毎月5億円が流出する大塚家具の超危機的状況

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大塚家具が極度の不振から抜け出せずにいる。11月14日に発表された決算では、売上高が前年同期比23.2%減と大きく落ち込んだ。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「現預金の減少スピードが著しく、来年の春までに尽きる可能性がある。お家騒動から4年がたった今も悪化したイメージが回復せず、厳しい状況にある」と分析する--。
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父勝久氏(左)と面会し、赤いバラを贈った大塚家具の大塚久美子社長(右)=2019年4月26日、東京都渋谷区 - 写真=時事通信フォト

■10月の既存店売上高は前年比23.5%減

大塚家具は11月14日、2019年1〜9月期の単独決算を発表した。売上高は前年同期比23.2%減の210億円、最終損益は30億6200万円の赤字(前年同期は30億5300万円の赤字)だった。売上高は大きく減り、最終赤字はわずかではあるが拡大した。1〜9月期における減収と最終赤字は5年連続となる。

既存店の不振は続いている。この1〜9月の既存店売上高は9月こそ前年を上回ったが、それ以外の月は全て前年割れだ。10月にいたっては前年同月比23.5%減と大幅なマイナスになっている。昨年の9月下旬から11月下旬にかけて実施した「在庫一掃セール」で前年の水準が高かったことと、今年10月の消費税増税前の駆け込み需要の反動という特殊な事情はあるが、これらを考慮しても厳しい状況にあることは明らかだ。

同社といえば、2014年に起きた大塚久美子社長と創業者で父親の大塚勝久氏による「お家騒動」が色濃く記憶されている。経営権を巡って争ったこの騒動が大きな要因となって、販売不振に陥った。それが今も尾を引いているわけだが、販売不振に加えて財務状況の悪化が大きな問題となっている。

■現預金は100億円超から22億円に

特に問題なのが現預金の減少だ。今年9月末時点の現預金は昨年末から約10億円減って21億9000万円になった。勝久氏が大塚家具から去って久美子氏が全権を掌握した15年には100億円以上あったことを考えると、現在の水準は危機的と言えるだろう。

現預金は来年の春までに尽きる可能性がある。企業が営業活動で獲得した資金である「営業キャッシュフロー」は厳しい状況にあり、19年1〜6月期は29億円のマイナスだった。単純計算で毎月約5億円のキャッシュが営業活動で流出したことになる。販売不振がこのまま続き、土地など資産の売却や金融機関からの借り入れといった営業活動以外の面で資金を獲得できなければ、半年もたたずに現預金がなくなる可能性がある。

また、そうした資金確保が実現したとしても、結局のところやはり営業活動で資金を獲得する必要がある。そうでなければ、調達できたとしても資金は右から左に流れるだけだ。

■今後は外商とネット通販に注力する方針

もちろん大塚家具は対策を何も講じていないわけではない。リストラを進めてコスト削減を図り、この面ではある程度成果を出している。ここからは売り上げを上げられるかが問われてくるが、施策として、国内では店舗販売は従来より縮小させる一方で、法人や個人の顧客を訪問して販売する「外商」とインターネット販売を強化して売り上げを向上させたい考えだ。また、提携企業への販売や海外市場の開拓にも力を入れていくという。

ネット通販に力を入れると発表している大塚家具が打ち出した「バーチャルショールーム」。ウェブ上で実店舗のショールームを疑似体験でき、そのまま購入できる仕組みになっている。(画像=大塚家具プレスリリースより)

つまり、今後は国内の店舗の重要性は相対的に低下していく見込みだ。ただ、なくてはならない収益源であることに変わりはない。業績を改善させるには、店舗販売を伸ばす施策が欠かせない。

そこで特にネックとなるのが、現在の大塚家具のイメージだ。お家騒動により消費者の間に「骨肉の争いを繰り広げた会社の家具を部屋に置きたくない」といった同社に対するマイナスの感情が広まってしまい、イメージは大きく悪化した。それにより顧客が遠ざかり、業績が悪化していった。

■イメージの悪化が業績下落につながった例は多数

ごく当たり前だが、企業のイメージの良しあしは販売に大きな影響を及ぼす。イメージ悪化で業績が悪化した企業は少なくない。例えば、居酒屋大手のワタミが典型例だ。同社は過酷な労働実態が問題になり、「ブラック企業」との批判を受けてイメージが悪化した。これが影響して客足が遠のくようになり、業績が悪化した。

ワタミは事態打開のため、イメージの悪い“わたみ”の名を冠した居酒屋「和民」「わたみん家」を“わたみ”の名を冠していない居酒屋「三代目鳥メロ」「ミライザカ」に転換していった。この“ワタミ隠し”が功を奏し、売り上げが上向くようになった。これはイメージの良しあしで売り上げが大きく変わった最たる例といえるだろう。

回転ずしチェーン大手のくら寿司と定食チェーン「大戸屋」を運営する大戸屋ホールディングスも、今年2月に「バイトテロ」に見舞われて以降、既存店売上高が苦戦するようになった。

こうした原理は当然、大塚家具にも作用する。もっとも、海外展開において国内でのイメージ悪化はほとんど関係がないし、国内でも法人営業であれば個人客ほどその影響は受けない。海外展開や法人営業を強化するのは、こうした事情もあるだろう。だが、国内の店舗販売を収益源として維持するためには、イメージを向上させる施策がやはり欠かせない。

■「親子の和解」を試みるも失敗した

そのためにもっとも有効なのは、もちろん「親子の和解」だろう。それを意識してか、久美子社長は今春、新たに設立した業界団体「スローファニチャーの会」の名誉会長に就任するよう勝久氏に直接要請し、和解を試みている。2人の面会は4年ぶりで、注目が集まった。しかし、勝久氏はこの要請を断り、和解は幻に終わった。

ネット上では「勝久氏を名誉職に祭り上げようとした」「渋々和解を試みた」「業績回復のために父親を利用した」など、久美子氏に対して否定的な意見が多く飛び交った。勝久氏が要請を断ったのも、こうした久美子氏の狙いを嫌ってのことだろう。結果として世間に「茶番劇」を見せた形となり、イメージ回復どころか、さらなるイメージ悪化につながった印象さえある。

両者の間には、当人にしかわからない複雑な事情があるのだろう。だが、それは消費者には関係のない話だ。そういった私情を消費者が目にする場に持ち出して、経営にプラスに働くはずがない。大塚家具は消費者の気持ちを無視した経営を行っているといえるが、そうしたやり方で成功した企業を筆者は知らない。

大塚家具が復活を遂げるには、消費者が抱いている「骨肉の争いを繰り広げた企業」というイメージの払拭が必要だ。いずれにせよ抜本的な対策を講じる必要があるだろう。残された時間は少ない。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)