異形のボーイング747「ドリームリフター」が見られるなど、日常的に珍飛行機が飛来するシーンの多い中部空港ですが、この新型コロナ禍に世界最大の飛行機An-225が数度やってきています。なぜ中部空港が選ばれるのか運営会社に聞きました。

世界に1機のみ運航の規格外ボディAn-225「ムリヤ」

 日本で珍しいモデルの民間機が日常的に見られる空港のひとつとして挙げられるのが、中部国際空港「セントレア」(以下:中部空港)でしょう。

 中部空港名物ともいえる珍飛行機といえば、「ジャンボジェット」ことボーイング747-400型機を改造し、2階席部分の後方をより大きく膨らませることで貨物スペースの増大を図ったボーイング747-400LCF「ドリームリフター」です。中部地域には、ボーイング787型機のパーツ製造を手掛ける工場が集中していることから、そのパーツをアメリカに運ぶため頻繁に飛来します。


中部空港を離陸するアントノフAn-225「ムリヤ」(画像:中部国際空港株式会社)。

 ところがこの新型コロナウイルス禍のさなか、中部空港にはもっと珍しい飛行機が、2020年5月23日から6月3日(水)までに3度やってきています。旧ソ連、現ウクライナ製のアントノフAn-225「ムリヤ」です。いずれも新型コロナ関連の救援物資輸送において、途中給油をする目的です。

 An-225の最大の特徴といえば、その巨大さです。全長84m、全幅88.74mと、ともに世界最大級で、飛行機の「世界最大」の記録を多数保有しています。貨物室も長さ43m、幅6.4m、高さ4.4mのスペースを持ちます。規格外の大きさからその見た目も特徴的で、片翼に3発ずつ計6発搭載したエンジンや、32個の車輪をもつムカデのような脚、垂直尾翼が水平尾翼の両端についたH型のデザインなど、ほかでは見られない存在感を放っています。

 An-225は、本来はソ連版スペースシャトル「ブラン」を胴体の上に積んで空輸するために作られたモデルで、2020年6月現在、世界で1機しか運航されておらず、世界で4機の「ドリームリフター」と比べて、珍しさの面でも上回ります。

 このほかにも、量産型の貨物機としては世界最大とされる、こちらもアントノフ製のAn-124が飛来することもあり、よくネット上で話題になることも。なぜ、中部空港でばかり、こういった珍しい飛行機が見られるのでしょうか。

なぜセントレアが選ばれるのか その理由を聞く

 中部国際空港広報グループによると、アントノフAn-225「ムリヤ」がなぜ給油地として中部空港を選んだのか、断定できるものはないものの、中部空港にはAn-225にとって次のようなメリットがあると話します。

「中部空港には、2020年以前にもAn-225がやってきたことがあるので、いわゆる運航実績があります。またAn-225ほどの大きさには対応していませんが、An-124『ルスラン』であれば、トーイングカーによるバックけん引が必要ない、大型の駐機場も備えています。これは通常の駐機場のおよそ3つぶんのスペースをもち、地上に専用のマーキングも引かれています。そして、中部空港は24時間運用なので、比較的時間の融通が利きやすいことも選ばれた理由のひとつではないかと推測されます」(中部国際空港 広報グループ)


アントノフAn-225「ムリヤ」の上部、人との比較でその巨大さがわかる(画像:中部国際空港株式会社)。

 またAn-225「ムリヤ」について、「大きさ、その形とも圧倒的な存在感を放っていて、一生に一度ともいえる経験でした」といい、「もしコロナ禍でなければ、実際に多くのみなさんに直接、見て欲しいのですが、今般の状況が状況ですので、そうもいかないのが寂しいところです」と話していました。

 中部空港は、人の殺到をさけつつも楽しんでもらうよう、同社の公式TwitterやFacebookなどで、飛来したAn-225「ムリヤ」などの様子を写真や動画で一般公開しています。なお展望デッキについては、ひとつの手すりごとにひとりずつ、約2mの間隔をあけることを呼びかけながら、6月1日(月)より開放しています。

※一部修正しました(6月8日19時20分)。