【岡田 五知信】デビュー当初”すぐに消える”とバカにされた「嵐」…それでも貫いた《SMAPと正反対の生き様》なぜ視聴者の心をつかんだのか

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5月31日、東京ドームのステージに5人の男がマイクを置くとき――それは日本のエンタメ史に、一つのピリオドが打たれることを意味する。アイドルグループ「」は、それほど突出した存在だった。

活動休止を経て、事実上の解散を選んだ彼らがどれほど特異な存在だったのか、どれほど経済を動かしたのか。「現場目線」で徹底分析する。

国民的アイドルにも“冬の時代”があった

3月13日からスタートしたラストツアーの盛り上がりを見れば、「」がどれほど突出した存在だったか一目瞭然だろう。最初の開催地は札幌ドームだったが、札幌市中のホテルは1年前から予約が埋まり、宿泊費は数倍に高騰。JR北海道や航空各社が異例の臨時便を大量に出す事態となった。

ファンたちはライブに参加するだけではない。北海道の観光はもちろんのこと、少しでも綺麗な身なりで鑑賞しようと、現地のヘアサロンやネイルサロンに駆け込む女性ファンも多いという。ツアーが道内にもたらす経済効果は200億〜300億円規模とも報じられている。単なるイベントを超えて、社会現象を巻き起こしたと言ってもいい。

なぜは、これほどまでに巨大な存在となったのか。それには確固たる理由がある。日本テレビの編成担当として、20年近くと現場で関わり続けた知見をもとに、彼らについて分析していきたい。

'99年9月、大野智(当時18歳)、櫻井翔(当時17歳)、相葉雅紀(当時16歳)、二宮和也(当時16歳)、松本潤(当時16歳)の5人は、ハワイ沖のクルーズ船上で記者会見を行い、華々しいデビューを飾った。同年11月には『A・RA・SHI』でCDを初リリース。発売イベントには代々木競技場に約8万人が詰めかけた。

だが、その数年後には「冬の時代」が訪れる。デビュー曲は約97万枚という大ヒットを飛ばしたが、'04年のシングル『瞳の中のGalaxy/Hero』の頃には売り上げが20万枚前後にまで減少していた。

当時は圧倒的なカリスマ性を誇る「SMAP」やワイルドで男臭い「TOKIO」、学校のヒーロー的な存在だった「V6」など、先輩グループが確固たるキャラクター像を築いて芸能界に君臨していたことも要因だろう。今では信じられないが、は「次に消えるグループ」と囁かれるほど厳しい状況だった。

そんな彼らが爆発的人気を得るようになったきっかけこそが、「テレビ」である。

「かっこ悪さ」もあえて前面に出していく

当時のを知る関係者はこう語る。

「停滞期のタイミングでは『誰もが憧れる完璧なスター』を目指すことをやめたように感じられます。逆に、ファンと同じ目線で世界に向き合っていく『等身大の青年』として振る舞うようになりました。

この革新的な路線変更には、育ての親として知られる藤島ジュリー景子氏の戦略があったと言われています。タレントの個性を伸ばすジャニー喜多川氏と違い、ジュリー氏は万人ウケするようなグループを目指していた。そのプロデュース戦略のために、テレビ局にも積極的に売り込みを行っていました」

要は、これまでアイドルに求められていた「かっこいい姿」を無理に見せないようになったのだ。深夜のバラエティ番組でストッキングを被ったり、コスプレをして体当たりロケをしたりと、自らの「かっこ悪さ」を出していく。これにより、アイドルに興味がない層も取り込んでいった。

バラエティ番組を主戦場にしていたアイドルといえばSMAPが代表的だが、とは決定的に異なっている。

SMAPは「個の集合体」だった。木村拓哉のカリスマ性、中居正広のMC力、草磲剛の表現力、稲垣吾郎の知性、香取慎吾のクリエイティビティ。5人それぞれが突出した個性を放ちながら、ひとつのグループを構成していた。まさに「スターが5人揃ったグループ」だったのだ。

たとえば、SMAPの看板番組『SMAP×SMAP』(フジ系)。番組内コーナー「BISTRO SMAP」はゲストがSMAPから特製料理をふるまってもらうという内容だが、これは「何でもできるスーパースターによるおもてなし」という世界観に他ならない。『SMAP×SMAP』は他にもコント・歌・トークといった様々な要素を駆使して「個のスター性を最大化する場」を作り上げた。

カリスマ性より親近感を大事にしたから

一方、の冠番組はまったく異なる思想で設計されている。象徴的なのが『にしやがれ』(日テレ系)だ。

が毎回、「教わる・挑む・体験する」という構造が軸だった。大野が職人の技に感服し、相葉が動物と格闘、そんな場面を見た二宮が鋭いツッコミで笑いを生む。5人が「視聴者の代表として世界を体験する」姿が、深い共感を呼んだのだ。

5人で一つ―――れがの特徴であり、人気の秘密だった。顕著に表れていたのが『VS』(フジ系)で、チーム対抗ゲームというフォーマットを通じてブランドを体現してみせた。5人の連携、役割分担などから「という仲間」が毎週くっきりと可視化された。

「番組から発せられたメッセージも明確でした。『仲間と協力すれば、どんな壁も楽しく乗り越えられる』。停滞感の続く時代において、彼らのフラットな関係性や横並びの絆が多くの視聴者の心を摑んだのです」(フジテレビ関係者)

カリスマ性よりも親近感を、個人の突出よりもグループの調和を重んじたことが、ブランドの着火点と言えよう。

【後編記事】『「以上の国民的アイドルはもう二度と生まれない」と断言するしかない“これだけの偉業”…芸能史上最大《経済圏のスゴさ》振り返る』へつづく。

取材・文/岡田五知信(日本テレビ元プロデューサー、大和大学教授)

おかだ・さちのぶ/大和大学社会学部社会学科教授。「フォーカス」の記者を経て、'92年に日本テレビに入社。バラエティ番組や情報番組、特番などでディレクターやプロデューサー、編成を担務した経験を持つ

「週刊現代」2026年4月13日号より

【つづきを読む】「嵐以上の国民的アイドルはもう二度と生まれない」と断言するしかない”これだけの偉業”…芸能史上最大《嵐経済圏のスゴさ》振り返る