矢板中央で2つの武器を磨き続ける永井。写真:安藤隆人

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 矢板中央と言えば、屈強なフィジカルを誇り、正確なキックと攻守の切り替えの速さ、球際の強さ、労を惜しまぬハードワークができる選手の育成に定評がある。これまで富山貴光(大宮)、稲見哲行(東京V)、松井蓮之(仙台)、白井陽貴(長崎)、大畑凛生(法政大/清水内定)など多くのJリーガーを輩出している。

 そして今年のチームの象徴的な存在となっているのが、キャプテンの右サイドバック永井健慎だ。

 177センチのサイズで太い首と分厚い胸板、がっしりとした下半身。見るからに対人が強く、ハードマークができる選手に映るが、彼の武器はそれだけではなく、華麗な足技のドリブルも兼ね揃えている。

 その技術レベルの高さを証明したのが、昨年度の選手権1回戦・岡山学芸館戦だった。【3−4−1−2】の右ウイングバックで先発した永井は、1−0で迎えた77分、右タッチライン付近でボールを受けると、鮮やかなダブルタッチでマークに来た2人の間を打ち抜き、さらにペナルティエリア内でもスピードに乗った状態でもう1人のDFを鋭い切り返しでかわすと、中央でフリーのFW堀内凰希へ横パス。これを堀内がダイレクトで蹴り込んだ。

 圧巻の3人抜きドリブルにフクダ電子アリーナはどよめいた。そしてキャプテンになった今年、プリンスリーグ関東1部の第4節・帝京戦でも、岡山学芸館戦でのプレーを彷彿させる鮮やかなドリブルで決勝弾を演出した。
 
【4−4−2】の右サイドバックに入った永井に対し、帝京はFWの宮本周征を左サイドハーフに起用して、永井の攻撃参加を封じる手を打ってきた。前半は守備がメインとなったが、宮本と何度もバチバチのマッチアップを見せて、無失点に貢献する。

 そしてスコアレスで迎えた84分、右タッチライン付近で横パスを受ける際、寄せてきた帝京MF西島廉人をファーストタッチで剥がして加速。進路を塞いできたDF田中菱を高速シザーズからの左アウトサイドタッチでかわし、さらにその瞬間に奪いに来た西島をもう一度、左アウトサイドタッチでかわして顔を上げた。

「ファーに岡(琉生)がフリーで走り込んでいるのが見えた」と、左足で山なりのクロスを送り込んだ。これを岡がヘッドで折り返し、最後はMF金井大翔がダイビングヘッドでゴールに突き刺した。

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「前々節も前節も、あまり自分が攻撃参加をする機会がなくて、今日は無理やりにでも前に出ようと思っていたので、結果につながって良かったです」

 こう勇ましく語る永井は、大宮アルディージャU-15出身。「僕は異質の存在だったと思います」と笑うように、屈強なフィジカルを持ったファイターであり、ハードマーカーだった。その一方で、小学生の頃からドリブルを自主練でひたすら磨いていた。

「自分のことをドリブラーという部類だとは思っていませんが、ドリブルがシンプルに好きなんです。でも、フィジカルを評価されることが多くて、中学1、2年生の時はセンターバックをやっていました。中3でサイドバックにコンバートしてから、攻撃参加でドリブルを出せるようになって、ここが自分の天職だ、と思いました」
 
 ゴリゴリのフィジカルから繰り出されるテクニカルかつ切れ味鋭いドリブル。大宮U-15で異彩を放ったが、U-18には昇格できず。当時はひどく落ち込んだというが、そのなかで矢板中央が熱心に誘ってくれたことで、「(返事は)即答でした。もう拾ってもらった感覚でした」と新たなチャレンジを決意した。

「周りからも『矢板中央はプレースタイルに合っている』と言われ、ここで自分のフィジカルとドリブルをさらに磨いて成長したいと強く思いました」

 理想像は鹿島アントラーズの濃野公人。昨年は9ゴールをマークしたJリーグ屈指のサイドバックに心酔し、何度も動画を見ている。

 フィジカルとドリブルの二刀流サイドバックとして、永井はこれからも労を惜しまぬハードマークとテクニカルなドリブルを披露し、観客をどよめかせながらチームの勝利に貢献していく。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)