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遥かに能力に長けていたウイリスMB

世界の雲行きが怪しくなっていた1940年、アメリカ陸軍省は135社もの製造企業へ、最高出力40psで四輪駆動という偵察車両の開発を打診した。わずか49日間という短期間で走行可能なプロトタイプを完成させたのが、アメリカン・バンタム社だった。

【画像】元祖ジープ ウイリスMB/フォードGPW/ホッチキスM201 最新ラングラーとブロンコも 全75枚

バンタム社の設計は非常に優れていたものの、生産力には限りがあった。そこで情報の一部をフォード社とウイリス社へ開示し、協力を仰ぐことでジープの原型となるクルマが完成。バンタム社は、牽引トレーラーの生産契約を得ることになった。


フォードGPW(1941〜1945年)

正式採用となったウイリスMBの量産が始まると、フォード側も需要を賄うためにGPWとしてライセンス生産で対応。ジープと呼ばれるようになったMBとGPWは、連合軍全体へ急速に展開していった。

元祖ジープは、フォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1)がベースとなった、後輪駆動のキューベルワーゲンより遥かに能力に長けていた。第二次大戦が終結しても、さらに数十年以上、世界各国の軍隊を支援し続けてきた。

フランス陸軍は能力を認め、ホッチキス社がライセンスを取得し、MBの改良版を1966年まで製造している。第二次大戦中に生産されたMBとGPWは合わせて約65万台で、ホッチキスのM201は約2万8000台。他方、キューベルワーゲンは約5万台だった。

日常的に乗れるクラシックカーとして好適

現在残っているジープで状態の良いものは、ホッチキス社製であることが多い。その理由は、より肉厚な素材を用いたシャシーと、タイミングチェーンではなくタイミングギアを用いたエンジン構造などが挙げられる。

トランスミッションのベアリングやクラッチなども、より質の高いものが用いられていた。だが何より、実際の戦争で用いられなかったことが1番大きい。


フォードGPW(1941〜1945年)

頻度の高い日常的な利用にも耐え、実用的なジープは、クラシックカーとしても好適。一部のカーファンはその価値に気づき、価格も上昇傾向にある。

複数のメーカーで作られたジープだが、見分ける特徴が幾つかある。フォードGPWの場合、シャシー番号はフロント・クロスメンバーの裏側にある、左側のシャシーレールに刻印されている。

一方のウイリスMBでは、同じフロント左側のシャシーレールへ、シャシー番号が刻印されたプレートが貼られている。ホッチキスM201の場合は、フロントグリル前のシャシーレッグに、縦の補強材が追加されている違いがわかりやすい。

フロントグリルの穴の加工も、M201だけが違う。MBとM201では共通して、フロントのクロスメンバーが丸いパイプ状。GPWは角型のチャンネル材が用いられているほか、多くの部品にフォードやF8といった刻印が施されている。

M201では、ダッシュボードの継ぎ目金具にスポット溶接の跡が残っている。ボンネットを開閉する長いピアノヒンジは、MBが9セクション、GPWは11セクション、W201は13セクションと加工が異なる点も、見分けやすいポイントだ。

オーナーの意見を聞いてみる

今回、フォードGPWを持ち込んでくれたアダム・トローブリッジ氏は、軍からの払い下げ車両を家族のように大切にしている。「最初に購入したのが、パットン将軍が乗っていたような、ダッジ・コマンドです。22年ほど手元にあります」

「フォードGPWを購入したのは、20年ほど前。妻へのプレゼントでした。おかげで、公爵夫人と呼ばれています。彼女の父親も、50年ほど軍用車両をコレクションしているんです」


フォードGPW(1941〜1945年)

「わたしの子供と一緒に、ジープのイベントへ尋ねるのは楽しいものですよ。おじいちゃんにも会えますしね」

「手に入れたGPWは、レストア済みでした。でも、エンジンとトランスミッション、トランスファーなどはリビルドする必要がありました。ホッチキス社の部品も一部に用いられていましたが、正しいフォード用のものに交換しています」

「エンジンも違っていました。スクラップ状態だった6台のジープを調べて、1942年製の正しいフォード・ブロックを発見したんですよ」

「過去の苦い経験を忘れないためにも、この様なクルマを尊重することは良いことだと思います。その歴史がなければ、今の趣味もなかったわけですしね」

英国で掘り出し物を発見

ホッチキスM201

登録:1962年 走行:5万6000km 価格:2万1500ポンド(約354万円)

英国編集部の1人が大切にしてきた、M201が売りに出ている。ノルウェー陸軍に従事していた車両で、無線通信車であり、電圧24Vの電装系が組まれている。フロントハブはフリーホイール・タイプで、長距離走行にも向いている。


ホッチキスM201(1962年式)

エンジンはパワフルで、ソレックス・キャブレターはオーバーホール済みとのこと。デフもリビルドしてある。状態の良いキャンバス・ルーフと、当時物のシャベルと斧もセットで付くという。

ウイリスMB

登録:1942年 走行:9万120km 価格:2万6500ポンド(約437万円)

戦時中に製造されたウイリスMBとしては、比較的手頃な価格といえる。オリジナルコンディションに拘らなければ、乗りやすいジープとして都合が良いかもしれない。

ホッチキス社製エンジンとトランスミッションに載せ替えられているため、耐久性は向上していると考えて良い。近年メカニズムに施した作業の、履歴ファイルも付いているという。

売り手によれば走りは良好で、ボディの塗装の状態も良いとのこと。ただし、キャンパス・ルーフは若干くたびれているようだし、直したいサビも数か所あるようだ。

中古車購入時の注意点などは後編にて。