おいしいラーメン「かむくら」業績V字回復は”お家騒動”のおかげ…?代替わりで起こった「老舗チェーンの変化」

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『おいしいラーメン』でおなじみ、大阪・道頓堀発祥のラーメンチェーン「どうとんぼり神座」の業績が絶好調だ。同チェーンを運営する株式会社理想実業(非上場)の連結売上高は2024年3月期に128億円、最新の2025年3月期に165億円と前年比二ケタ成長を達成。

その勢いそのままに、今期は2026年1月までの実績ベースですでに215億円の売り上げがあり、期内を2ヵ月残してすでに前年超えとなっている。最終予測は223億円と、かつてないほどの好調ぶりだ。

とはいえ、ここまでの道のりはけっして平坦ではなかった。つい2020年頃、ちょうどコロナ禍の真っ只中に、同社の売り上げは71億円から49億円まで急降下するほど低迷していたのだ。はたして神座はどうやって、どん底からのV字回復を成し遂げたのか。命運を分けたのは、世間を賑わせた“お家騒動”にあった――。

【前編記事】『神座の「人を選ぶ甘いラーメン」ついに再評価の流れ来る…個人店に負けぬ「スープのこだわり」で過去最高売上更新』よりつづく。

常に最先端にあった「かむくら」だったが…

約30年前のことだ。大阪で暮らす筆者も「どうとんぼり神座」(以下、神座)の記念すべき第一号店「道頓堀店」を訪れ、強烈なインパクトを受けたと記憶している。当時すでに道頓堀界隈では行列ができるラーメン店として話題を集めており、1時間待ちは当たり前だった。

カウンター越しに厨房をのぞくと、洋食のコック服、長いコック帽を着用した調理人が黙々と『おいしいラーメン』を作っている。そこに昔からあるラーメン店のイメージは一切なく、あまりの斬新さに目を丸くした思い出がある。

創業者である布施正人氏はフレンチレストランのオーナーシェフ出身という、今でこそ個人経営のラーメン店にはちらほらいるが、当時としては異色の人物。そんな布施氏のこだわりが店舗運営の随所に反映された神座は、他チェーンとの明確な差別化をアピールした店だった。

2000年代に入っても、神座が持つ“既成概念にとらわれない”発想力は発揮されていた。たとえば2003年、記念すべき関東初出店となった東京・新宿店。日本屈指の繁華街、歌舞伎町のど真ん中に鎮座した同店は、およそラーメン店には似つかわしくない、2階建て・全面ガラス張りという異様な出で立ちで、業界の度肝を抜いたに違いない。

だが、2010年代に入ると、神座の勢いにも陰りが見え始める。一部を除いて、店舗の多くがロードサイドにあったせいか、時代とともに人の流れが徐々に商業施設へと変わっていく中で、客数が次第に落ちていったのだ。さらに追い打ちをかけるようにコロナ禍が襲った。気付けば神座の売上高は49億円(2020年度)にまで落ち込んでしまう。

創業者と息子“お家騒動”の末に…

そんな神座にとって「転機」とは何だったのか。筆者はやはり、2021年に創業者である布施氏から次男の布施真之介氏へと代替わりしたことが大きかったように思える。

この事業承継について当時、『週刊文春』が“お家騒動”として大きく報じている。「ウチは“飲食業界の大塚家具”や」――そんな布施正人氏のコメントと共に、一連の解任劇は世間の話題を集めた。

事実、真之介氏は就任直後、組織の活性化と社風を一新すべく、各所から新たな人材を招聘するなど経営をシステマチックに刷新していく。この様子から察するに、経営方針の違いから円滑な事業承継ができなかったことは、筆者としても容易に想像しうる。

「どちらが正しい」というわけではないが、いずれにせよ今振り返れば、この事業承継による経営の若返りが神座の業績を好転させたことは間違いないだろう。大きな変化として、まず思い浮かぶのがホスピタリティ面の充実度だ。

神座によれば、店舗を常に清潔で居心地の良い店にするべく、「5S=整理・整頓・清掃・清潔・躾」という活動を強化しているという。その結果、ラーメン店といえば、男性の一人客というイメージが先行する中で、女性や家族連れの来店機会につながっている。

以前、フジテレビで放送された『民放NHK全局一斉調査!テレビ紹介されたランキング お菓子&ラーメンチェーン店』という番組でも、蒙古タンメン中本天下一品、一蘭に次ぐ4位に神座がランクインしている。それだけ神座は、幅広い客層に支持されるようになったということだろう。

目指すは「国内外700店体制の構築」

ここ最近の神座の取り組みを見ても、知名度、集客力向上につながる施策を積極的に投じていることがよくわかる。

たとえば、俳優の土屋太鳳さんや岡田将生さんらをブランドアンバサダーに起用したCMづくり。これは消費者への効果もあるが、従業員が一層神座ブランドに誇りを持てるようになり、労働意欲の向上につながると考えられる。

また、節目の創業40周年を迎える今年は、様々な企画を控えている。第1弾は、2024年度に発売された期間限定メニュー『スタミナラーメン』の復活(〜5月20日まで販売)で、同商品は看板メニューの『おいしいラーメン』を抑えて、同年度の売上ナンバーワンとなったことでも知られている。

神座が掲げる次なる目標は、10年後を目途とした「国内外700店体制の構築」だ。現在の店舗数が、国内125店舗(関西圏85、関東40)、海外2店舗(ハワイ)ということを考えると、かなりハードルの高い設定にも思える。

とはいえ、国内のラーメン市場は約8000億円と過去最高を更新中で、海外市場も含めればますますの成長が期待できる。このビジネスチャンスに、唯一無二のラーメンで業績を向上させている神座。40周年を機に、さらなる成長へと邁進してほしい。

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