北朝鮮で後継者ポストめぐり権力闘争か 娘・ジュエ氏有力も妹・金与正氏の部長昇格で憶測飛び交う
北朝鮮が、5年に1度の朝鮮労働党大会を開き、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹、与正(ヨジョン)氏の昇格人事を決めた。党の副部長(次官級)から部長(閣僚級)にするもので、朝鮮中央通信が24日に伝えた。
この人事について韓国メディアは、次期指導者のポストをめぐり、正恩氏の妹の与正氏と、後継就任が有力視されている娘のジュエ氏の間で「権力争いが起きるのではないか」と伝えている。
北朝鮮では、過去にも指導者の兄弟姉妹が部長職に就いた例がある。ただ、今回はタイミングが微妙だった。韓国の情報機関・国家情報院が12日、「ジュエ氏が後継者内定」との判断を明らかにしていたからだ。
与正氏は、これまで韓国や米国へのメッセージを発する代弁人の役割を果たし、「金正恩の口」とも言われるほど隠然たるパワーを持っている。あえて昇格する必要はない。
脱北した北朝鮮の元駐英公使、太永浩(テ・ヨンホ)氏は韓国のテレビ番組の中で、「与正氏が部長職を兄に強く要求したのではないか」と推測した。10代のジュエ氏の後継説が強まる中、次期指導者ポストに野心を抱いている与正氏が焦りを感じ、高い役職を手にして自分の存在をアピールした、というのだ。
対立をうかがわせる動きもある。北朝鮮の公式映像の中で、かつては親密そうに話したり歩いたりしていたジュエ氏の母、李雪主(リ・ソルジュ)氏と与正氏が、最近では距離を置き、一緒にいる場面がほぼ見られなくなっている。
金ファミリーが絶対の権力を持つ北朝鮮では、後継者の決定過程で、金一族内部でたびたび対立が起きている。正恩氏も自身の権力を固めるために、叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏や、異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏を粛清してきた。
正恩氏の身に万が一の事態が起きた場合、与正氏とジュエ氏を推すグループの間で争いが起きることも十分ありうる。実際、こう予測する韓国政府の元高官もいる。この事態は、正恩氏にとって悪夢でしかないだろう。
ファミリー内の悲劇を避けるため、与正氏を政府の中枢から外れた部署の部長に据えたとの見方もある。与正氏が部長に就任した部署は発表されていないが、前出の太永浩氏は「経済関係の、あまり重要ではない部署だった場合、与正氏の肩書きは高くなったが、権力は削がれることになる」と語っている。
核兵器やミサイルで国際社会を手玉にとる正恩氏も、身内の女性には手を焼いているのかもしれない。
文/五味洋治 内外タイムス
