「どこでもXbox」のマイクロソフトに対し、PCゲームの王者バルブが打ち出した強力な一手
「どこでもXbox」。マイクロソフトは過去数年にわたって、そう繰り返してきました。スマホやテレビ、Wi-Fiさえあれば、重たいゲーム機がなくても「ネット経由の配信(クラウド)」でゲームが遊べるのは、快適だし便利ですよね。いい戦略だと思います。
しかし、PCゲームの王者・Valve(バルブ)は、全く別の、そしてもっと強力な答えを用意していました。通信速度を気にせず、手元のスマホやVRゴーグルで、ゲームをそのまま動かしてしまう魔法。その正体は、彼らが7年以上かけて育ててきた「FEX」という技術です。
狙いは同じだけど「やり方」が正反対
マイクロソフトとバルブの目的は同じです。「自社の店(ゲームパスやSteam)でお金を使ってほしい」ということ。でも、その考え方は正反対なんですよね。
マイクロソフトは「ゲーム機は持ってなくていい。配信するから月額料金を払ってね」という考え。一方のバルブは「ネットに頼るな。手元のスマホやゴーグルの中で買ったゲームを直接動かそう」という主張です。
マイクロソフトの世界20万人という社員に対し、バルブはわずか350人。その少人数の精鋭たちが、クラウド全盛の時代に「逆張り」の仕込みを続けてきました。
そもそも「FEX」とは何なのか?
FEXを一言で説明するなら、「超高性能な同時通訳システム」です。
本来、パソコン用のゲームは、スマホのような省エネ重視の部品(ARMという設計図)の上では一歩も動きません。「話す言葉」が根本的に違うからです。
FEXは、この「言葉の違い」をリアルタイムで翻訳します。ゲームがパソコン語で出した命令を、瞬時にスマホ語へ変換する。これによって、本来は対応していないはずの機械で、パソコン用ゲームが「自分の力」で動き出すのです。
実を結んだ「7年の沈黙」と最新VR
「そんなの本当にできるの?」という疑問への答えが、先日発表された新型VRヘッドセット「Steam Frame」です。
このゴーグルの中身は、実のところ「高性能なスマホ」に近い部品(Snapdragon)で構成されています。普通ならパソコン用ゲームは動きませんが、バルブは、「FEXがあるから大丈夫」と宣言しました。
この力強い発言に業界は「おお〜〜〜」と歓喜。というのも、バルブはすでに「Proton(プロトン)」という、Windows用ゲームを別のシステム(Linux)で動かすための技術を成功させているんです。今や2万本以上のゲームを動かすことに成功しているProtonの存在を知っている人たちからすれば、FEXにも期待が寄せられるというわけ。
それにしても、なぜ「配信」じゃダメなのか
今、ゲームを取り巻く環境は厳しさを増しています。
通信費やサービス料の値上げ高騰し続けるPCパーツの価格メモリ不足によるデバイスの価格上昇マイクロソフトが推進するクラウドは、ネットが遅いと画面がガクガクになり、自分の思い通りに操作できないストレスがあります。
一方、バルブがFEXで目指すのは、「自分のゲームを、自分の手元の機械で、電波に左右されずに遊ぶ」という自由なんです。
さて、どちらのアプローチがゲーマーの支持を得るのでしょう。ネットさえあればいいマイクロソフトか、手元の機械を賢くするバルブか。
FEXという技術は、ユーザーが普段意識することはありません。しかし、気づかないうちに「スマホで最新のPCゲームがサクサク動く」という、本来ならあり得ないことを実現しようとするクレイジーさはドラマチックだし、応援したくなるのは私だけではないはずです。
Source: Steam Frame
