マッコウクジラが頭突きでじゃれ合う様子をドローンによる海洋調査で激写
子どものころから石頭と言われてきたけど、マッコウクジラには頭突きされたくない。
1820年、1頭の巨大なマッコウクジラが体当たりして、アメリカの捕鯨船「エセックス号」を沈めました。体重、実に80トン。この悪夢のような出来事は、のちにハーマン・メルヴィルの名作『白鯨』のインスピレーションになったと伝えられています。
それから約200年。研究者たちはついにマッコウクジラがリアルに頭突きをする様子を確認したそうですよ。
空から覗いたクジラの世界
学術誌『Marine Mammal Science』に掲載された研究論文は、マッコウクジラの頭突きに関する初の体系的な記録なのだそう。
科学者は以前からこの行動について仮説を立てており、実際にクジラが頭を使って何かを押したり叩いたりするという多くの事例証拠も存在します。
ハワイ大学のアレック・バースレム氏が率いる研究チームは、若いクジラたちが互いに頭突きをしている様子を確認しましたが、なぜそんな行動をとるのかを解明するにはもっとデータが必要とのこと。
今回の研究では、ポルトガルの西に浮かぶアゾレス諸島とバレアレス諸島周辺に生息する若いマッコウクジラ同士の「頭突きや頭部から突っ込んでいく接触」をドローンで撮影した3件の観察記録を使用。2020年から2022年にかけて収集したドローン映像を詳細に分析しました。
研究チームは、各クジラの大きさや性別といった身体的特徴を記録し、特定の接触行動が頭突きにあたるかどうかを評価しました。
さらに、別のプロジェクトのためにクジラに装着されていた音声トラッカーのデータも活用し、頭突きの前後にクジラ同士がコミュニケーションをとっていたかどうかも調べました。
激しい遊びを解析する
記録からは、いくつかの興味深い知見が得られました。
まず、最も注目すべき点として、少なくともこの海域に生息するマッコウクジラにとって、頭突きは繰り返し見られる行動のようです。
第2にプレスリリースによると、過去に提唱されていた「体が大きな成体のオスが優位性を示すために頭突きをする」という仮説は否定される形となりました。むしろ頭突きをしていたのは、ほとんどが若い個体だったのだとか。
音声タグの解析結果によると、クジラたちは「社会的相互作用が背景にあることを示唆する」高速のクリック音やコーダ(マッコウクジラ特有の仲間内でコミュニケーションをとるためのリズムを持ったクリック音のシステム)を交換しており、各衝突の強度は、「軽度からかなり激しいもの」までさまざまだったと論文に記されています。脳震盪を起こしたりしないんですかね…。
クジラたちは楽しんでるらしい
動物行動学の研究ではよくあることらしいのですが、研究チームはクジラの頭突きという行動の正確な理由をまだ特定できていないそうです。
今回の観察結果から、頭突きはオスの成体に限られるという説が否定されたものの、「未成熟な個体間の乱暴な遊び」が、競い合う成体間における同様の行動の予行演習の一種である可能性は依然として残っているとのこと。
とはいえ、現時点でデータが不十分なのは事実。しかし研究チームは、今回の結果から、自然環境に過度な影響を与えることなく、通常は捉えにくい動物の行動を記録する手段としてのドローン映像に可能性を感じているとしています。
バースレム氏は、マッコウクジラの行動の謎を解くために、プレスリリースで一般市民にも映像の提供を呼びかけています。
同じような映像をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひご連絡いただきたいと思っています。
まだ目撃されていない行動が近いうちに明らかになるかもしれない、頭突きのような行動の観察例が増えることで、その行動が果たす役割を解明する手がかりになるかもしれないと考えるだけで胸が躍ります。
マッコウクジラのコーダを解明して、「なんで頭突きしてんの?」と直接尋ねる道も追求してほしいですね。

