怪物グラスワンダー スペシャルウィークとの壮絶な叩き合いを4センチ差で制す【思い出に残る有馬記念】

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第44回有馬記念 グラスワンダー スペシャルウィークの叩き合いを制して優勝(c)SANKEI

今年で70回目を迎える有馬記念が12月28日(日)に開催。それに先駆けてYoutubeチャンネル「テレビ東京競馬チャンネル」では総勢20名のホースマンに「思い出の有馬記念」について深堀り!

今回は四半世紀以上の競馬歴を誇るライター・福嶌が最も印象に残っている1999年の有馬記念をピックアップ。

憎たらしいくらいに強い"怪物"

スペシャルウィークのファンだった筆者から見れば、グラスワンダーは「憎たらしいほど強い馬」だった。

思えば最強世代と称されたこの世代の中で最も早く名を売ったのはグラスワンダーだった。

2歳の秋口にデビューするとトントン拍子で3連勝。2戦目のアイビーSで記録した勝ち時計は古馬並みの速さで、重賞初制覇となった京成杯3歳Sは2着に6馬身差を付けるブッチギリ。

この調子だから、世代最初のチャンピオンを決める朝日杯3歳Sも楽勝。

2歳レコードを更新するどころか、古馬の準オープン戦よりも0.7秒も速いというのだから「怪物」というキャッチフレーズそのまま。

栗毛でピカピカに光る筋骨隆々な馬体も未来のスターホースにふさわしいものだった。

だが、グラスワンダーは3歳になると骨折で戦線離脱。秋の毎日王冠から復帰するも、強引すぎる早仕掛けで見せ場を作るも、サイレンススズカの5着。

続くアルゼンチン共和国杯は各賞を期して迎えたが、まさかの6着。2歳王者にありがちな早熟馬と思われたためか、この年の有馬記念では4番人気に甘んじるも直線で一気に突き抜けて復活勝利。怪物が怪物たるゆえんを見せた。

そんな"怪物"グラスワンダーが、スペシャルウィークとの初対戦となったのは4歳の宝塚記念でのこと。

この時は安田記念で2着に敗れたグラスワンダーよりも天皇賞(春)を勝ったスペシャルウィークの方が上に見られていたが、結果はグラスワンダーの圧勝。

先に仕掛けたスペシャルウィークを直線半ばで捕まえると、そこから3馬身差を付けてブッチギった。

常に90点以上のレースを見せるスペシャルウィークに比べ、グラスワンダーは50点もあれば120点を叩き出すこともあるというように爆発力のある走りが身上。

それも強い馬と走るGⅠでこそMAXの力を引き出す。だからこそ憎たらしいくらいに強いというイメージが色濃く残っているのだろう。

そんなグラスワンダーの"らしさ"が全開になったのが1999年の有馬記念だった。

壮絶な叩き合いを4センチ差で制する

宝塚記念後、グラスワンダーはジャパンCを目標に調整され、秋緒戦の毎日王冠を勝利。

ジャパンCへ向けて調整されたが、左脇腹に筋肉痛を発症してまさかの回避。グラスワンダー不在となったジャパンCはスペシャルウィークが日本総大将として、凱旋門賞馬モンジューを破った。

それから1カ月後の有馬記念。すっかり故障も癒えたグラスワンダーは連覇が懸かる有馬記念へ出走。このレースで引退となるスペシャルウィークとの2度目の対決を迎えた。

宝塚記念での圧勝が利いたのか、当日の単勝オッズではグラスワンダーが2.8倍の1番人気に推されたが、天皇賞(秋)、ジャパンCを連勝して臨戦過程では上回るスペシャルウィークも3.0倍とほぼ拮抗。

GⅠ馬が7頭もいる豪華な一戦だったが、この2頭の一騎打ちというのが大方の見方だった。

そんなレースはゴーイングスズカが逃げて、グラスワンダーは14頭中11番手、スペシャルウィークは最後方からという揃って後方から進めることに。

前半の1000mが65秒2という超の付くスローペースで後方にいる馬には不利な流れとなったが、グラスワンダーと鞍上の的場均は3コーナーから動き始めると、スペシャルウィークと武豊も同時に動き始めるという、半年前の宝塚記念とは逆の動きになった。

そうして迎えた直線。先に抜け出していたツルマルツヨシとテイエムオペラオーを直線半ばで交わして先頭に立つと、その外にスペシャルウィークが迫ってきた。

残り100m。2頭は壮絶な叩き合いとなり、そのまま馬体を併せたままゴール。

ゴール直後はどちらが勝ったか全くわからない状態だったが......写真判定の結果、グラスワンダーが4センチだけ先に出ていたところでゴールを迎え、スペシャルウィークの追撃をハナ差交わしての勝利となった。

同い年のライバルが見せた最後の100mに及ぶ壮絶な叩き合い――

この雄姿は今もなお筆者の記憶に残り続けているし、たった4センチ差とは言え、グラスワンダーが先着していたというのは本当に悔しかった。

これぞまさに120点の走り、憎たらしいほど強い"怪物"グラスワンダーらしいレースだったと言えるだろう。


■文/福嶌 弘

※Youtubeチャンネル「テレビ東京競馬チャンネル」では配信限定コンテンツ「ホースマンたちの思い出に残る有馬記念は?」を配信中!

競馬界のレジェンド・武豊や調教師試験に合格したばかりの和田竜二、そして池江泰寿調教師や前川恭子調教師など総勢20名のホースマンが思い出の有馬記念について語ってくれました。詳細はこの動画をチェック!

URL:https://www.youtube.com/watch?v=rlODKKM37WQ


■第70回有馬記念(GI)枠順
2025年12月28日(日)5回中山8日 発走時刻:15時40分

枠順 馬名(性齢 騎手)
1-1 エキサイトバイオ(牡3 荻野極)
1-2 シンエンペラー(牡4 坂井瑠星)
2-3 ジャスティンパレス(牡6 団野大成)
2-4 ミュージアムマイル(牡3 C.デムーロ)
3-5 レガレイラ(牝4 C.ルメール)
3-6 メイショウタバル(牡4 武豊)
4-7 サンライズジパング(牡4 鮫島克駿)
4-8 シュヴァリエローズ(牡7 北村友一)
5-9 ダノンデサイル(牡4 戸崎圭太)
5-10 コスモキュランダ(牡4 横山武史)
6-11 ミステリーウェイ(セ7 松本大輝)
6-12 マイネルエンペラー(牡5 丹内祐次)
7-13 アドマイヤテラ(牡4 川田将雅)
7-14 アラタ(牡8 大野拓弥)
8-15 エルトンバローズ(牡5 西村淳也)
8-16 タスティエーラ(牡5 松山弘平)
※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。

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