」についてよくある質問

ここまでALSの寿命などを紹介しました。ここでは「ALSの寿命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ALSを発症してから寝たきりになってしまうまで、どれくらいなのでしょうか?

神宮 隆臣 医師

ALSの進行のスピードは、患者さんごとに異なるため一概には言えません。しかし、一般的には症状の進行に伴い、次第に手足や体幹、呼吸器筋なども障害を受け、2~3年で寝たきりとなることが多いと考えられます。

編集部まとめ

今回の記事では、ALSの寿命や治療法などについて解説しました。
ALSは現時点では根本的な治療法はなく、薬物療法などによって症状の進行を抑えていくことになります。そして、多くの場合、在宅での療養が選択されます。今回の記事を参考にして、さまざまな社会的支援も得ながら生活を続けていくことが大切です。

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連する病気

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経内科の病気

筋ジストロフィー

重症筋無力症(MG)

脳卒中

多発性硬化症(MS)

球脊髄性筋萎縮症(SBMA)

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)

多巣性運動ニューロパチー(MMN)

封入体筋炎

呼吸器内科の病気

誤嚥性肺炎

循環器内科の病気

心不全

整形外科の病気

頸椎症性脊髄症

ALSに似た症状を呈する可能性がある病気や、関連する病気を挙げました。気になる症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連する症状

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

筋肉が痩せる

筋肉がぴくつく

話しにくい

息切れしやすい

飲み込みづらい

ALSは、発症しても早期には特徴的な症状が現れていない場合もあります。何かいつもと違う症状を感じた場合は、医療機関に一度相談しましょう。

参考文献

筋萎縮性側索硬化症(ALS)(難病情報センター)

筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023(日本神経学会)

筋萎縮性側索硬化症(ALS)(厚生労働省)