モラルとマナーの違い、スッと答えられる?「バレなければいい」という考え方は危険で…
おもてなしや気づかいを身に着けたいと考えている方も多いのではないでしょうか。皇室・VIPフライトに乗務した経験を持つ一般社団法人ファーストクラスアカデミー 代表理事の香山万由理さんは「『おもてなし』はモラルやマナーといった土台があってこそ成り立っている」と話します。そこで今回は、おもてなしの土台となるモラルやマナーについて、香山さんの著書『ふるまいひとつで仕事も人生もうまくいく 気づかいの神さま』をもとに解説をしていただきました。
【書影】皇室フライトを経験している乗務員だからこそ伝えられる「おもてなし」の本当の身につけ方。香山万由理『ふるまいひとつで仕事も人生もうまくいく 気づかいの神さま』
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モラルとは何か?
「モラルって何ですか?」と聞かれて、スッと答えられる人は意外と少ないものです。
モラル(moral)
・意味:善悪の基準。「これはやってはいけない」という最低限のルール感覚
・性質:社会や文化の中で共有される暗黙のルール
例 人の物を盗まない、公共の物を壊さない、命を危険にさらさない
これが定義ですが、モラルは誰かから教え込まれるものではなく、長い時間をかけて無意識に積み重なっていく感覚です。だからこそ言語化が難しいのかもしれません。
たとえて言うならば、日本語の「てにをは」の使い分けに似ています。学校で文法を習っても、実際に会話するときに「今から格助詞を使おう」と意識はしませんし、感覚的に相応しい助詞がわかるものです。
それと同じで、モラルは頭で考えるというより、身体にしみこんで自然に行動に表れるものなのです。
モラルの多くは「公共」に関する意識から生まれます。
たとえば、
・登山したら、ゴミを自分で持ち帰る
・公園で遊具を壊さない
・温泉で湯船にバスタオルを入れない
これらは法律で細かく決まっているものではありません。しかし、「そうするのが当たり前」と感じる人が多いのは、日本人がモラル(≒社会のルール)教育を日常的に受けているからです。
小学校の遠足で、「ゴミは各自で持ち帰りましょう」と教わり、持ち物リストには、ゴミ袋が書いてあります。当然のように自分のゴミは自分で持ち帰るという習慣が身についています。周囲の大人が実践しているのを見て育つことで、「やってはいけないこと」が自然と自分の基準になっているのです。
モラル意識が欠けている人とは?
以前、回転寿司の醤油差しを舐めたり、コンビニの売り物のおでんにお箸を突っ込んで食べたりして、その様子を動画にアップする人が話題になりました。一見「ただの悪ふざけ」に見えるかもしれませんが、これは明確にモラルに反する行為です。
なぜかというと、
・他人が安心して使う権利を奪っている
・公共のものを「自分だけのもの」のように扱っている
・その場の信頼関係や空気を壊している
こういう行為が問題になるのは、単に「汚いから」ではありません。誰もが共有しているはずの安全・安心の土台を壊すからです。回転寿司やコンビニは「衛生的で安心して食べられる場所」という信頼の上に成り立っています。
これを壊されると、「あの店は大丈夫なのか?」「同じことを他の人もしているかも」と不安になり、その空間全体の信用に影響します。単なる「ルール違反」以上に、周囲の信頼や安心感を一瞬で失わせる行為です。
こうした行為はルールで細かく禁止されていなくても、ほとんどの人が「やってはいけない」と直感的にわかることです。その感覚を無視してしまうことが、モラル欠如のサインです。
あなたを危険にさらす「バレなければいい」という考え方
「モラルハザード」という言葉があります。これは本来、経済や保険の分野で「取引の当事者間で情報格差が存在する場合に、情報を有する側が自己の利益のために利己的な行動に出ること」という意味で使われます。
最近では、倫理観や道徳的節度がなくなり、「バレなければよい」という考えが醸成され社会的な責任を果たさないこと、という意味でも使われ始めています。「自分の行動が周囲や社会にどう影響するかを想像せず、モラルを放棄すること」と捉えるとわかりやすいのではないでしょうか。

(写真提供:Photo AC)
もし富士山の登山道がゴミだらけだったら、そこを歩く人の気分はどうでしょう? 自分も「まあ、少しくらいなら」とモラルを緩めてしまう人がいるかもしれません。
モラルハザードが怖いのは、一度その行為が表に出ると「自分もやっていいのでは?」と考える人が増え、モラルの低下が連鎖していくことです。こうして、公共の場での秩序がどんどん崩れ、一度崩れると取り戻すのが非常に難しくなります。
だからこそ、「ちょっとの悪ふざけ」や「軽いノリ」であっても、モラル違反は決して軽視できないのです。
モラルは、法律のように罰則があるわけではありませんが、社会の空気を作ります。一人ひとりが最低限のモラルを持っているおかげで、私たちは安心して日常を過ごせます。逆に、一人でもモラルを欠いた行動をすると、その場全体の空気が壊れます。
つまりモラルは、安全や信頼、治安に直結するものなのです。
モラルハザードは、その見えない安全装置を自分から外してしまう行為であることをしっかりと自覚しなければいけません。
神ポイント
・モラルとは、「していいこと」と「してはいけないこと」を誰も見ていなくても守れること
・モラルを守るとは、「正しいかどうか」よりも「誰かを危険にさらさないか」、「自分と他者の安心・安全を守っているかどうか」
モラルとマナーの違い
ここで、よく混同される「モラル」と「マナー」の違いを、しっかり押さえておきましょう。
・モラル…善悪の基準。人として最低限守るべきこと。
・マナー…相手を不快にさせないための気づかい。
たとえば、
レストランで食べ終わったゴミを床に捨てるのは、モラル違反です。
同じレストランで、大声で騒いでいるのは、マナー違反です。
違いをざっくり言えば、
モラルは「絶対にやってはいけないこと」
マナーは「やらないほうが望ましいこと」
モラル違反は、公共の秩序や他人の権利を直接損ないます。
マナー違反は、法律的な罰則はないですが、不快感や信頼の低下を招きます。
モラルがあるかないかは、その人の「デリカシー」に直結します。デリカシーがないと言われる人は、たいていモラルも低い傾向があります。
日本人は世界的に見てもモラル意識が高く、「言わなくてもわかるはずだ」という期待値が高い傾向があります。そのためモラルとマナーの違いがあいまいのまま行動していることがよくあります。
※本稿は、『ふるまいひとつで仕事も人生もうまくいく 気づかいの神さま』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
