「45歳で課長代理になって人が変わった」妻に悩む40歳夫が目撃したこと

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イメージアップのためだけに女性を管理職にする事例

「対外的なイメージアップを図るために、期限直前になって女性社員を急いで管理職に昇進させるケースが多いと感じます。しかし、日本社会は、家事・育児の負担が依然として女性に偏っている現状があり、さらに長時間労働が常態化していて、昇進した女性にさらに負担をかける形になりがちです。それにより心を病んだり、ストレスから浮気に走るケースもあります」こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。

山村さん連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。

今回山村さんのもとに相談にきたのはシステム関連会社に勤務する40歳の翔太さん(仮名)だ。結婚10年になる妻は45歳で、建築関連会社に勤務している。彼女の会社はつい最近まで男性中心企業だったが、急遽妻が課長代理に指名された。それまで管理職の可能性の打診も一切なかった中、家事育児も一手に引き受けている妻が「代理」であるが管理職となり、そこから人が変わってしまっという。外泊もするようになり、浮気を疑って調査を依頼したのだ。

その調査の背景からは、日本が抱える問題の闇も見えてきそうだ――。

付き合っている彼氏の家のトイレ掃除まで

11年前、妻との出会いは、当時翔太さんが出向していた建築関連会社で、妻はここの社員でした。妻の方から積極的にアプローチし、すぐに交際に発展。デートは主に翔太さんの家で妻は料理、洗濯、掃除まで世話をしてくれ、トイレ掃除までしてくれたことで、翔太さんは結婚を意識。交際半年でプロポーズします。その時に妻は「離婚歴があり8歳の息子がいる」と告白。翔太さんは両親の反対を押し切って結婚します。

親子3人の同居が始まりましたが、息子は「もう嫌だ」と実の父である前夫の家で暮らすように。夫婦2人の生活が始まり4年目に娘が誕生。現在は娘は6歳ですが、子育てと家事のほとんどを妻が担っていることに妻が怒り、衝突することも度々あったそうです。

妻の勤務先は、旧態依然とした会社で、女性が管理職になることはほぼありませんでしたが、1年前、女性活躍推進法による、女性管理職比率の公開の義務化などを受けて、妻は予想もしていなかった課長代理に昇格。しかし仕事のやり方は旧態依然のままで、家事育児ほぼすべてやりながら負担が上乗せされた妻は、気持ちのアップダウンが激しくなります。翔太さんに物を投げつけ、気に入らないことを言った娘の皿を床に叩きつけて割るような暴力を振るうように。

さらに、妻は夫婦の共同貯金から、200万円を使い込んでいることもわかりました。翔太さんから妻の話を聞いていると、妻は好きな人に過度に献身する愛着障害の傾向がある。また、理想の自分と現実の自分の乖離による自己愛性パーソナリティ障害のような状態になっているのではないかと感じました。妻の母は教育熱心で、妻に過度の期待をかけていた。そういうことも影響しているのでしょう。では妻は本当に浮気をしているのでしょうか。

好きになった相手の身の回りの世話をするのが好き

妻は水曜日か金曜日の夜に外泊すると言っていました。妻は、好きになった相手の身の回りの世話をするのが好き。おそらく、相手の家でのデートになることを推測し、水曜日にカメラや集音マイクほか、最新の機器を用意して尾行に入ります。

妻は、朝7時30分に家を出るので、翔太さんが住む賃貸マンションのエントランスで待機。翔太さんが家賃と光熱費、通信費の全額を。その他の生活費を妻が出しているそうです。今、物価高騰で、食費のみならず、子供を遊びに連れて行ったり、習い事ほか諸経費を払うと家賃よりも高くなるのではないかと思いました。このような“不公平感”も夫婦不和の原因になることも多い。200万円の使い込みが、相手に貢いだのではなく、生活に使っていて欲しいな……と思ってしまいました。

妻が出てきました。目鼻立ちが整っており、小柄ですが手足が細くて長い。ツヤツヤの髪を一つに束ね、毛先をゆるく巻いており、とても女性らしいと感じました。ベージュのコートに人気ブランドの仕事バッグを持っています。

都心にあるオフィスに入っていき、出てきたのは19時。ほぼ小走り状態で電車に乗り、自宅とは反対方向の路線に乗って、住宅街がある駅で降ります。スーパーに行き、鯖の切り身、豚のひき肉、豆腐、葉物野菜、オリーブオイルなど3000円分を購入して、10分ほどのところにあるマンションに入っていきました。オートロックの物件なので、私たちはここで待機します。

年下の男性と手をつなぎ…

このまま動きがないと思っていたところ、21時30分に30代後半くらいの男性と妻が手を繋いで出てきたのです。2人はほろ酔いで、とても楽しそうです。コンビニに行き、ビールを4缶購入し、再びマンションまで戻ります。明らかに恋人同士なので、浮気の証拠にはなるでしょう。翌朝、妻は始発で家に戻り、再び出勤。この移動にもかなり体力を使うので、仕事のエネルギーが残らないのではと心配になりました。

以上を報告すると、翔太さんは「やっぱりそうですか。多分、相手の男は同じ会社の人でしょうね。なんか、今、びっくりするくらい気持ちが離れました」と驚いた様子で話しています。その後、弁護士と相談したようで、翌日に「向こうが反論してきた時のために、あと2回、証拠を撮ってください」と連絡が。

そこで、金曜日にも調査に入りました。会社を出る妻を待ち、尾行をしたところ、ターミナル駅で妻と男性は待ち合わせ、手を繋ぎながら、雑貨やスイーツなどを見て回り、客単価1万円程度のイタリアンバルで食事をしていました。店がうるさすぎて、全く会話は聞き取れませんでしたが、アイコンタクトをとりながら指を絡ませるシーンの撮影に成功。食事が終わり、2万3000円程度の会計は「年上だから、いいのよ」と妻がカードを切っていたのです。その後も妻がトイレ用洗剤やカビ落としなどの洗剤を購入し、男性の家に帰っていく。土曜日は始発で帰宅です。

翌週の金曜日も同様のパターンでデート。この日は大人向けの居酒屋さんで、妻と男性は同じ会社に勤務していることがわかります。元々、男性は別の会社にいたのですが、妻が声をかけ、転職してきたことがわかりました。妻の会社は規模が大きいので、男性にとって妻は恩人でもあるのでしょう。

男性は「愛してる」「可愛い」と頻繁に言うタイプで、妻はその度に照れていました。お酒が入ると際どい会話もあり、会話からこの日はキスシーンも撮影できました。よく見ると男性は翔太さんに似ている。妻は中性的な男性が好きなのかもしれません。

「あー、この感じ」

以上で調査は終了し、翔太さんに報告すると、「あー。この感じ。昔僕もされていました。妻の鉄板のテクニックなんでしょうね」と話しています。加えて「話を聞いた時は妻から気持ちが離れたのですが、写真を見ると“気持ち悪い”って思ってしまう。娘をほったらかして、男といちゃいちゃしているんですよ」と続けました。

この証拠の写真のインパクトは絶大で、夫婦関係を継続させ、本人の目を覚まさせるために浮気調査の依頼をしても、写真を見て「気持ちが離れて、離婚するしかありません」と決断する人は多いです。やはり、人生は長い。裏切られた記憶を思い出すなら、他人になったほうが楽だと考える人は増えています。

「僕も離婚したい。今、弁護士と話していますが、妻から養育費をもらって、僕が娘を育てたいと思っています。ひとまず、これから妻と話します」

そして、その翌日電話があり、翔太さんは「妻は浮気を認めました。離婚後に相手の男と結婚するつもりだと話してきたのです」と驚いた声で話していました。

「さらに、妻は『探偵なんかに調べさせて、あなたは卑怯だ』と怒鳴り始めた。妻はすぐキレるのです。この状態ではまともに話せないと思いながらも『多分、心の問題があるから、病院かカウンセラーのところに行け』とだけ言いました。すると『私を狂っていると思っているんでしょう。あなたは察しが悪いし、話を聞いてくれない。何もかも私任せだったから、私がこうなったんだ』とモノを投げる。話し合いができる状態ではないので、娘と共に実家に戻ることにしました」

弁護士を交えたやり取りに

そして、弁護士を交えて妻と話します。第三者の前だと妻は冷静になるので、「離婚すればいいんでしょ」と強気な態度で挑んでいたそうです。

「ただ、証拠もあり、妻はあまりにも不利すぎる。自分でも弁護士が必要だと思ったらしいのですが、どの先生にも相手にしてもらえなかったそうです。結局、養育費と慰謝料をもらう形で離婚できそうです」

翔太さんは相手の男性にも慰謝料を請求。相手は「会社にバラさないでほしい。すぐに払う」と、請求額通りの200万円を翔太さんに支払います。妻が使い込んだ、夫婦の共同貯金と同額です。200万円は、妻が生活費の補填として、そして男性との遊興やプレゼントにも使っていました。

また、相手はこれまで、結婚に前向きで盛り上がっていたそうですが、慰謝料の話をした時から、妻を遠ざけるようになったそうです。「やはり、妻は離婚したくないと、復縁を迫ってきましたが、こちらの決意は揺るがない。妻の心は僕には受け止められません」話していました。

ただ、今回の浮気の案件は「妻だけが悪い」とは思えませんでした。子供のころから母の夢を託され、「成績が良くなければならない」「キャリアを積める女性にならねばならない」と思わされていたのです。しかし女性活躍する土壌がまだ育っていませんでした。結婚すると、「仕事で忙しいから」「給料が自分のほうがいいから」という理由で家事育児といったケアワークをすべてやらざるをえない。夫側も、すべての面倒を見てくれていた女性だから結婚をしているので、「前提」が「ケアワークをしてくれる存在」だったのです。

とはいえ、うまくやりたいと思えば思うほど、両立の難しさにイライラして子供にもあたり、さらに自己嫌悪。会社から「期待」をされたというよりも「法律だから」という管理職に任されるも、労働環境が変わるわけではない――。そういう状況だったのではないのでしょうか。

日本では「表面だけではなく女性活躍がしやすい社会」が必須なのだなとも感じます。家庭生活も仕事生活も誰もが尊重されれば、「家事育児があるから管理職はできない」とはならないはず。女性活躍を推進したいと思うのなら、男女ともにケアワークをしながらも普通に仕事ができる環境にしなければならないのではないかと考えさせられました。

おそらく、この後、翔太さんと娘は穏やかな生活を続け、妻は自宅を引っ越し一人の人生を歩むのでしょう。一人になって、自分と向き合うことで、心の傷を回復する必要性に気付き、生きやすい状態になってほしいと願わずにはいられませんでした。

調査料金は55万円(経費別)です。

【前編】彼氏の家のトイレ掃除までしていた会社員の妻が「45歳で課長代理になって人が変わった」という経緯