大幸薬品の「正露丸」(同社提供)

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 連日の猛暑で、エアコンや氷菓、清涼飲料水の売れ行きが好調ですが、夏場に売り上げのピークを迎える“医薬品”があるのをご存じでしょうか。それは「ラッパのマーク」でおなじみの胃腸薬「正露丸」シリーズです。どうして、夏場に売れるのでしょうか。製造販売する大幸薬品(大阪市西区)の担当者に聞きました。

要因は「冷たい食べ物・飲み物」「空調」「旅行」

正露丸」は、1902年に中島佐一薬房が発売した「忠勇征露丸」という薬が前身です。戦後、1946年に大幸薬品が製造と販売権を継承、1954年に「正露丸」と改称しました。腸内の水分バランスを整える働きなどがあり、下痢や食あたりといった症状に有効です。

 現在は、従来の「正露丸」のほか、1981年発売の、臭わない錠剤タイプの「セイロガン糖衣A」、2017年発売の液体カプセルタイプの「正露丸クイックC」の3種類があります。

 大幸薬品広報部の中島杏子マネージャーに聞きました。

Q.「正露丸」シリーズは何月に一番売れるのですか。

中島さん「8月に一番売れ、7月、9月の順で続きます。2010年から2016年までの店頭の売り上げデータを調べたところ、気温が23度を超えると1度上がるごとに『正露丸』シリーズの売り上げが約3.5%伸びることが分かりました」

Q.なぜ夏によく売れるのでしょうか。

中島さん「冷たい物を食べたり飲んだりする機会が多いことや、エアコンが効いた冷えた部屋に長時間滞在し、胃腸の調子を崩してしまう人が増えることが主な要因と考えています。8月は、長期休暇で海外旅行に行く際に常備薬として購入するケースも増えます。旅行サイトが2016年に行った旅行アイテムのお気に入り調査で、『正露丸』は『薬(内服薬)』部門1位に選ばれました」

Q.記録的な猛暑の今年の夏は、特に売れているのでは。

中島さん「いろいろな要素があり、単純比較はできないのですが、今年も気温が高くなった7月下旬から売り上げが伸びてきています」

Q.「正露丸」と「セイロガン糖衣A」はどちらが人気ですか。

中島さん「『セイロガン糖衣A』の方が若干、売り上げが多いです。2017年の出荷ベースの実績では『正露丸』の売り上げ16億5700万円に対し、『セイロガン糖衣A』は18億5600万円でした」

Q.正露丸クイックCを発売した理由は。

中島さん「若年層を中心とした新規層に『正露丸』ブランドを訴求するためです。また止瀉(ししゃ)薬市場は『即効性』『安心・安全』に対するニーズが高いです。こうした消費者のニーズに対応するため、素早く溶ける液体カプセルタイプの『正露丸』を発売しました」

Q.「正露丸」シリーズが夏以外によく売れる時期はありますか。

中島さん「忘年会が多い12月に売り上げが増加する傾向があります」

 暑い日が続きますが、冷たいものの食べ過ぎや体の冷やしすぎにご用心を。