レイザーラモンRGさん(撮影=尾藤能暢)

写真拡大

趣味を長く深く続けるにはどうしたらいいのか。芸人のレイザーラモンRGさんは、プロレスやバイク、スニーカーなど多くの趣味を持ち、その詳しさで『アメトーーク!』などのテレビ番組にたびたび出演している。そのコツについてRGさんは「適切な距離を保てれば、趣味が多いほどストレスが減る。キーワードは『謙虚さ』と『公共心』」と語る――。

■家にはスニーカーが300足

趣味を長く深く続けるには、どうしたらいいのか。芸人のレイザーラモンRGさんは、スニーカー、バイク、ベース、プロレス、NBA観戦など、数多くの趣味を持っている。しかも個人的な楽しみにとどまらず、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「WWE芸人」や「バイク芸人」に出演したり、「ベースマガジン」(リットーミュージック)の表紙を飾ったりと、仕事につながるほどしっかりと詳しいのだ。テレビ出演や劇場でのライブなど、忙しい日々を送る中で、どうやって仕事になるまで趣味を深め続けられているのだろうか。

RGさんが今もっとも夢中になっているのは、スニーカーだ。ここでも趣味を実益につなげて、主催するイベント「スニーカー同好会」を赤坂ブリッツ(1200人収容)で開催し、スニーカーマニアとして『ナカイの窓』(日本テレビ系)、『有吉ジャポン』(TBS系)といった人気番組に出演をはたしている。

「子供のころから靴は好きだったんですよ。マジックテープをはがす子供用の靴がイヤで、最新テクノロジーが搭載されたランニングシューズを、スポーツショップでずっと眺めていました。でもどっぷりハマったのは、この4〜5年です。買うのが楽しくなって、年間50足は買っていたかな。家には約300足あります」

■キャラがついてブランディングができた

RGさんによれば、スニーカーは「集める、鑑賞する、歴史を学ぶことができる『趣味の総合形態』。仕事としても、いいことずくめでした」という。

「僕のことをよく知らないスニーカー好きの層にアピールできたし、業界にいるスニーカー好きと盛り上がってコミュニケーションツールにもなりました。そしてスニーカーキャラがついたことで、『RGは靴に気をつかうオシャレさん』というブランディングができたのは大きかった。服に本気で投資したら莫大なお金がかかるところが、靴だけでオシャレと思われたのは、とてもラッキーでしたね」

とはいえ、1足1万円はするスニーカーを年間50足も買えば50万円。スニーカーにのめりこむほど、奥さんは「こんなに買って、どこに置くの?」と表情を曇らせていった。

「まさに男の趣味あるある、『嫁と家のスペースと戦いがち』ですね(笑)。でもそこはごまかさず、妻に趣味のメリットを説明しました。『ファッションに気をつけるようになるので、老け込まない』『ギャンブルや酒に比べたらお金がかからない』『コレクションが増えすぎたら売ることもできるし、値段があがるケースもある』……。そしてもちろん、仕事につながるということも。結局、納得してもらえましたね」

だが、いくら身内に認めてもらっても、芸能人が意気揚々と趣味を語ると、「ブームにのっかって」「よく知らないくせに」といった批判を受けやすい。しかしRGさんは各趣味で愛好家たちに認められ、アンチがつきにくい傾向がある。

■シーンに還元する公共心

たとえばスニーカーでは、スマホのカメラに向かってスニーカーを前に突き出し、顔と全身のコーディネートと一緒におさめる自撮りポーズ「キモ撮り」を発案。インスタグラムで「♯キモ撮り」はHKT48の指原莉乃さんがまねたことで流行し、スニーカー愛好家からも支持を得た。一体、何が評価されるのか。RGさんは、「公共心」というキーワードをあげる。

「スニーカーの情報収集と研究のため、世界中のインスタを見てたんです。そこでスニーカーとファッションを同時に見せながら、カッコよく自撮りするにはこのポーズが一番だと編み出したのが『キモ撮り』。本当はみんなカッコつけたポーズをしたいけれど、照れてやらないんですよ。でも『RGのマネしてみました』だったらやりやすいじゃないですか」

「『キモ撮り』って、『僕はこうあわせているけど、みんなはどう?』という問いかけがあるし、スニーカー好きなら誰でもできる。そうやってシーンに還元する公共心が認められたことで、マニアからの批判が少ないのかもしれません。『俺のコレクション、みんな見て!』という姿勢で自分だけ目立とうとすると、たたかれるんでしょうね」

そしてもうひとつのキーワードが「謙虚さ」だ。

「芸能界でも、ベースだったら中村梅雀さんが極めすぎてアルバムを出してますし、バイクだったらチュートリアルの福田(充徳)は一時期ガレージつきのマンションに住んで、レースにまで参加していた。どんな趣味も上には上がいて、『僕なんてまだまだ甘い』と思っています」

時にはSNSでファンから求められるままに、「あるある」を発信する。利他の精神は、仕事の契機を創出することもある。趣味が仕事になった発端は、バイクだった。

「久しぶりにバイクを買ったとき、コンビそろってバイク好きのチュートリアルに『一緒に出かけましょう』と声をかけたんです。そうしたら人も集まっていないのに、『RGツーリングクラブを作ってや!』と言われたので、早速、勝手にステッカーを作って2人に持っていきました。実質2人が中心のチームなんですけど、当時の僕はヒマだったんで、ツーリングの段取り係を自ら買って出たんです」

「そのうちメーカーや雑誌の関係者も加わって、LINEグループを通じて関係を築いていきました。そうやってグループを大きくさせながら、今度は人を集めるイベントへ発展させていくと、『こんな仕事どうですか?』と声がかかるようになる。この手法は他の趣味でも応用していますね」

ポイントは、「趣味を1人で完結させないこと」。そのことを心がけているRGさんは、参加する飲み会も、趣味にからんだものが多い。

「近況報告したり情報交換したりしながら、各分野のエキスパートに話を聞くのが楽しいんですよ。そこで仕入れた情報は、テレビやイベントでも使わせてもらいます。すべての趣味は『もっと知りたい』だし、仕入れた話を『みんなに早く言いたい』なんですよね。インプットとアウトプットがあることで、さらに面白くなる」

■情報を押さえるべき時期を把握しておく

それにしてもこれだけ多くの趣味を持っていると、どれかがおろそかになることはないのだろうか。RGさんに複数の同時進行させるコツをたずねると、「自分では同時進行している意識はないんです」と答えた。

「スポーツにはシーズンオフがあるし、バイクだったら乗る時期・乗らない時期がある。たとえばNBA観戦であれば、開幕に向けての流れとプレーオフに近づくまでの特定の時期を重点的に見るといいというのがだんだんわかってくるんですよ。今はそういうメリハリをつけながら、集中すべき年間スケジュールが、頭の中で大体組まれていますね」

「でも捨てた趣味もありますよ。悔しいのがラジコン。小学校のとき貧乏で買えなくて、それでも欲しくてカタログだけよく読んでいたんです。それでお金に余裕が出てきて買ってみたら、今のラジコンは家の周囲で遊ぶことより、特定のコースでドリフトさせるのが主流になっていたんですよ。さらに日々パーツも進化しているから、片手間では追いつけない。欲しいラジコンもいっぱいあるし、時間さえあればコースに行きたいんですけど……」

また、夢中になりすぎたがゆえ、嫌いになりかけた趣味もあった。

「NBAはどっぷり漬かりすぎて、心をやられたことがありました。情報ほしさに海外のサイトを探しては、特派員や解説者の報告を翻訳して読んでいたんです。さらにみんなの反応を検索しながら、試合もずっと見て……。どんどん睡眠時間が削られていって、体調が悪くなりましたね」

「スニーカーでも袋小路に入ったことがあります。SNSにレアもの自慢が増えてきた頃、だんだん『これってやりすぎじゃないか』と思えてきて、その態度がマニアから嫌われたこともあって。趣味に深入りするとそのジャンル自体は嫌いにならないけど、関わる人が嫌いになることはあるんですよね」

NBAの一件で「情報がありすぎるのも怖い」と感じたRGさんは、SNSを見過ぎないことを決意。あらゆる趣味のジャンルで、信用できるニュースサイトを探して、閲覧するのは3つまでにしぼりこんだ。スニーカーは、みんなに「いいね!」と認められるのが快感だった、激レアモデルの購入と決別。好きなものだけ買うという原点に戻ってからは、昔の楽しむ感覚が戻ってきた。

■「仕事を快適にする」ことと関連づける

そうやって適切な距離を保つことさえできれば、「趣味が多いほどストレスが減る」とRGさんは主張する。

「たとえば、朝から遠い場所で仕事があると、どうしても『イヤだな〜』と感じてしまう。でもその感情で過ごす時間って、もったいないじゃないですか。それを打ち消せるのが趣味。僕の場合であれば、移動中に足が疲れないスニーカーを選ぶのも楽しいし、好きなスニーカーをはけば、移動している間テンションがあがりますから」

「通勤時間を楽しむため自動車にお金をかけるのもいいし、職場で元気を出すために文房具にこだわるのもいい。『仕事を快適にする』ことと関連づけると、自分も楽しめて、家族の理解も得られると思いますよ」

----------

レイザーラモンRG(れいざーらもんあーるじー)
1974年生まれ。本名は出渕誠。立命館大学卒業後、社会人経験を経て、1997年レイザーラモンを結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。

----------

レイザーラモンRG 構成=鈴木工 撮影=尾藤能暢)