年明けからNECで一気にプレータイムを伸ばしている佐野。カタールで闘う兄に負けじと奮闘中だ。(C)Getty Images

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 オランダ1年目の佐野航大が華麗なテクニックでNECファンを虜にしている。

 サイドライン際で敵のプレスに追い込まれても、佐野は華麗なフェイント、軽やかなステップワーク、軽妙なダブルタッチで打開していく。右サイドハーフから中に入ってNECの中盤を厚くし、滑らかなパスでビルドアップの潤滑油になる。
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 1月21日のトゥベンテ戦の終盤はボランチにコンバートされ、敵を2度追い・3度追いするタフさを見せた。アディショナルタイムにはコーナーフラッグ付近でマークを2人引き付けながら時間稼ぎをすると見せかけ、ゴールラインの上をなぞるようにゴール方面へ進んでいった。

 今シーズン3位の好調トゥベンテを1−0で下したあと、佐野は言った。

「このスタジアムはいいですね。やっぱりひとつのプレーで盛り上がったり、 ヤジが飛んだりして、そういうのを肌で感じるので、すごいやりがいを感じるし、楽しいところです。1個1個のプレーに反応してくれるのは、選手としても嬉しいです」

 昨夏、ファジアーノ岡山からNECの本拠地ナイメーヘンにやってきた佐野は公式戦8試合(オランダリーグ6試合・KNVBカップ2試合)に出たものの、出場時間はわずか207分間にとどまった。しかし今年に入ってからは3試合(オランダリーグ2試合・KNVBカップ1試合)に出場して、すでに203分間プレーしている。

 そのターニングポイントは、ウインターブレイク中に行なわれたスペイン合宿。佐野はフォルトゥナ・デュッセルドルフとの練習試合で1ゴール・1アシストを記録し、チームの2−0勝利に貢献した。

「キャンプは自分の中でもすごく感触が良くて、『このまま続けていればチャンスは来るだろうな』と感じました。(ゴール・アシストという)結果もそうですけど、他のプレーでも味方に合わせるところと、自分の良さを出すところでいい判断ができたので、自分の中でも自信になったキャンプかなと思います」
 
 この1週間、フェイエノールト戦(2−2)、トゥベンテ戦(1−0)と強豪相手に1勝1分けでリーグ戦を乗り切り、チームは8位から7位に浮上。今シーズン好調のゴー・アヘッド・イーグルスを2−1で倒してKNVBカップではベスト8進出を果たしている。

「全チーム、格上の相手だったので、その中で自分がどれだけできるか試したかった。だからこそ、やっぱり前向きなプレッシャーがあった。フェイエノールト戦、ゴー・アヘッド・イーグルス戦では『いいプレーだった』とまではいかないですけど、自分の良さを出すことができました。改善点ばかりですけど、メンタル的にも技術的にもオランダに慣れてきたと思います」

 佐野の言う「改善点」とは具体的には何を指すのだろうか?

「ボランチをやっている時、ひとり潰し切れずに相手ボールになった場面があったんです。ああいうところでしっかり敵を潰せたら、本当に評価が上がると思います。また、(ストライカーの小川)航基くんに出したラストパスとか、最後の質の高さはまだ課題です。しかし、サイドでのプレスは試合前にしっかり明確にすることができたので、そこはスピードを持って行くことができました」
 兄・佐野海舟(鹿島アントラーズ)は昨年11月に日本代表初キャップを記録し、カタールで開催中のアジアカップのメンバーにも選出された。

「いや、すごいですね。『代表に選ばれちゃって、すげえな』としか思えないです。もうなんか兄貴っていうよりか、一選手としてすごいなと思っちゃいます。日本を背負って戦うことがやっぱり自分の夢。一番近くにいいお手本があるので、自分としてはありがたいです。兄貴は守備、俺は攻撃と全然タイプが違います。兄貴は小さい頃から守備の意識が高くて、俺が見ている限り、練習でもセカンドボールを意識していました。逆に俺はボールに触りたいとかゴールを決めたいとか攻撃側でした。兄貴のほうが玄人向けですね」
 
 トゥベンテ戦は佐野にとってオランダリーグ初先発の試合だった。NECに入団して、出場機会に恵まれない時も、佐野はいつでもスタメンで出られるように1日1日を大切にしてきたのだという。そのことが報われ、今年に入ってからチャンスを掴んでいる。

「今年が始まってまだ少ししか経ってないですけど、コツコツやれればチャンスは来るというのを、この3試合で証明することができている。やることを変えずに、1日1日コツコツやり続けたい。今年は、パリオリンピックがあります。自分はU−20日本代表までで、U−23日本代表に選ばれたことがない。飛び級になりますがここで結果を残し続けていれば、チャンスもあるかなと思います。そのことを目標として持ちつつ、1日1日を大切にしたい」

取材・文●中田 徹