出し入れ自由な普通預金がある程度たまると、そろそろ少しでも金利が高く安全性も高い預貯金にしたいと考えると思います。次にどのような金融商品を考えるかは人それぞれですが、まだまだ投資を不安と感じる方や、元本保証のあるものにしたいと考える方は、とりあえず「定期預金」を考えてみましょう。

バカにできない金利の差、「定期預金」で地銀や信金はお得?


定期預金はそれほど高い金利は期待できないものの、金融機関によって金利の差がかなりあります。都市銀行はもちろん、地方銀行や信用金庫なども身近な地域にあるでしょう。少しでも有利に預けるためには、どのような銀行を選べばよいでしょうか。

○都市銀行、地銀、信金それぞれどう違う?

最初に金融機関の違いについて確認しておきましょう。下記の表をご覧ください。

銀行・信用金庫・信用組合の違い


銀行

銀行そのものの規模、基盤とする地域や取引企業の規模が異なったり、前身が相互銀行という形態であったりする違いはありますが、現在は「銀行法」に基づいた同じ形態になっています。銀行には次のような種類があります。

●都市銀行……東京や大阪などの大都市に本店を構え、広域展開している銀行で、法的定義はないものの、「みずほ銀行」「東京三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「りそな銀行」「埼玉りそな銀行」が都市銀行とされています。

●地方銀行……地方銀行は地元の中小企業や地方公共団体への貸し出しシェアが高いのが特徴です。一般社団法人全国地方銀行協会所属の地方銀行は64行あります。

●第二地方銀行……相互銀行や信用金庫から普通銀行に転換した銀行で、一般社団法人第二地方銀行協会所属の第二地方銀行は39行あります。

<信用金庫>

信用金庫は、地域の方々が利用者・会員となって互いに地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした協同組織の金融機関で、主な取引先は中小企業や個人です。営業地域は一定の地域に限定されていて、預かった預金はその地域の発展に生かされています。

<信用組合>

地域の人々によって組織・運営されている、相互扶助の精神をいかした地域・業域・職域という様々なコミュニティを基盤とする地域密着型金融機関です。一般に信用組合は、利用者である中小零細事業者や生活者が構成員(運営者)となり、営利を目的とせず、相互扶助の理念に基づき、金融サービスを提供しています。協同組織金融機関である信用金庫との大きな違いは、信用組合が地域・業域・職域という様々なコミュニティを基盤とする金融機関なのに対して、信用金庫は広域をエリアとする金融機関となっています。

○預金保険制度で保護される預金等の範囲

銀行は預貯金を預け入れるだけではありません。給与を振り込んでもらったり、光熱費や通信費などの引き落としをしたり、ゆくゆくは住宅ローンを借り入れたりするかもしれません。また、将来は独立して起業することを考えている方もあるでしょう。そうした時には、金融機関から借り入れをするケースも考えられます。

単に目先の金利だけで判断するのでなく、毎年着実に預け入れをしているとしたら、それは将来何かしらの借入をするさいに大きな実績となります。安定した蓄財の履歴を知るメインバングを確保しておきましょう。住まいや職場の近くにあり、気軽に相談できることも大切です。

将来、地元で開業するのであれば、地銀や信用金庫との付き合いもあらかじめあると便利かもしれません。前もって金融機関の定期預金の金利やサービス内容などを調べた上で、短い期間のキャンペーンを利用して定期預金などを、これだと思う銀行に順々に預け入れて試してみるのもよいと思います。その際に、今後利用するかもしれない融資などの内容についても詳しく確認しておきましょう。

最終的に、最も自分にフィットする金融機関と本格的に付き合うようにするとよいでしょう。

○定期預金の考え方

定期預金を有利に預け入れるには、預け入れる金融機関いかんにかかわらず、いくつかのルールがあります。その上で、金利やサービスなどを加味して預け入れを選定しましょう。

●300万円を一つの単位にしよう

定期預金の多くは300万円以上まとまると、「スーパー定期」等の名称で、有利な金利を設定しています。別々の3つの金融機関に100万円ごとに預け入れるよりは、300万円まとめて預け入れる方が有利です。

●1,000万円ごとに別の銀行

2018年の総務省統計局『家計調査報告』によると、60歳以降の日本人の平均金融資産は2,000万円強となっています。多くは預貯金ですので、一般的にはいずれ1,000万円を超える預貯金を所有するようになるでしょう。そうした時は1,000万円ごとに別の金融機関へ預け入れましょう。

理由の1つは1,000万円単位の「大口定期預金」として、優遇金利を設けている商品が用意されていることがあるためです。もう一つは「預金保険制度」により、1,000万円までの預貯金とその利息は万一金融機関が破たんしても保証されているからです。逆に一つの銀行に1,000万円以上預け入れないのが得策なのです。

●キャンペーンを活用しよう

住信SBIネット銀行では新規口座開設者を対象に3か月ものの定期預金の金利0.5%キャンペーン(2019年9月1日まで)を行っていました。100万円を預けると3か月後には100万円×年0.39%×(3ヵ月/12ヵ月)= 975円(税引後)の利息が受け取れます。

金融機関それぞれにキャンペーンを用意することがありますので、短い期間の有利なキャンペーンを利用して、その際にその金融機関のサービスをしっかり確認するようにすれば、いろいろ知識も身に付きます。

●ネットバンクも検討しよう

一般に金利も高いため、定期預金には特にネットバンクをお勧めします。ネット専用バンクの敷居が高い場合には、日ごろ利用している銀行のネットサービスからスタートしてみましょう。

○預金保険制度とは

預金保険制度とは金融機関が預金保険料を預金保険機構に支払い、万が一、金融機関が破綻した場合に、一定額の預金等を保護するための保険制度です。

預金保険で保護の対象となるのは下記の表の範囲です。なお、預金保険の対象金融機関とは日本国内に本店がある銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、信金中央金庫、全国信用協同組合連合会、労働金庫連合会、商工組合中央金庫となっています。

預金保険制度で保護される預金等の範囲


誰にでも有利な金融機関はありません。もしあれば、そこに集中するはずです。そうなれば他行はそれ以上のサービスを考えるでしょう。また銀行も合併したり、支店や営業所を整理したりと、体制も一定ではありません。私もサブで利用している銀行の支店が近所に無くなりATMだけとなり、できることが制限され不便を感じたことがあります。

自分にとって最適な金融機関を見つけるには、きちんとした将来設計と自ら動いて調べたり試したりすることが大切です。たとえあまり金利が期待できない定期預金であっても、まとまったお金を管理するのですから当然です。そうした習慣が次への投資のステップにも、良い結果にもつながるでしょう。



○筆者プロフィール: 佐藤章子(さとうあきこ)

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。