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巨大な「ウサギ観音」が話題となり、観光地としても知られる長谷寺(新潟県佐渡市)で、劣悪な環境におけるウサギの多頭飼育が報じられた。

現場で何が起きていたのか。話を聞いてみると、ウサギ観音で有名になったのに、死んでしまうウサギもいたという。改善への取り組みを取材した。

●多頭飼育で保健所から指導

共同通信(3月2日配信)によれば、長谷寺は、佐渡保健所から、ウサギの飼育状態が過密で不衛生だとして、複数回の改善指導を受けていたという。

保健所は3月3日、弁護士ドットコムニュースの取材に、「多頭であっても、適切に飼われていればよいが、飼い方について適切な飼育と思われない点があったため、2020年より前から継続して適正飼育をお願いしている」として、動物愛護法および家庭動物等の飼養及び保管に関する基準に基づく指導を認めた。

基準では、家庭動物に関して、健康管理に努めるとともに、病気や怪我をした際には原則として治療を受けさせることと定められている。

807年につくられたとされる寺は、目からレーザー光線を放つ巨大な石像「ウサギ観音像」がメディアで取り上げられたこともあり、「ウサギのいる寺」という観光地としての人気を得た。

住職の富田宝元さん(80)によれば、ウサギを飼い始めたのは、およそ15年前のこと。

きっかけは、寺の資金繰りに困ったからだと話す。雑草の処理にも困り、「草取りウサギ」として食べさせた。

2020年11月から、住職とともに、長谷寺のウサギの飼育環境の改善に取り組んでいるのが、新潟県動物愛護推進員の近藤陽子さんだ。現在では3人のボランティアも参加している。

●ウサギは放し飼いでオスメス関係なし

近藤さんが、昨年11月当時の様子を振り返る。

当時はウサギ小屋が1つだけで、その中に何羽ものウサギが、オスメス関係なく入れられていたという。「草取り」として、敷地内の雑草を食べさせるため、外で放し飼いもなされ、脱走防止が不十分だった。傷病のある個体も多く、死体もよく確認されたという。

その後、治療や去勢手術を実施し、新たに小屋を用意して、オスとメスの生育環境を分けた。

今では、小屋飼育のオス8羽とメス12羽、外で掘った巣穴に住んでいるとみられる個体が10羽以上いるという。

「住職は野菜クズをばらまいて食べさせていたのですが、そのあとで掃除をせずにまた野菜を捨てていたので、衛生面に問題がありました。今では小屋の掃除をして、牧草とペレットを与えて、床材も適したものに変えています」(近藤さん)

個体数を減らすことに努めており、3月中に20羽程度の譲渡先は決まっている。しかし、メスのほとんどが妊娠しているため、もうすぐ子どもが数十羽生まれてしまうそうだ。

●佐渡島の環境にも影響があるかもしれない

ハッキリした数はわからないが、多い時には100羽近いウサギがいたかもしれないと近藤さんは指摘する。

「資金繰りには困っていたと思います。観光バスがやってくることもあったけれど、住職は観光客から参拝料をとるのは違うというポリシーがあったようです。

ただ、ウサギへの執着が強く、ウサギがいなくなると、お客さんが来なくなってしまうという不安もあったと思います。オスとメスを分ける心理的な壁が厚かったところもありますが、最近は、そのような対応が大事だとわかってくれて、小屋を分けることを許可してもらいました」

ウサギを放し飼いにすることには、多くの問題があるという。

「草取りウサギとして野外に放すと、テンが餌として狙ってくる。佐渡にはトキや(準)絶滅危惧種のサドノウサギもいます。寺にはトキがよく飛来しますし、サドノウサギもおそらく周辺に生息しています。テンが増えれば、トキやサドノウサギにも影響があります。また、ウサギ由来の感染症がサドノウサギに広まらないとも言えません」

住職は動物を好きだが、飼育方法などに固執するところがあったと思うと近藤さんは話す。

「ウサギ観音で有名になったのに、ウサギを死なせてはいけないよね。法律は守らないといけないよね。話を何度も何度もして、少しずつ改善を進めてもらいました」

寺の運営資金を集めるためのアイデアも、住職に示している。「最近では、お寺で撮影をしたいコスプレイヤーさんがいて、寺を貸し出すこともできる。また、ペット供養も需要がある。いろんなアプローチがあると提案しています」

●改善するも…指導の前に経済支援をすべきと主張

近藤さんやボランティアは、3月末に「ウサギさんお疲れ様」という意味を込めて、「草取り」からウサギを引退させるセレモニーを計画している。

「お寺が良いほうに進むことが私たちの願いです」(近藤さん)。

「檀家は40軒だけ。次の住職も見つからず、このままでは寺がつぶれてしまう。寺には国登録有形文化財もあるが、壊れた修繕費用もままならず、雑草取りをシルバーセンターに頼むお金もない。そんなとき、ウサギが草を食べているのを見て、草取りウサギとして飼いはじめた。県や市は指導を言う前に、まずは経済的に支援をと考えます」(住職)