記事のポイント
サブリナ・カーペンターの香水ブランドは、マス価格戦略でファン層を広げ、年商100億円規模まで成長した。
D2Cと量販を併用し、倉庫整備によって国際配送の非効率を回避した。
54市場展開を基盤に、ブラジルなど新興国へ本格的な拡張を進めている。


3月、サブリナ・カーペンターは南米で開催される音楽フェス「ロラパルーザ2026」でヘッドライナーを務め、ブラジル・サンパウロ公演では初日に出演する予定だ。

そしてブラジルのファンにとって幸運なことに、間もなくサブリナのフレグランスラインも現地で購入できるようになる。

米国の成功を足がかりに進むグローバル展開



「米国では大きな成功を収めてデビューした。ウォルマートで非常に好調なビジネスを築いた。現在はアルタビューティー(Ulta Beauty)を含む、米国のすべての主要小売業者で展開している」と語るのは、サブリナやカイリー・ミノーグのセレブリティフレグランスを手がける開発会社セント・ビューティー(Scent Beauty)のCEO、スティーブン・モーモリス氏である。

モーモリス氏によると、サブリナの香水ブランドは2025年時点で54市場に展開しており、2026年初頭にはブラジルを含むさらなる国への拡大を計画しているという。

「おそらく、世界中のあらゆる市場に進出することになるだろう」と同氏は付け加えた。

音楽キャリアの飛躍と連動するフレグランスの急成長



セント・ビューティーは2022年、サブリナ初の香水「スウィート・トゥース バイ サブリナ・カーペンター(Sweet Tooth by Sabrina Carpenter)」を発売した。

それ以降、フルーティーな「チェリー・ベイビー(Cherry Baby)」やコーヒーを効かせた「ミー・エスプレッソ(Me Espresso)」などの新作を次々と投入してきただけでなく、自身も元ディズニーの子役から、ポップ界を代表する存在へと成長した。

2025年には「ショート・アンド・スウィート・ツアー(Short n' Sweet Tour)」で売上7740万ドル(約116億1000万円)を記録し、7作目のスタジオアルバム「マンズ・ベスト・フレンド(Man’s Best Friend)」は8月にビルボードチャートで初登場1位を獲得、11月にはプラチナ認定を受けた。

フレグランス事業も同様に成長している。イーピットデータ(YipitData)によると、サブリナのフレグランスは2025年に米国で1100万ドル超(約16億5000万円)の売上を達成し、2024年比で10%増加した。

モーモリス氏によれば、2025年のグローバル小売売上高は1億ドル(約150億円)を突破し、前年比で60%以上の成長を遂げたという。

甘くポジティブな香りが時代のムードを捉えた理由



そして2026年、ブランドは本人と同様、世界的な存在感の拡大をめざしている。ブラジルだけでなく、メキシコ、インド、スリランカといった国々への進出も含まれる。

「サブリナは世界的な現象だ。我々はそれを最大限に活用している」とモーモリス氏は語る。

近年、セレブリティフレグランスの人気は浮き沈みを繰り返してきた。セレーナ・ゴメスやヘイリー・ビーバーといった人物は、名声を生かす場として香水よりもメイクアップラインに軸足を移している。

しかしサブリナの香水は、手頃な価格帯で「歯が痛くなるほど甘い」グルマン系フレグランスのトレンドをしっかりと捉えてきた。

「現在のフレグラン市場には、ポジティブさへの回帰がある。サブリナはそれを体現している」とモーモリス氏は言う。

「政治的分断などで世界が混沌としている、ということもできるだろう。人々は楽しく、ある種の逃避となるビューティープロダクトに安らぎを求めている。サブリナのフレグランスもまさにそうした存在だと思う」。

マス市場で築いた価格戦略と差別化ポジション



オリジナルの「スウィート・トゥース」は、現在もブランドでもっとも売れているSKUである。しかしモーモリス氏によれば、2026年の注力対象は最新作「レモン・パイ(Lemon Pie)」を国際市場へ広げることだという。

レモン・パイは12月に発売され、バターイエローのトレンドに乗る形で、バター風味のグラハムクラッカーやキャンディ状のレモンピールといった香りのノートを特徴としている。

ゴメスやビリー・アイリッシュといったほかのポップアイコンも、2025年にフレグランス事業を拡大した。

ゴメスは7月、自身のレアビューティー(Rare Beauty)ブランドの一環として初のオードパルファムを発売。アイリッシュは11月に5作目の香水「ユア・ターン II(Your Turn II)」を発売し、12月にはセフォラ(Sephora)のオンラインストアでの取り扱いを開始した。

ただし、近年のセレブリティフレグランスが高価格帯を狙う傾向にあり、アイリッシュの最新作は90ドル(約1万3500円)で販売されている。

一方、スイスの香料大手Dsmフィルメニッヒ(Dsm-Firmenich)が製造するサブリナの香水は、主にマス市場にとどまっている。

2022年にウォルマートでデビューした際は、30ミリリットルボトルが29.99ドル(約4500円)だった。10月にアルタへ拡大した際には、75ミリリットルサイズを55ドル(約8250円)で投入し、チョコレートバーを模したボトルのミニサイズ「バイトサイズ」版を20ドル(約3000円)で展開した。

ツアー効果で加速する販売と消費者接点の拡大



「彼女のファン層に、より手に取りやすい価格で届けることを決めた。安すぎる価格ではないが、ほかのセレブリティよりは低めだ。その分、より多くのファンにリーチできると考えた」とモーモリス氏は語る。

「この戦略の価値は、非常にラグジュアリーなプロダクトをマス市場に持ち込めた点にある。その後、サブリナがよりスタイルアイコンとして、ラグジュアリーコードを体現する存在へ進化するのを見て、特に海外展開では、大容量サイズなどを通じて、プレステージやマスティージ価格へ引き上げる余地があると判断した」。

ポップ界最大級のツアーのヘッドライナーを務めたことも、香水の売上を後押しした。

後払い決済プラットフォームのクラーナ(Klarna)によると、サブリナの「スウィート・トゥース」は、2025年のブラックフライデー週末におけるビューティー売上トップ10に入った唯一のセレブリティフレグランスだった。

クラーナによれば、2025年でもっとも売上が高かった月は2月だった。また10月から11月にかけて売上は95%増加しているが、これは10月下旬に米国公演の「ショート・アンド・スウィート」ツアーが再開された時期と重なる。

セント・ビューティーは、アルタのようなチャネルを通じてメキシコなどの新市場へ進出する一方で、国際市場の消費者に直接届けるため、D2Cのサプライチェーン強化も進めているとモーモリス氏は述べる。

南米やアジア、さらに欧州や中東でも工場や倉庫を構築し、サブリナを世界的に巨大なブランドへと成長させなければならないという、非常に大きなオペレーション上の課題がある」と同氏は語る。

D2Cと供給網整備でめざす真のグローバルブランド化



モーモリス氏によれば、セント・ビューティーは2024年に「スウィート・トゥース バイ サブリナ・カーペンター」のオンラインD2Cプラットフォームを立ち上げ、2025年には英国とオランダに倉庫を開設し、欧州および中東市場への供給体制を整えた。

同氏は、自社サイトを通じて国際配送を行う点がフレグランス業界において同ブランドの独自性だと語る。

「他社でも『世界対応サイト』を展開している例はある。しかし実際には、他国の注文がすべて米国から発送され、高額な送料が発生するケースが多い。それではサブリナブランドの価値を損なってしまう。我々はそれを望まなかった」と同氏は説明する。

こうした国際的な成長を背景に、モーモリス氏は、サブリナがセレブリティフレグランスの枠を超え、フレグラン市場全体を代表する存在になり得ると考えている。

「サブリナ・カーペンターは市場でもっとも強力なブランドのひとつになると信じている」と同氏は語る。

「そのレベルに到達したセレブリティは、これまでほんの一握りだ。そしてサブリナは、そのひとりになると思っている」。

[原文:Inside Sabrina Carpenter’s plan for global fragrance domination]

Emily Jensen(翻訳、編集:藏西隆介)