鉄拳、“素顔公開”の反響に喜び 『べらぼう』絵師役でベテラン俳優の風格 浮世絵の猛特訓も明かす
●現場で鉄拳だとなかなか気づいてもらえず「みんな半信半疑な顔を」
お笑い芸人の鉄拳が、1月26日に放送される『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合 毎週日曜20:00〜ほか)の第4回「『雛形若菜』の甘い罠(わな)」で大河ドラマ初出演を果たす。パラパラ漫画で知られる鉄拳が本作で演じるのは、蔦重初期の錦絵「雛形若菜初模様」を手掛けた浮世絵師・礒田湖龍斎。鉄拳にインタビューし、本作出演の心境や浮世絵の特訓など話を聞いた。

鉄拳
本作は、江戸時代中期の吉原で、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く物語。横浜流星が蔦重を演じ、脚本は『おんな城主 直虎』(17)以来8年ぶり2度目の大河ドラマとなる森下佳子氏が手掛ける。
戦国ものが好きで大河ドラマをよく見ているという鉄拳は、本作のオファーに「こんな名誉な事はもうないだろう」と思い、出演を決意。お笑い芸人になる前に劇団東俳に入団していた時期もあり、当時の自分にとっては夢のような大河ドラマへの出演が叶った。
「俳優にもなってみたいと思っていたので、劇団東俳に合格して入ったんですけど、先生に『君は滑舌が悪いから俳優には向いてない』と言われて。その時に初めて滑舌が悪いというのがわかって、俳優には向いてないんだなと思って諦めました。あの時の先生に『大河ドラマに出るんだよ』って言いたいです(笑)」
白塗りメイクでおなじみの鉄拳だが、本作では素顔で礒田湖龍斎を演じている。劇中カットが公開されると、「鉄拳の素顔を初めて見た」という声が続出。鉄拳自身は素顔を見せることに若干抵抗はあったものの、それよりも出演したいという思いが勝ったという。
「『情熱大陸』や月9ドラマでも素顔を出していたので、特に問題はなかったです。もうおっさんだし、あまり見せたくないとは思いましたが、大河ドラマにめちゃくちゃ出たかったので、これチャンスだなと。出たい方が勝ちました」
素顔で出演する必要がある場合は、意外とすんなりOKするそうだ。
「鉄拳でいいんだったら鉄拳でいいんですけど、『素顔を出してください』って言われたら意外と出しますから(笑)。もともとは父に(芸人をやっていることを)バレないためにメイクしたんです。父がお笑い芸人が大嫌いだったので、隠すためにメイクをして始めたのがきっかけで、父にはもうバレていますし、近所の人にもみんなバレているので、問題はないです」
本作への出演は父親にも報告。「照れていましたね。ちょっと半信半疑でしたが、本当は喜んでいると思います」と反応を明かし、「僕の周りの人はみんな驚いています」と話した。


礒田湖龍斎役の鉄拳 (C)NHK
素顔での大河ドラマ出演に、SNSでは「イケメン」「かっこいい」という声も。好反響に安堵したという。
「『そこまでして出たいのか』みたいな否定的な声もあるかなと思っていましたが、それがなかったのでよかったです。皆さんけっこういいことを書いてくれていましたね。『渋い』とか。うれしくて、普段しないんですけどリプライしちゃいました(笑)」
ベテラン俳優のような雰囲気が出ているが、鉄拳自身も「渋くてベテランな感じがありましたね。自分でもびっくりしました」と自画自賛。「(撮影中は)ブルブルでしたけど」と笑った。
鉄拳の素顔はあまり知られていないため、現場では共演者にもスタッフにも鉄拳だとなかなか気づいてもらえなかったという。
「みんな半信半疑な顔をしていました。ずっと反応なくて。最初に絵を描くシーンがあって、次にセリフを言うシーンがあったんですけど、その時にセリフを言ったら笑いが起きました。『あ、鉄拳だったんだ!』『本物だ!』って、たぶんその時に初めてわかったんじゃないですかね(笑)。安心しました。声も特徴があると言われるので、声で認識したんだなと思います」
●浮世絵を必死に練習「僕の使命は浮世絵を描くことだと…」

演じる礒田湖龍斎についてはオファーを受けるまで知らなかったそうで、描いた絵などを見てどんな人なのかイメージを膨らませていったという。
「女性の方の浮世絵を描いていて、初期の方なので、誰かが描いた絵を真似したということではなく、本当にオリジナルでこの方が描いたんだろうなと思います。湖龍斎さんが描いた女性の絵を、当時の女性はファッション誌のように見ていたらしくて、本当にこの人が最先端だったのかなって。妖艶な目の雰囲気とかがすごくうまい人だなと思いました」
普段はボールペンやマジックペンで絵を描いている鉄拳。筆で描くのは今回が初めてで、細く描かなければいけないという浮世絵ならではの描き方に苦労したという。
最初に描いた絵と、練習して細く描けるようになった絵を見せながら、「うまく描けているかなと思って自分で練習していたんですけど、浮世絵師の先生と一緒に練習した時に、自分の下手くそさにびっくりして、急いで家に帰って細く書く練習をしました。練習して徐々に細くしていって、最終的にこれぐらい細く書けるようになりました」と成長を語る。
自宅で約1カ月、1日4時間程度、浮世絵を猛特訓。劇中に登場する完成した作品は浮世絵師が手掛けたものだが、描いているシーンは、手元の寄りも含めてすべて鉄拳が演じている。
「僕は演技も下手くそだし、滑舌も悪いので。絵が描ける人ということで指名がかかったと思うので、絵が描けなかったら呼ばれた意味がないと思い、必死で練習しました」
出演が発表された際にも「演技は自信がない」とコメントしていた鉄拳。今回の撮影でやはり苦手だと感じたそうで、「セリフが短かったので助かりました。セリフが長かったらパニックで言えなかったでしょうね」と吐露するも、また俳優として出演したいという思いはあるようで、「一言だけだったら何でも受けます(笑)」と乗り気だった。


(C)NHK
撮影では、とにかく湖龍斎として絵をしっかり描くことに全力を注いだ。
「演じることは考えてなかったです。僕に与えられた仕事は、うまく浮世絵を描くことだと思ったので、演技は見てもらわなくてもいいと。僕の使命は浮世絵を描くことだとずっと思っていました」
これまでの活動において最も忙しかったのは、2013年度前期の連続テレビ小説『あまちゃん』で劇中アニメを手掛けていた頃。「1日20時間ぐらいパラパラ漫画を描いていて、寝ている時間がないぐらいやっていました」と振り返り、今パラパラ漫画を描いている時間は「8時間に抑えている。集中できるのが5〜6時間なので」と説明した。
ピーク時に1日20時間描いていた経験は、今回の『べらぼう』にも生きていると鉄拳は語る。
「集中力や忍耐力はついたと思います。浮世絵を細かく描くのは、1時間ぐらい練習したらすごく疲れるんですよ。それでも集中して描いていられたのは、ずっとパラパラ漫画を長い時間描いているからだなと思いました」
●「絵を描く仕事をしてきてよかった」 出演回はリアルタイム視聴

そして、自身と同じく絵を描くことを仕事にしていた湖龍斎を演じ、とても縁を感じているという鉄拳。「絵を描く仕事をしてきてよかった」という思いも語った。
「江戸時代に絵を描いて、それを仕事にしていた人物で、僕も特殊なパラパラ漫画を仕事にさせてもらっているので、今回この仕事が来た時に縁があるんだなと思いました。絵を描いてなかったらこの仕事も来なかったと思うのでよかったですね。湖龍斎さんは僕の中では伝説的な、ちょっとつながりがあるんじゃないかって勝手に感じています」
放送開始100年の節目に放送されている本作。鉄拳は「セットがすごく凝っているし、役者さんも豪華で、100年のこれにかけているなと感じました」とこれまでの放送を見た感想を述べ、そんな作品に出演することに「プレッシャーです」と吐露する場面も。
周囲から期待の声が寄せられているそうで、「みんな僕がすごく出ると思っているので、そんなに出ないよってみんなに説明したいです。『いつ出るの?』『どのぐらい出るの?』と聞かれて、『本当に一瞬だけなんだ』って毎回説明しているんですけど、ちょっとハードル高くなっちゃって。そこだけは期待しないでください(笑)」と出演シーンは少ないと強調する。
出演する第4回はリアルタイム視聴するそうで、反響も見ながら放送を楽しむつもりだ。
「悪いことは書かないでください。褒められると伸びるタイプなんで褒めてください(笑)」と呼びかけ、「『鉄拳のこういう役も見てみたい』と書いてもらって、湖龍斎さんの役が終わっても違う役で出られるように。通行人でもいいので、『別の役でも出ている』という感じになれたらうれしいです」と違う役での再登場にも意欲をのぞかせた。
■鉄拳
1972年5月12日生まれ、長野県出身。2012年、イギリスのバンドMUSEの楽曲を使用した「振り子」が公式PVに採用され、世界各地で配信。2013年、第42回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。また、2015年に「振り子」が実写映画化。2018年には「家族のはなし」が実写映画化、その後、舞台化もされた。多数アーティストのMVや、企業・自治体の動画など、現在まで数多くの作品を手がけている。YouTube「鉄拳パラパラ漫画チャンネル」で作品を公開中。
お笑い芸人の鉄拳が、1月26日に放送される『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合 毎週日曜20:00〜ほか)の第4回「『雛形若菜』の甘い罠(わな)」で大河ドラマ初出演を果たす。パラパラ漫画で知られる鉄拳が本作で演じるのは、蔦重初期の錦絵「雛形若菜初模様」を手掛けた浮世絵師・礒田湖龍斎。鉄拳にインタビューし、本作出演の心境や浮世絵の特訓など話を聞いた。

本作は、江戸時代中期の吉原で、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く物語。横浜流星が蔦重を演じ、脚本は『おんな城主 直虎』(17)以来8年ぶり2度目の大河ドラマとなる森下佳子氏が手掛ける。
戦国ものが好きで大河ドラマをよく見ているという鉄拳は、本作のオファーに「こんな名誉な事はもうないだろう」と思い、出演を決意。お笑い芸人になる前に劇団東俳に入団していた時期もあり、当時の自分にとっては夢のような大河ドラマへの出演が叶った。
「俳優にもなってみたいと思っていたので、劇団東俳に合格して入ったんですけど、先生に『君は滑舌が悪いから俳優には向いてない』と言われて。その時に初めて滑舌が悪いというのがわかって、俳優には向いてないんだなと思って諦めました。あの時の先生に『大河ドラマに出るんだよ』って言いたいです(笑)」
白塗りメイクでおなじみの鉄拳だが、本作では素顔で礒田湖龍斎を演じている。劇中カットが公開されると、「鉄拳の素顔を初めて見た」という声が続出。鉄拳自身は素顔を見せることに若干抵抗はあったものの、それよりも出演したいという思いが勝ったという。
「『情熱大陸』や月9ドラマでも素顔を出していたので、特に問題はなかったです。もうおっさんだし、あまり見せたくないとは思いましたが、大河ドラマにめちゃくちゃ出たかったので、これチャンスだなと。出たい方が勝ちました」
素顔で出演する必要がある場合は、意外とすんなりOKするそうだ。
「鉄拳でいいんだったら鉄拳でいいんですけど、『素顔を出してください』って言われたら意外と出しますから(笑)。もともとは父に(芸人をやっていることを)バレないためにメイクしたんです。父がお笑い芸人が大嫌いだったので、隠すためにメイクをして始めたのがきっかけで、父にはもうバレていますし、近所の人にもみんなバレているので、問題はないです」
本作への出演は父親にも報告。「照れていましたね。ちょっと半信半疑でしたが、本当は喜んでいると思います」と反応を明かし、「僕の周りの人はみんな驚いています」と話した。


礒田湖龍斎役の鉄拳 (C)NHK
素顔での大河ドラマ出演に、SNSでは「イケメン」「かっこいい」という声も。好反響に安堵したという。
「『そこまでして出たいのか』みたいな否定的な声もあるかなと思っていましたが、それがなかったのでよかったです。皆さんけっこういいことを書いてくれていましたね。『渋い』とか。うれしくて、普段しないんですけどリプライしちゃいました(笑)」
ベテラン俳優のような雰囲気が出ているが、鉄拳自身も「渋くてベテランな感じがありましたね。自分でもびっくりしました」と自画自賛。「(撮影中は)ブルブルでしたけど」と笑った。
鉄拳の素顔はあまり知られていないため、現場では共演者にもスタッフにも鉄拳だとなかなか気づいてもらえなかったという。
「みんな半信半疑な顔をしていました。ずっと反応なくて。最初に絵を描くシーンがあって、次にセリフを言うシーンがあったんですけど、その時にセリフを言ったら笑いが起きました。『あ、鉄拳だったんだ!』『本物だ!』って、たぶんその時に初めてわかったんじゃないですかね(笑)。安心しました。声も特徴があると言われるので、声で認識したんだなと思います」
●浮世絵を必死に練習「僕の使命は浮世絵を描くことだと…」

演じる礒田湖龍斎についてはオファーを受けるまで知らなかったそうで、描いた絵などを見てどんな人なのかイメージを膨らませていったという。
「女性の方の浮世絵を描いていて、初期の方なので、誰かが描いた絵を真似したということではなく、本当にオリジナルでこの方が描いたんだろうなと思います。湖龍斎さんが描いた女性の絵を、当時の女性はファッション誌のように見ていたらしくて、本当にこの人が最先端だったのかなって。妖艶な目の雰囲気とかがすごくうまい人だなと思いました」
普段はボールペンやマジックペンで絵を描いている鉄拳。筆で描くのは今回が初めてで、細く描かなければいけないという浮世絵ならではの描き方に苦労したという。
最初に描いた絵と、練習して細く描けるようになった絵を見せながら、「うまく描けているかなと思って自分で練習していたんですけど、浮世絵師の先生と一緒に練習した時に、自分の下手くそさにびっくりして、急いで家に帰って細く書く練習をしました。練習して徐々に細くしていって、最終的にこれぐらい細く書けるようになりました」と成長を語る。
自宅で約1カ月、1日4時間程度、浮世絵を猛特訓。劇中に登場する完成した作品は浮世絵師が手掛けたものだが、描いているシーンは、手元の寄りも含めてすべて鉄拳が演じている。
「僕は演技も下手くそだし、滑舌も悪いので。絵が描ける人ということで指名がかかったと思うので、絵が描けなかったら呼ばれた意味がないと思い、必死で練習しました」
出演が発表された際にも「演技は自信がない」とコメントしていた鉄拳。今回の撮影でやはり苦手だと感じたそうで、「セリフが短かったので助かりました。セリフが長かったらパニックで言えなかったでしょうね」と吐露するも、また俳優として出演したいという思いはあるようで、「一言だけだったら何でも受けます(笑)」と乗り気だった。


(C)NHK
撮影では、とにかく湖龍斎として絵をしっかり描くことに全力を注いだ。
「演じることは考えてなかったです。僕に与えられた仕事は、うまく浮世絵を描くことだと思ったので、演技は見てもらわなくてもいいと。僕の使命は浮世絵を描くことだとずっと思っていました」
これまでの活動において最も忙しかったのは、2013年度前期の連続テレビ小説『あまちゃん』で劇中アニメを手掛けていた頃。「1日20時間ぐらいパラパラ漫画を描いていて、寝ている時間がないぐらいやっていました」と振り返り、今パラパラ漫画を描いている時間は「8時間に抑えている。集中できるのが5〜6時間なので」と説明した。
ピーク時に1日20時間描いていた経験は、今回の『べらぼう』にも生きていると鉄拳は語る。
「集中力や忍耐力はついたと思います。浮世絵を細かく描くのは、1時間ぐらい練習したらすごく疲れるんですよ。それでも集中して描いていられたのは、ずっとパラパラ漫画を長い時間描いているからだなと思いました」
●「絵を描く仕事をしてきてよかった」 出演回はリアルタイム視聴

そして、自身と同じく絵を描くことを仕事にしていた湖龍斎を演じ、とても縁を感じているという鉄拳。「絵を描く仕事をしてきてよかった」という思いも語った。
「江戸時代に絵を描いて、それを仕事にしていた人物で、僕も特殊なパラパラ漫画を仕事にさせてもらっているので、今回この仕事が来た時に縁があるんだなと思いました。絵を描いてなかったらこの仕事も来なかったと思うのでよかったですね。湖龍斎さんは僕の中では伝説的な、ちょっとつながりがあるんじゃないかって勝手に感じています」
放送開始100年の節目に放送されている本作。鉄拳は「セットがすごく凝っているし、役者さんも豪華で、100年のこれにかけているなと感じました」とこれまでの放送を見た感想を述べ、そんな作品に出演することに「プレッシャーです」と吐露する場面も。
周囲から期待の声が寄せられているそうで、「みんな僕がすごく出ると思っているので、そんなに出ないよってみんなに説明したいです。『いつ出るの?』『どのぐらい出るの?』と聞かれて、『本当に一瞬だけなんだ』って毎回説明しているんですけど、ちょっとハードル高くなっちゃって。そこだけは期待しないでください(笑)」と出演シーンは少ないと強調する。
出演する第4回はリアルタイム視聴するそうで、反響も見ながら放送を楽しむつもりだ。
「悪いことは書かないでください。褒められると伸びるタイプなんで褒めてください(笑)」と呼びかけ、「『鉄拳のこういう役も見てみたい』と書いてもらって、湖龍斎さんの役が終わっても違う役で出られるように。通行人でもいいので、『別の役でも出ている』という感じになれたらうれしいです」と違う役での再登場にも意欲をのぞかせた。
■鉄拳
1972年5月12日生まれ、長野県出身。2012年、イギリスのバンドMUSEの楽曲を使用した「振り子」が公式PVに採用され、世界各地で配信。2013年、第42回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。また、2015年に「振り子」が実写映画化。2018年には「家族のはなし」が実写映画化、その後、舞台化もされた。多数アーティストのMVや、企業・自治体の動画など、現在まで数多くの作品を手がけている。YouTube「鉄拳パラパラ漫画チャンネル」で作品を公開中。