今季最高のヒット「リブート」が大詰め “黒幕”の最有力は? 多すぎる“謎”を徹底考察
儀堂の生死
今季一番のヒットドラマとなったTBS「日曜劇場 リブート」(日曜午後9時)が第8回を迎える。いよいよ大詰め。だが、いまだ分からない点が多い。一連の事件の黒幕は誰か、何が狙いなのか。これまでの物語を基に黒幕の最有力容疑者と事件の全体像を推理する。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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まずは既にほぼ確定したことから。犯罪組織「ゴーシックスコーポレーション」の公認会計士・幸後一香(戸田恵梨香)は、3年前まで同じ立場だった早瀬夏海(山口紗弥加)がリブート(再起動)した姿である。
夏海は主人公のパティシエ・早瀬陸(鈴木亮平)の妻。ゴー社から10億円を横領した疑いをかけられたあと、何者かに殺されたことになっている。だが死んだのは本物の一香だ。

一香にはこれまでに夏海と思わせる言動がいくつもあった。一香が夏海のリブートした姿であることが確定的になったのは第7回。第1回で早瀬が整形を行った「ひとみ美容形成クリニック」に一香が通っていることが明らかになったからである。
早瀬は自分の整形を口止めするためだと考えた。だが、それは違う。医師には守秘義務があるから、心配しなくても患者の情報はまず明かさない。
まして同院は自らも危ない橋を渡っているから余計に沈黙する。一香が同院へ行く目的は自分の顔のメンテナンスだ。早瀬も捜査の一環で同院を訪れた際、院長の桑原瞳(野呂佳代)から「きちんと定期メンテナンスに来て下さいね」と言われた。
ここからは推理に移らせていただきたい。警視庁捜査1課の刑事・儀堂歩(鈴木亮平、2役)は第5回の時点で死んだと見られている。ゴー社代表・合六亘(北村有起哉)の下で働いている冬橋航(永瀬廉)に拳銃で4発撃たれたからだ。腹、右肩甲骨周辺、右肩甲骨下部、右腕だった。
儀堂と一香のコンテナ内での話し合いは約1分間。話し合う前の儀堂は一香に激しい憎悪をぶつけていた。ところが、コンテナを出たときには怒りが消えていた。別人のように大人しくなっていた。そして合六の100億円の商品が盗まれたことについて「オレがやった」と声を上げ、撃たれた。
コンテナ内で一香は儀堂にまずこう伝えたのではないか。「私は夏海。一香の顔を借りている。これから口にすることは必ず約束する」。儀堂はゴー社で知り合った夏海が誠実な人柄であることを知っている。一香なら信じないが、夏海の言葉だから信用した。
約束とはこんな内容だろう。(1)妻の麻友(黒木メイサ)は必ず守る(2)ゴー社は壊滅させる(3)警察内の裏切り者と黒幕を見つけ出し、叩きのめす。
さらに、4つ目の約束があったように思えてきた。「あなたを助ける」である。一香は夫である早瀬のことを絶対に守ろうとしている。一方で儀堂も死なせたくない。麻友の下に返したいからだが、警察内の裏切り者との対決時には警視庁内部に通じる儀堂の協力が欠かせないからだ。
冬橋は4発も撃ちながら、なぜか心臓、頭部、首といった急所を外している。普通、最後の1発でトドメを刺すが、冬橋は右腕を狙った。
そもそも儀堂を撃ったのが冬橋だったのはなぜか。拳銃を持つ人間はほかにもいた。儀堂の右側に立っていた男である。だが、この男に儀堂が飛びかかり、拳銃を奪おうとしたから、冬橋が撃つことになった。
儀堂の動きは一香の指示だ。これによって、冬橋が撃つことの正当性が生まれた。急所を外せた。
冬橋の真実
時期は不明だが、一香は冬橋に自分が夏海であることを伝えたのだろう。第7回で殺されたマチこと舞浜千秋(上野鈴華)が言っていたとおり、夏海は冬橋たちの恩人だ。
冬橋の生きがいは居場所のない子供たちを保護するNPO法人「しぇるたー」の運営。その立ち上げから維持まで夏海は損得抜きで協力をした。一香が冬橋に「自分は夏海」と明かしたら、協力を惜しまないはずだ。
撃たれた儀堂は早瀬によって土中に埋められた。その現場には冬橋とその仲間の霧矢直斗(藤澤涼架)がいた。霧矢は好人物だが、合六には逆らわない。
このため3人で儀堂を病院に搬送するのは難しかった。だが、一香が現場に医師を手配したり、ほかの誰かに病院まで運ばせたりすればいい。ゴー社が死体を埋める場所は決まっている。その場所を一香は知っている。
第7回、マチは一香が隠していた合六の100億円の商品を横取りしようとして、一香の雇った商品の監視役に殺された。一香も冬橋も予期しなかったアクシデントだ。
マチは商品をNPOの運営資金に充て、冬橋が合六の下で働かなくて済むようにしたかった。冬橋の怒りと悲しみは計り知れない。
冬橋は合六に対し、一香への報復を誓った。「殺してもいいですよね」。しかし一香の素顔は夏海。冬橋の言葉はポーズか、それとも一香に結果責任を問うつもりか。
最も大きなポイントは黒幕の正体である。合六は違う。3年前の現金10億円に続き、100億円の商品を奪われた。ある種、被害者だ。
冬橋も当てはまらない。悪事に手を染めているのはNPOのため。大それたことは考えていない。マチから100億円の横取りを持ち掛けられた際も拒絶している。
本当に悪い奴ら
そうなると黒幕と考えられる人物は限られてくる。警視庁監察官の真北正親(伊藤英明)である。黒幕と見る材料が揃い過ぎている。
まずは軽いところから。第4回、早瀬は儀堂の警視庁内のロッカーからノートパソコンを発見した。パソコンに残っていたメールの内容を調べると、貸トランクから10億円が見つかった。
このパソコンは儀堂のものではない。何者かがロッカーに置いた。その工作を難なく出来るのは職員を調査する権限のある真北である。
第5回、早瀬が住む儀堂宅に捜査2課の家宅捜索が入った。儀堂とゴー社との関係を洗うためである。土方悠里刑事(愛希れいか)がいる2課は知能犯や贈収賄などを担当する。警視庁内で唯一、政治家と向き合う部署である。
早瀬は室内に拳銃を隠していたから絶体絶命。ところが真北が捜索前に隠してくれたため、逮捕されずに済んだ。
第6回、真北は早瀬に向かって「あなたがいなくなると困るから」と、助けた理由を語った。儀堂は6年前に真北の協力者になり、ゴー社の情報を提供していたからだ。中身が早瀬になろうが、ゴー社に通じているから、守ったという。
真北の目的は「クジラ」を釣り上げること。ゴー社から資金提供を受けている大物政治家の摘発である。その人物は第7回で明らかになる。真北の実兄・真北弥一だ。野党第1党党首で次期首相候補だった。
もっとも、真北が本当に兄の摘発を狙っていたとは到底思えない。贈収賄は2課の担当。そもそも監察官の真北に捜査権はないから、手柄にならない。儀堂からゴー社の情報を得ていたこともルールに反する。潜入捜査は違法である。仮に起訴できて裁判になろうが、勝てない。そんなことは監察官の真北なら百も承知のはずだ。
真北の狙いは全く別のところにあると見る。ゴー社から兄への献金が途絶えたり、発覚したりしないよう、儀堂に組織の動きを監視させていたのだ。その真意は儀堂に伝えなかったが、儀堂は勘づいていたのではないか。だから「大した情報を上げていない」(真北)。
真北が早瀬に対してクジラが兄であることを明かしたのは第7回。だが、それは自発的なことではなかった。早瀬から「きょう合六の店であなたを見ました」と告げられたから。あとから兄が合流したのも早瀬は見ていた。この目撃談を伝えられたとき、真北はかすかに動揺していた。
その後、真北は合六の金で首相が生まれたら困ると言い繕った。しかし、この話も苦しい。100億円の商品が見つかったら、合六に返し、兄に闇献金するところで摘発しようと早瀬に提案したあとだからである。合六に返品しなかったら、兄に金を渡せない。汚れた首相の誕生を阻止できる。真北は兄のスポンサーである合六を守ろうとしている。
儀堂宅の家宅捜索で拳銃を隠したのも早瀬のためではなく、ゴー社を守るため。拳銃が出てきていたら、2課の捜査がゴー社に及ぶ可能性があった。
儀堂宅の火災にも真北が絡んでいるのではないか。儀堂が真北とゴー社の不審な関係に気付き、調べ始めたから、警告を与えた。
3年前の本物の一香殺しにも真北が関係した疑いがある。10億円が手つかずで、現金で保管されていたからだ。金融機関に預けたりすると、アシが付いてしまうため、政治資金は現金主義。近くあるという選挙用だったのだろう。
真北はゴー社に兄への闇献金をさせながら、秘かに大金も奪おうとしたと見る。とんでもない悪党である。
まだ謎は多い。複雑なパズルのような物語である。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。
デイリー新潮編集部
