なぜ絶対的エースの長谷川唯はパリ五輪で主役級の輝きを放てないのか。その背景にあるなでしこジャパンの“根深い問題”【コラム】
なかでも目に付くのは、絶対的エースである長谷川唯の乗り切れていないプレー。守備に追われたスペイン戦はほぼ見せ場がなく、続くブラジル戦でも“さすが”と思えるプレーは少なかった。1ゴールに絡んだナイジェリア戦にしても全体的に大人しい印象で、彼女がもっと華麗にピッチで躍動する姿を見たいと思うファン・サポーターは少なくないはずだ。
根深い問題とはつまり、最終ラインからのビルドアップが一向に改善されない点だ。事実、ナイジェリア戦でも最終ラインのつまらないミスからピンチになりそうなケースは複数あった。
昨年の女子ワールドカップ以降、3-4-2-1システムに加えて4-3-3システムもテストした中で、常に問題を抱えているように映ったのが最終ラインからのビルドアップである。熊谷紗希、南萌華、高橋はなあたりから良い形でボールが入らないから、長谷川が苦労している印象なのだ。
実際、パリ五輪前の国内合宿でのトレーニングマッチでも組み立てが上手くいかない局面で長谷川自ら最終ライン近くまで下がってボールを受けていた。その結果、バイタルエリアに顔を出す回数は限られ、持ち前の攻撃力を存分に出せなかった。そのトレーニングマッチ後、相手のハイプレスに苦戦した理由について長谷川は以下のように答えていた。
「今日は相手が正面からプレッシャーをかけてきて、そこで余裕を持って崩すというよりは『あっ、来ちゃった』という形が多かったです」
「あっ、来ちゃった」という場面はパリ五輪の試合でも見られる。展開力と打開力に優れた遠藤純(怪我でパリ五輪断念)がいれば長谷川頼みの局面も減るが、今さら遠藤の不在を嘆いても意味がない。
準々決勝の相手は、4月のシービリーブスカップで敗れているアメリカ。最終ラインからのビルドアップが期待できない現状では、ベタ引きのカウンター戦術に勝機を見出すしかないが、果たして…。谷川萌々子が万全なコンディションなら、彼女をボランチに置いて、長谷川をシャドーで使う手もある。池田太監督の決断は?
文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)
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