近年では「昼寝」をすることの効能に注目が集まっており、「週に1、2回の昼寝をする人は心臓発作や脳卒中のリスクが低い」という研究結果や、「定期的に昼寝をすると認知能力が向上する」という研究結果が報告されています。ところが、イギリスの大規模バイオバンクであるUKバイオバンクのデータを分析した新たな研究では、「頻繁に昼寝をする人は高血圧や脳卒中を発症する可能性が高い」という結果が明らかになりました。

Association of Nap Frequency With Hypertension or Ischemic Stroke Supported by Prospective Cohort Data and Mendelian Randomization in Predominantly Middle-Aged European Subjects | Hypertension

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/HYPERTENSIONAHA.122.19120

Study shows link between frequent naps and hi | EurekAlert!

https://www.eurekalert.org/news-releases/959311

Frequent Napping Could Be a Warning Sign of Serious Health Risks, Scientists Say

https://www.sciencealert.com/frequent-napping-could-come-with-a-concerning-health-risk

過去の研究結果には昼寝が肯定的な効果をもたらすというものがある一方で、昼寝が高血圧や脳卒中に関連しているという研究結果も存在します。そこで中国・中南大学湘雅医院の研究チームは、UKバイオバンクのデータを用いて昼寝の頻度と高血圧や脳卒中との関連を分析しました。

UKバイオバンクには、2006年〜2010年の時点で40歳〜69歳だった50万人以上のイギリス在住者が参加しており、参加者は定期的に自身のライフスタイルを報告するほか、血液・尿・唾液などのサンプルも提出しています。昼寝の頻度については常時追跡されているわけではないものの、2006年〜2019年にかけて計4回、一部の被験者に対して昼寝の頻度が尋ねられたとのこと。

研究チームはデータの中から、調査開始時点で高血圧や脳卒中を患っていた人々を除外した約36万人を抽出し、昼寝の頻度や高血圧、脳卒中、社会経済状況などについて分析しました。



データを分析した結果、日常的に昼寝している被験者は男性で、教育および所得レベルが低く、喫煙や飲酒の習慣があり、不眠症やいびきを患っていて、夜型の生活を送っている可能性が高い傾向がみられました。

また、頻繁に昼寝する人は昼寝をほとんどしない人よりも高血圧を発症する可能性が12%高く、脳卒中に至っては24%も高かったと研究チームは報告しています。このリスクには年齢による違いもみられ、60歳以下の頻繁に昼寝をする参加者では高血圧症になる可能性が20%高かったのに対し、60歳以上の参加者では10%高かったとのことです。

さらに研究チームは被験者の遺伝子をランダム化した解析(メンデルのランダム化解析)も行い、遺伝的要因を排除した昼寝と病気の関連も調べました。その結果、時間経過と共に昼寝の頻度が「まったくない/ほとんどない」から「時々」へ、あるいは「時々」から「日常的に」へと上昇した場合、高血圧のリスクが40%も上昇することも判明しました。

なお、今回の研究では、昼寝の頻度が高いことは高血圧の遺伝的リスクと関連していることも示されています。今回の研究はあくまで昼寝と病気の関連を調べたものであり、因果関係を証明したものではありません。そのため、「昼寝が高血圧や脳卒中を引き起こす」のではなく、「高血圧や脳卒中と同じ原因で昼寝の頻度が増えている」可能性があるとのこと。



今回の研究には関与していないアリゾナ大学の睡眠専門家・Michael Grandner氏は、昼寝をすること自体に害はなくても、昼寝をする人の多くは夜の睡眠が浅い可能性があると指摘。「夜の睡眠不足は健康状態の悪化につながり、昼寝だけでそれを補うことはできません」と述べました。