記事のポイント
プーマはAIを使った共創施策で、ファン参加型のユニフォーム開発を実施した。
リミックス機能と対話型UIにより、参加のしやすさと利用時間が向上した。
生成データを分析し、地域文化やファン嗜好の把握につなげている。


プーマ(Puma)は、コミュニティとの共創を活用し、顧客から学びながらエンゲージメントを高めることに成功している。

1月、プーマは「AI Creator」プラットフォームを再始動した。2024年に初めて導入されたAI Creatorは、ファンがプーマと共に公式サッカーユニフォームを共同制作できるプーマの生成AIプラットフォームである。

今回で第2弾となるAIを活用したユニフォームデザイン体験では、ユーザーがデザイン案を投稿でき、なかから選ばれた1点が、フランスのサッカークラブであるオリンピック・マルセイユ(Olympique de Marseille)の2027〜2028シーズンのサードユニフォームとして正式採用される仕組みとなった。

2週間で35000人を超えるユニークユーザーが参加し、平均セッション時間は8分以上に達した。ファンはユニフォームのデザイン、リミックス、投票に多くの時間を費やした。

現在、コンテストのデザイン投稿期間は終了しており、今後1カ月間はファンによる投票期間となる。

前回から進化したAI Creatorが高いエンゲージメントを記録



イングランドのサッカークラブ、マンチェスター・シティ(Manchester City)を題材にした2024年の初回プログラムと比べると、今回の取り組みはエンゲージメントがより高かった。

ファンの制作したユニフォームデザイン数は3.5から5に増加し、投稿されたユニフォーム評価数は約100万件に達した。参加者ひとりあたりの平均投票回数は約25回だった。

また、新たに導入されたリミックス機能は、ゼロからデザインを作るのではなく既存デザインを修正できるもので、約15000回利用された。

プーマでエマージング・マーケティングテックを統括するイワン・ダシュコフ氏は、この新しいリミックス機能が、プラットフォームの使い方を意図的に変えたものだと語る。

「マンチェスター・シティのときは、プロンプトを書かなければならなかった」と同氏は言う。

「ある意味で、ユーザーにとっては不安が大きかった。最初から大きなアイデアをひねり出さなければならない感覚だったからだ」。

リミックス機能と対話型UIが参加ハードルを下げた



一方、マルセイユ版では、ガイド付きの対話型インターフェースを採用し、色や柄、スタイルなど創作上の選択肢を段階的に提示することで、ユーザーが時間をかけてアイデアを磨けるようにした。

このデザイン変更によって参加のハードルが下がり、実験的な試みが促進された。

「今回は入力する人が増えて、より快適に使えるようになった」とダシュコフ氏は言う。

マンチェスター・シティはソーシャルプラットフォーム全体で世界に1億7〜8000万人のフォロワーを持つ一方、オリンピック・マルセイユのグローバルフォロワー数は1000万〜1500万人規模である。

それを踏まえると、今回の結果の意義はなおさら大きい。

AI Creatorはファン嗜好を把握するデータ基盤としても機能



エンゲージメントにとどまらず、AI Creatorはプーマの事業全体にとって洞察の源にもなっている。同社は、ユーザーが入力したプロンプトの言語、選択された色、繰り返し登場するビジュアルテーマを分析し、ファンや地域ごとの嗜好をより深く理解しようとしている。

「データの観点では、人々が好む色や、プロンプトで頻出する共通の言葉など、多くの情報を得ている」とダシュコフ氏は述べる。

マルセイユ版では、アニマルプリント、迷彩柄、グラフィティ風のグラフィックが人気を集めた。ダシュコフ氏は、こうした傾向を地域文化と結びつけて説明する。

マルセイユはグラフィティ文化との結びつきで知られており、クール・ジュリアン(Cours Julien)や歴史地区のル・パニエ(Le Panier)など、多くのエリアでこのアートスタイルを中心とした強固なコミュニティが形成されている。

ファン投票とオムニチャネル施策で企画を展開



ファンがデザインしたマルセイユのユニフォームは、2027〜2028シーズンに実際の試合で着用され、公式ユニフォームとして一般販売される予定である。

プーマとマルセイユはまず社内で優秀なデザインを最終選考し、1カ月かけて全世界に一般投票を実施する。

今回のAI Creatorコンテストは、主にマルセイユ側のチャネルを通じて告知された。クラブは公式Webサイトやソーシャルメディアでプロモーションを行い、プーマはそれを補完する形で小規模な有料メディア、インフルエンサー施策、地元紙への掲載を含む従来型広告を展開した。

株主構成の変化と事業再編が進むプーマの転換期



マルセイユでの施策は、プーマにとって企業変革の最中に行われた。

1月には、アンタ・スポーツ(Anta Sports)が、プーマの筆頭株主であるアルテミス(Artemis)から同社株29%を1株あたり約41ドル(約6150円)で取得することで合意し、取引総額は約18億ドル(約2700億円)と評価された。

これにより、アンタはプーマ最大の株主となった。この取引には、15カ月以内により高い買収提案が現れた場合に適用される価格保護条項が含まれているが、アンタはプーマ全体を買収する計画はないとしている。

業績立て直しとAI共創の横展開で成長回帰をめざす



また今月2日には、プーマはアスリート向けのパフォーマンストレーニングに特化した独立したトレーニング事業部門を立ち上げた。

これは、昨年10月に示された2025年の戦略再構築後の移行期間を進むなかでの動きである。

2025年は、二桁台の売上減少、利益率の圧迫、在庫の増加に見舞われた。現在、同社はコスト削減、流通の効率化、優先成長カテゴリーへの再集中を進め、2026年の業績安定化と2027年の成長回帰をめざしている。

「我々には、プーマを世界トップ3のスポーツブランドとして確立する明確な野心がある」と、プーマのCEOであるアーサー・ホールド氏は、戦略リセット発表時に語った。

今後について、プーマはAI Creatorをほかのクラブや競技へ拡大し、共創の取り組みを事業の他領域にも広げていく考えだと、ダシュコフ氏は述べている。

[原文:Puma is fueling engagement and community feedback with an AI platform centered on co-creation ]

Zofia Zwieglinska(翻訳、編集:藏西隆介)