今も大学に通えず、リモート授業しか受けていないという学生が多くいる

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 コロナ禍によって、学校に通えない大学生たちの嘆きがSNSに溢れた。一部の大学では、ようやく対面とリモートの“併用”という形で授業が始まった。しかし、東京都内の私立大学3年・橋本良太郎さん(仮名・22才)が最後に大学に行ったのは今年3月の頭。3年次分の学費も納入済みだったが、あれ以降、現在まで大学でのリアルな講義は1日として受けていなかった。そこで感じた大きな「差」。

 そんな不満をSNSに投稿していたところ、新たな懸念が生まれ始めているというが……。

◆終わりの見えない大学の「学費返還」問題

「すでに対面の授業が始まっている大学もあります。もちろん、パソコンなどを利用したリモート授業と併用、という形です。うちは、今もリモートのみ。大学がリモート授業を行ってくれている、そういった環境を整えてくれた、という点は確かにそうですが、パソコンも、ネット環境も自分で支払っています。学費のうち、施設利用料に当たる部分は、さすがに返還されるか、大幅に減額されないと納得がいかない」(橋本さん、以下同)

 Twitter上には、同じような思いをしたという大学生の書き込みが散見され「#学費返還運動」なるハッシュタグが登場。署名収集サイト「Change.org」などを活用した学生たちの動きも見られる。

 一部の大学では、すでにこうした学生側の動きに応じ、声明や対策、給付金を出しているともいう。しかし、橋本さんの大学は、学費の返還どころか授業の再開すら見込みが立っていない。この「差」は一体なんなのか、腑に落ちない。橋本さんは引き続き、大学側の不誠実な対応について、Twitterへの投稿を続けていたが、同じ大学の同じ学部の友人が慌てて連絡してきたのは、今年の7月ごろだった。

「友人も僕と同じような書き込みをしていて、ゼミの先生から、そういうことをしていると就職に響くかもよ、ただでさえ君たちは厳しいんだから、みたいなことを言われたらしいんです」

 橋本さんは友人を誘って改めて抗議しようとしたが、結局、友人はこれを拒否。橋本さんの世代は、コロナ禍の影響で就職活動すらまともにできるかどうか、定かではないという。

◆就職活動への懸念

 友人にとっては、大学側や企業側に目をつけられるより、狭き門となる可能性が高い就職活動に向けて、万全の態勢で臨みたい、ということだろう。橋本さんは「友人の気持ちはわかるし責められない」とうなだれる。

 実際、企業側が学生のSNS上における言動を監視しているのだろうか。外資系保険会社の元人事担当者・中本真由子さん(仮名・60代)が言う。

「企業の人事担当者にとって、新入社員候補の身辺調査を行う上でもっともポピュラーになってきているのがSNSのチェックです。大企業はもちろん、中小企業でも行われています」(中本さん)

 前述の橋本さんの言動は「主張は正しいが、嫌がる企業もあるかもしれない」というのが中本さんの見方である。企業がいつも正論を求めているのかと言えば、そうとも言えず、特に古い企業のトップは、和を尊ぶ傾向にあるからだと話す。

 とはいえ、今回のコロナ禍のような不測の事態においては、別問題かもしれない。

 学費に納得のいかない学生たちの気持ちはじゅうぶんに理解できるし、大学側が対応に苦慮するのもわからなくもない。対面授業のクラスター対策を含め、課題はまだ山積みだろう。

 橋本さんをはじめ、全国の多くの学生たちが葛藤を抱え、就職活動へのリスクも懸念しながら、それでも動かなければ何も変わらない。言わなければ、学費が返ってくることはない、と行動に移しているのだ。

 だが、これは大学と学生だけの問題ではなく、国全体の問題とも言えよう。国からの私学助成が増額されるなど、良い落としどころが見つかることを祈りつつ、今後の動向を見守りたい。<取材・文/森原ドンタコス>