テレビ信州

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「イタリアで、季節外れの満開のサクラを咲かせて終わりたいと思います」

27年の競技人生にピリオドを打つことを表明した2025年10月。
“集大成”と位置付けたのが、2026年2月にイタリアで開かれたミラノ・コルティナオリンピックでした。

渡部暁斗さん(37)。1988年に長野県白馬村で生まれ、小学4年生の時に競技人生をスタート。そのきっかけとなったのが…1998年の長野オリンピックでした。当時小学3年生だった渡部さんは、地元の白馬村で開かれたスキージャンプの団体戦を間近で観戦、それが、のちに競技を始めるきっかけとなりました。
白馬高校在学中の17歳の時に初めてオリンピックに出場。世界へとはばたいた渡部さんは、オリンピックに6大会連続で出場し、銀と銅、あわせて4つのメダルを獲得。ワールドカップでも個人総合優勝を果たし「キング・オブ・スキー」の称号を手にしました。

そして、ミラノ・コルティナオリンピックを4か月後に控えた2025年10月。

「今シーズン限りでの現役引退を皆さまにお伝えしたく、お集まりいただきました」

渡部さんにとって、最後のオリンピックとなったミラノ・コルティナ大会。
個人ノーマルヒル 11位(日本勢トップ)
個人ラージヒル  19位

オリンピック最後の種目は、同じ長野県の木島平村出身で、9歳年下の山本涼太選手と2人で挑む団体スプリント。
日本は、前半のジャンプを終えて3位と、メダルを狙える位置に付けます。後半のクロスカントリー、渡部選手と山本選手の力走でトップ集団に追い付き、上位5か国による激しいメダル争いを展開。結局、日本は6位入賞を果たしました

レース後の渡部暁斗選手
「ここに来て満開のサクラを咲かすことはできなかったんですけど、本当に最後の花びらの1枚が散っ
ていくまで皆さんに見ていただけたと思いますし、最後に道半ば散っていったサクラが、この先を行く若い選手たちの、何か道しるべになってくれたら本望です」

【2026年4月2日/テレビ信州スタジオ】

今シーズン限りで引退した白馬村出身、スキーノルディック複合の渡部暁斗さんに、現在の胸中や今後についてお聞きしました。      
Q.渡部さん、まず競技人生27年間。本当に長い間、お疲れさまでした。現役を引退されてからまだ数週間ですが、今はどのように過ごされているんですか?
「今はもう本当に家でゆっくりというか。家族と一緒に過ごしている日常ですね。のんびりと過ごさせてもらっています」

Q.第一線を走り続けてきて20年あまり。改めて渡部さんの競技人生、いかがでしたか?
「いろんなものが詰まっているかなと思いました。一言で表せられないような。本当にいい競技人生だったと思います」

Q.渡部さんがずっと貫いているなと感じているのが「ノルディック複合のおもしろさを伝えたい」ということです。前半のスキー、後半のクロスカントリーと2種目を戦う過酷な競技ですが、改めて渡部さんはどんなところに魅力を感じていますか?
「おもしろいと思うポイントは、やはり自分の成長というか、年を重ねるごとに変わってくるんですけど、やっぱり一貫しておもしろいと思うのは、選手に完璧さがなくて2種目やるからこそ、その不完全な各選手たちが見せてくれるレース展開のおもしろさ、レース展開に人間味みたいなのが出てきたりとか、そういうのがすごくおもしろい、そこがポイントなんじゃないかな、と思います」

Q.これまで6回のオリンピックで、私たちに競技のおもしろさを伝えてくれましたが、渡部さんが1番印象に残っているオリンピックは?
「決めるの難しいですね。でもやっぱりソチオリンピックかなと思います。初めてメダルを取った大会でもありますし、思い出は多くありますね」

Q.ノルディック複合はオリンピック種目の見直しで、除外の可能性が浮上しています。オリンピック期間中も、競技への関心を高めるために発信を続けていらっしゃいました。どういうお考えからですか?
「自分が好きでやっている競技ですし、本当におもしろいと思っているので、オリンピック種目として残ってほしいなって、心から思っているからこその行動だったのかなという」

Q.そういった意味では、今回の団体スプリントは、まさに競技のおもしろさが伝わる、思わず釘づけになってしまう展開でした。長野県木島平村出身の山本涼太選手と、信州勢で挑んだ団体戦を振り返っていかがですか?
「あれはもう、天気も味方してくれたと思いますね。本当に競技する方としては、きょう本当にやるのかなと思うぐらいの天候ではあったんですけど、あの大雪と難しいコンディションがあったからこそ、トップグループのスローダウンがあったりとか、それによって日本チームにチャンスが生まれたりとか、そういうことがあったので、すごくおもしろい、コンバインドの魅力の詰まったレースというか、おもしろさがすごくみられたレースだったんじゃないかなと思います」

次世代へのバトンということで、渡部選手にゆかりのあるこんな方たちからメッセージが届いています。

■白馬北小学校 新6年生の皆さんからのメッセージ■
「渡部暁斗選手、競技生活お疲れ様でした!白馬北小学校の小ジャンプ台が完成しました。ぜひ見に来てください!」

Q.渡部さんの母校・白馬北小学校の新6年生のみなさんからのメッセージ。いかがですか?
「うれしいですね。彼らが頑張ってジャンプ台を再建してくれましたし、すごく応援してもらえる、すごく心強い存在だったなと思います」

〈白馬北小学校〉
渡部選手の母校、白馬北小学校の校庭にはスキーのジャンプ台があります。しかし、老朽化で使えなくなっていました。そこで、児童たちが「ジャンプ台を直したい」と募金活動などを続け、ついに2025年12月に新しいジャンプ台が完成しました。渡部さんも、後輩たちの活動にエールを送っていました。

Q.渡部さんの現役選手としての姿は見納めとなりましたが、今後はどんな活動をされる予定ですか?
「まだ、これというものはないんですけど、これまで自分が本当に夢中になれて、好きなことを好きなだけやってきたので、最後の試合を終えて2週間後に、じゃあ次に何やるんですか?って言われても、なかなかそういうものはすぐには浮かんできてはなくて。自分に何ができるかなとか、何がやりたいのかなっていうことを考えながら、これからノルディック複合に匹敵するくらいの、そういう夢中になれることに出会えたら、すごくいい人生になりそうだなと思っていますし、そういう出会いができるように、これから過ごしていきたいなと思っています」

Q.例えば、指導者というのはどうですか?
「海外遠征に行きたくない(笑)。これまで1年の半分ぐらいは海外に出て、家族とかを置き去りにして出て行ったので、トップレベルの指導者になると、選手と一緒に帯同して、今までと同じようなスケジュールになってくるので、それは今ちょっと考えられないなと思っていて。なので、もし国内にいて教えられることがあれば可能性があると思いますけど。指導者って、いろんな指導者の形があると思うので、そこは考えたいなと思っています」

Q.家族とゆっくりしたいというようなお気持ちもあるようですが、プライベートで、こういうことをやってみたいというのはありますか?
「家族と過ごしたいというのもありつつ、次の冬ですよね。二十数年ぶりに、ちゃんと日本の冬を過ごすので、久しぶりに。なので日本の山で滑りたいという気持ちもありますし、本当に次の冬が来るのが今すごく、一番楽しみですね」

信州や日本の良さを再発見できる冬になりそうですね。
渡部暁斗さんにお話をうかがいました。ありがとうございました。