ラオスのホテルで買春盗撮、60代男性に懲役3年求刑 法廷で明かされた「驚きの手口」と弁明
東南アジアのラオスのホテルで、計6人の女性との性行為の様子を密かに撮影したとして、性的姿態等撮影罪に問われた60代男性被告人の論告求刑公判が1月中旬、名古屋地裁で開かれた。検察官は懲役3年を求刑した。
性的姿態等撮影罪は、盗撮に対する厳罰化による抑制を目的として施行された。警察庁の発表によると、盗撮による検挙件数は毎年、過去最多を更新している。
今回のケースで、被告人は余罪も含めると約30件の同様の犯行に及んだと供述している。
検察官からは、盗撮癖の疑いを踏まえた治療を勧められたが、被告人は犯行動機について「カメラの性能を確かめたかった」と述べ、依存性を否定した。その認識に疑問が残る。
他にも法廷で明らかにされた驚くべき犯行の実態をレポートする。(裁判ライター・普通)
●6人の女性と性行為する様子を撮影した
被告人は60代半ばの男性。短く刈り上げた髪は白く、前科はない。
初公判では戸惑うような仕草も見られたが、40年以上にわたり会社員として社会生活を送ってきた経験からか、次第に裁判の流れに順応し、自らの主張を展開していった。
起訴状によると、被告人は昨年3月、ラオス国内のホテルで、約10日のうちに計6人の女性と性行為をする様子を、部屋に密かに設置した5〜6台の撮影機器で動画撮影していたという。
被告人は起訴事実を認めている。
●6種類の特殊なカメラを用意して盗撮
検察官の冒頭陳述などによると、被告人は大学院を卒業後、40年以上会社勤めをし、65歳で退職。離婚して、事件当時は母親と同居していた。事件後には、姓を変える目的で養子縁組もしていた。
被告人は再婚相手を探す目的でミャンマーにたびたび渡航。その過程で、ミャンマーやラオスで買春をおこない、やがて、その行為を盗撮するようになったという。
カメラは日本から持ち込み、置き時計型、天井型、ティッシュボックス型など、6種類の特殊なカメラを用意していた。
被告人と買春情報を交換していた人物の供述によると、「10人以上、バレていない」「盗撮方法を教える」といった発言を被告人から受けたことがあるという。
押収された動画フォルダには「年月日」「ラオス◯人目」「氏名」「年齢」などが整理され、別のメモには「年齢、年月日、何人目、名前、金額、女性の特徴、性行為の内容」などが記されていたという。
●「撮りたかった以上でも以下でもない」変遷する主張
被告人は取り調べで、買春の際は18歳くらいの女性を探していたこと、撮影について女性の同意を得ていなかったことを認めている。
一方、動機については「撮りたかった以上でも以下でもない」「自分の身体を撮るため」「カメラ技術の優れた映像を撮りたい」など、さまざまな言い分を展開したという。
弁護人からは反省文のほか、ラオスの児童に対する教育普及を目的としたNPO法人に100万円を寄付したことを示す資料などが提出された。
●撮影データはSSDに移行して…
弁護人の質問により、被告人の渡航歴や目的が詳しく明らかにされた。
被告人はインターネット上で「夜遊びガイド」と称するサイトを見つけて以降、海外で買春をするようになった。
ラオスには約20回渡航し、ミャンマーやフィリピンにも足を運んでいたという。その理由については「素朴でやさしく、東洋系の女性に会いたい」と述べた。
買春目的であることは率直に認める一方で、撮影の目的については、法廷でも「性的目的は一部であり主たる目的は違う」と主張。弁護人の質問に「演技ではなく女性の自然の姿を映したかった」「優れた映像を撮りたかった」などと答えた。
撮影したデータはSSDに移行していた。その理由について被告人は「小型カメラのマイクロSSDでは1〜2人でいっぱいになるので、移さざるを得ない」と説明した。データを蓄積する意図がうかがえる。
しかし、「日本に帰国したら消去していた」という。移行するのはあくまでルーティーンで、見返したり、他人に譲渡することはなかったとも主張した。
被告人は「盗撮行為は二度としない」と誓ったものの、撮影理由の説明は理解に苦しむ点が多く、何をどこまで反省しているのかは判然としない印象を残した。
●「少しくらいは許されるだろうと軽視してしまった」
検察官は、被告人の行為が性的目的によるものであることを立証しようとした。
検察官:撮影したデータは見返したことないんですか?
被告人:ないです。
検察官:優れた映像を撮りたいんですよね?うまく撮れてるか検証できないのでは?
被告人:SSDに移行する中で、小さなサムネで概略を確認していたので。
検察官:撮影技術を磨いて、何かに役立てたいとかあるんですか?
被告人:優れた映像を撮りたいという目的で撮っているとしか言えない。
話題は、撮影された女性の人権侵害へ移った。被告人は当時も意識していたとしながら、「少しくらいは許されるだろうと軽視してしまった」と述べた。
「なぜ許されると思うのか?」と問われると「言葉では難しい」と答えに詰まり、事件に向き合えているか疑問を呈される場面もあった。
●「離婚によって『タガが外れた』ことが原因だ」
検察官からは、盗撮に限らず、物事に依存する精神疾患があることが説明された。しかし、被告人は「いつでもやめられると思っている」と述べ、依存性を否定した。
60代半ばまで前科のなかった被告人が、なぜ繰り返し犯行に及んだのかについては、離婚によって「タガが外れた」ことが原因だと自己分析しているという。
検察官:その感情は盗撮で解消されるんですか?
被告人:いいえ。
検察官:解消されないのに、なんで続けるんですか?
被告人:ルーティーン化してしまい、一度したことを継続しやすい性格なんです。
繰り返される盗撮行為を「継続しやすい性格」と表現されては、やはり盗撮行為や盗撮された女性を軽視していると感じざるを得ない。
最後に裁判官が問いかけた。
裁判官:優れた映像を撮りたいって言うけど、なんで盗撮である必要があったんですか?
被告人:きれいな画像を撮りたいと思って、それがたまたまラオスであったということ。
最後まで、被告人はその姿勢を崩さなかった。
●「不合理な弁解に終始している」懲役3年を求刑
検察官は、盗撮機器をわざわざ海外に持ち込んだ点について、犯行は巧妙かつ計画的で、短期間で繰り返された常習性が認められると指摘。
「性癖の歪みは深刻で、不合理な弁解に終始しており、反省が不十分である」として、懲役3年を求刑した。
一方、弁護人は、長年まじめに働いてきた被告人が離婚をきっかけに精神的に不安定になったことが根本原因だと主張。精神の安定を図ることで再犯防止と、女性への接し方の考えの誤りも正せるとして、寛大な処分を求めた。
