【清泉亮】「地方移住」激増のウラで…田舎暮らしで「地獄を見た」人たちの恐怖体験 ぼったくられ、ハブられる…

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工事費をぼったくられる

コロナ禍の終息が見えない今、首都圏周辺の別荘を扱う不動産業界が活況を呈している。第二波、第三波に備えようと、買い気にはやった首都圏の住人が大挙して押し寄せているからだ。だが、こうしたときにこそ “移住事故”は発生する…。

移住人気の高い場所が住みやすいとは限らない――この「移住地の法則」を知らずに、人気の土地という理由だけでそうした土地に飛び込み、 “ワナ”に、あるいは“ドツボ”にはまる人々がいる。今まさに移住を考えている人のために、そうした事例をご紹介しよう。

風光明媚な町と子育てのしやすさを売りにしている関東地方のA市では、地元工事業者が移住者から「ぼったくる」ような事態が起きている。

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3年前、終の住処にと土地を購入し、賃貸住宅に住みながら長く土地と人を見極めたうえで、ようやくここへきて自宅の施工に着手したある移住者家族を、度肝を抜くような事態が襲った。

「家を建てる場所には上水道が通っていないので、辺りでは井戸を掘って飲料水や生活用水として使っています。移住者相手だと見積もりからしてボッタクリ価格を持ってくるという話は聞いていたので、施工業者を選び抜いて、いよいよ施工着手をした形でした。

で、いざ井戸を掘る見積もりがきた。それを周囲の知人のところに持っていって、近い場所やほぼ同じ施工環境で、同じ業者が過去にどういう見積もりをしているか調べたんです。そしたら、うちだけ、見積もりが100万円も高いんですよ。これには笑っちゃいましたね。同じ環境での井戸掘削で、移住者であるうちだけ100万円も乗せてふっかけてきている。こりゃ、聞きしに勝る、でしたね」

自治会に入るのにウン十万円…

移住者とみるやの「ぼったくり」は何も工事現場に限ったことではない。

地方ではゴミを出すための「共同集積所」は、区や組と呼ばれる地元自治会の“私有財産”であるという建前のもと、自治会に入れない者は集積所を使えない、すなわちゴミ出しができないという実態があるのは有名な話だ。

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都会から移住してくる者のなかには、あえて自治会には入りたくないという人間も一定数存在する。A市はそうした自治会参加拒否者や、また、自治会に入りたくても入れてもらえずゴミ出しができないという住民のために、各地の市の分庁舎にゴミ集積所を確保し、そこに各自でゴミを運べるようにしている。

だが、冬場、雪のなかを何十kmもゴミを車に積んで遠路ゴミ出しをするのは、高齢者にはこたえる作業だ。当然、自治会費をきちんと収めたうえで、区や組の、最寄りのゴミ集積所を使いたいと望む者もいる。

だが、A市のとある集落では、区長がこうした移住者の切々たる訴えに対して、区の自治会に入りたければ、入会金としてウン十万円を支払えと迫った事件も発生した。

移住者の男性(68歳)がその金額に仰天し、そんなにとても払えませんと応じると、区長はこう返した。

「移住してくるもんがそれくらいのカネをもっていねえわけがねえ」

押し問答が続くが、移住者は、これから先に住み続ける場所で、ゴミ出しさえまともにできないのでは、と最後はしぶしぶ、区長の“言い値”に応じることとなった。

だが、移住後しばらく経ち、周辺で知人も増え、状況が飲み込めてきた。

「区(の自治会)に入る権利金のようなものは本当は5万円で、支払った金額のうち、5万円をのぞいた大金は区長の懐に入ったと、そういうわけでした…」

市議会で問題になったが…

A市の市議会では、市議から「各区加入で求められる条件(支払い金額など)を整理し、齟齬を防ぐべきでは」というまっとうな質問が行われたが、それは、こうした数多くの現状や“齟齬”と称するよりも“詐取”にさえ見える数多くの事例勃発を受けてのものだったのだろう。

しかし、この市の総務部長の率直すぎる回答は、移住者らの失笑を誘った。

「(加入条件の)取りまとめは困難」

なぜならば、役場の幹部はそれすなわち、地元集落での「長老組」「最有力者」である。

「自分たちで自分たちにタガをはめるなんて、できるわけがないという話でしょう」と、この市議会答弁が載った市報を手に、この自治会長からの「ぼったくり被害」を受けた男性は笑う。

「移住先では死ねない、という話は本当だったんだなとつくづく思いましてね、東京のマンションは売らずにおいてよかったです。住めば住むほど、融和よりも対立が酷くてね。いつかは東京に帰る日が来るのは間違いないですよ。東京が実は一番、住みやすいんだなって。田舎暮らしをしてよくわかったのは、むしろ都会の魅力と住みやすさだったんですね」

いつまでたっても「よそ者」

そんな移住者の男性が今でもその地に留まり続ける理由はただ一つだという。

「孫がね、喜んでくれるんですよ。孫にとって田舎をつくって上げられたこと、これが私がここに留まり続けるただ一つの理由です。春夏秋冬とね、幼い孫が遊びにきてくれることだけが楽しみ。

そのほかはね、どうでしょうか。最初は景色とか自然の豊かさに憧れて移住しましたけどね、最近はどうでしょうか。東京暮らしのときではありえなかった頻度で、毎日、図書館に通って新聞を読んでますね。区(の自治会)に入れてもらえたといっても、やれ道普請だ、やれ清掃だ、やれ祭だって、労務に駆り出されるだけでね。たとえ奉仕して貢献したからといっても、どうも仲間として認めてもらえる余地は少なさそうでね。

こっちの言葉では、よそ者を『きたりもん』と呼ぶらしいのですが、きたりもんはもう死ぬまできたりもんだって、やっぱり仲良くなった、ヨソから嫁いできた90歳になるおばあちゃんがそう教えてくれましてね。

結局、孫が来ないときは、図書館に籠もるようになりました。図書館には平日の朝から、そんな孤独な移住者ばかりが集まっていましてね。むしろ都会的なスッキリした会話で、楽しいんですよ。

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田舎に来て都会を懐かしむなんてね、どこが田舎暮らしなのかなって思うこともありますけどね、結局、誰がいいわるいじゃなくて、水と油とはよくいったもんでね。どうにもまじわらない。まじわっても、すぐにまた分離するというわけでしょうね。

役場になど相談もしなくなりましたね。以前、役場に生活相談した内容がすべて集落に筒抜けになってね、俺たちの悪口を役場で言いふらしやがってって、大変なことになりかけたことがありましたから。役場に勤める若い人も、たいがい、守秘義務なんて観念が薄いから、今日、どこそこの誰が役場にきてこんなことを相談してって、自宅に戻って父親や母親にしゃべるんでしょうね。それがすぐに集落中に筒抜けになるんです」

こんな“地域事情”もよくよく研究、承知したうえで、移住先はさがすに限る。